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菊池雄星が語った絶対的エースへの道。8年目の快投を自ら分析する

6/14(水) 8:10配信

webスポルティーバ

菊池雄星インタビュー(前編)

―― 考えることに疲れてしまった?

 今から4年前、菊池雄星にそう聞くと、菊池は観念したように苦笑してこう答えた。

■「最もキャプテンに不向きな男」浅村栄斗を指名した西武の狙いとは

「それはあると思います。まあ、いろいろ考えるのは面倒なんですよ。あいまいでいいから、考え過ぎないで投げようと思うようになりました」

 菊池雄星は、いつも考えている投手だった。花巻東高時代は「野球だけで中身のない人間になりたくありません」と言って、厳しい練習の合間を縫って読書にふけっていた。プロ2年目にインタビューしたときには、「投球時に骨盤を立てるにはどうすべきか?」と20歳らしからぬ悩みを打ち明けていた。

 だが、考えても考えても、結果は出なかった。そんな雌伏を越えたプロ4年目、菊池は前半戦だけで9勝を挙げた。話を聞きに行くと、菊池は頻繁に「体の声を聞く」という言葉を使うようになっていた。

「体が今、何を欲しているのか、どうすれば喜んでくれるのかと考えました。自分の場合は何も考えずにリズムに任せて投げるのが、一番スムーズに動くんじゃないかと」

 スポーツ選手にとって「思考」は諸刃の剣である。トレーニングや技術について勉強し、自分にとって何が必要か取捨選択することは大事だろう。だが、時に思考はブレーキにもなる。プレー中に考えることで、かえって動きが鈍くなってしまうこともある。プロの世界でも極力思考を働かせず、本能のままにプレーして成功している選手もいる。

 菊池がはまっていたのも、このパラドックスだった。菊池は4年前にこんなことを言っていた。

「意識するということは、筋肉が働いちゃうということなので。『腕を上げよう』とか『骨盤をこうしよう』と意識することで、本来動かしたい瞬間よりも一瞬早く動いてしまったり、硬くなってしまったりするんです」

 2009年のドラフト会議で6球団が重複1位指名した大物は、こうしてプロ4年目に自分なりの極意をつかみ、いよいよ本格的に開花したように見えた。しかし、菊池の足踏みは緩やかに続いた。2013年は左肩を痛めて後半戦0勝に終わると、2014年以降は5勝11敗、9勝10敗と負け越し。昨季は12勝7敗、防御率2.58と初めて2ケタ勝利を達成したものの、投球回数は規定投球回ギリギリの143回にとどまった。

 その間、高校時代の後輩である大谷翔平(日本ハム)は国民的スターの座にどっしりと君臨していた。菊池に対する大物感はかすれ、今や一般的な認識は「大谷の先輩」になりつつあった。

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