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アニマルの憂うつ=“伝説”のつづき――フミ斎藤のプロレス読本#023【ロード・ウォリアーズ編8】

6/14(水) 9:00配信

週刊SPA!

 1992年

 オプティミストoptimist(楽天家)とペシミストpessimist(悲観論者)のこんなおはなしがある。

 ペシミストのセールスマンが、アフリカのある国にクツを売りにいった。まったく売れない。ペシミストが仲間のオプティミストに電話をかけた。

「てんでダメだ。この国の人たちはクツを履かない。見込みがない」

 オプティミストはこう答えた。

「見込みは十分だ。その国の人たちはまだクツを履いていない」

 物事をいいようにいいように考える人と、なんでも悪いように悪いように考えてしまう人たちのたとえばなしだ。どちらが正しくて、どちらが正しくないかを論じるものではない。

 どういう視点に立ったとしても、けっきょくはいま自分が直面しているシチュエーションにどうにか対処していかなければならないことに変わりはない。

 チェスのゲームだったら、どんなに戦況が苦しくても、とりあえずコマをひとつだけ前に進めておかなければならない。

 ホークの進路――新日本プロレスと契約――が決まったことで、相棒のアニマルもこれからについて考えなければならなくなった。

 リージョン・オブ・ドゥームは解散してしまったのだから、相棒という表現はもう適切ではないかもしれない。ホークがWWEを退団した時点で、ロード・ウォリアーズもその歴史に幕を降ろした。思い切ってそういうふうに理解したほうがすっきりする。

 WWEのスタンスはこれとはちょっとちがっていた。ホークがいなくなると、コメティカットのアイディアマンたちはすぐに代役をこしらえようとした。

 LODのキャスティングにはちょうどいい(と思われる)クラッシュをアニマルにくっつけて、ケース・スタディとしてヨーロッパ・ツアーに送り出した。

 この代役プランはすぐに流れた。新しいパートナーとのコミュニケーションがどうにもしっくりこないと感じたアニマルは、弟のターミネーターを呼びよせてチームを再編成しようとしたが、このプランは首脳部から却下された。問題が解決しないまま時間ばかりが経過していった。

 シングルプレーヤーに転向したアニマルは、コスチュームもタイツもLODのまま全米ツアーをつづけた。どんなにいままでどおりの試合をやろうとしても、観ているほうは――おそらく、やっているアニマル本人も――パートナーの不在を感じた。

 悪いことは重なるのか、試合中のアクシデントで尾てい骨亀裂骨折の重傷を負い、しばらくはリングには上がれなくなった。いいようにいいように考えたのか、それとも悪いように悪いように考えたのか、けっきょくアニマルもWWEをおん出ることにした。

 WWEのワクのなかに身を置いていると、どんなスーパースターでもやがて“ひと山いくら”になっていく。LODのイメージを引きずれば引きずるほどアニマル個人の商品価値も落ちていく。そんなことがあっていいはずがない、こういうときは去るのみ、である。

 アニマルはケガの治療と休養のためにミネアポリスに帰ってきた。ホークとはあまりはなしをしていないらしい。いまのところ、LODの再結成は考えていない。

 ホークは、新日本プロレスをホームリングに選択することでアメリカのプロレス・シーンから姿を消した。佐々木健介とタッグチームを組み、ロード・ウォリアーズのビジュアルと様式だけは残すことになったが、ホークのなかでは日本のリングでの活動はまったく新しいなにかとして整理がついている。

 アニマルはアニマルで、頭をひねりにひねっている。どっちがジョン・レノンでどっちがポール・マッカートニーかはわからないが、LODは1980年代のプロレス界ではビートルズのような存在だった。

 ソロになったからには、おたがいがまったくちがった形で才能を発揮していけばいいし、また、そうするしかない。伝説はどこかでピリオドを打っておくからこそ伝説なのだ。

 おそらく、アニマルは意地でも日本のリングには上がらない。もし、アニマルとホークがあの格好をしてバラ売りで日本にやって来たらおしまいだ。でも、伝説のイメージをまんまと裏切るのもまたスーパースターのスーパースターらしさといえるかもしれない。

 アニマルはいったいどうするつもりなのだろう――。(つづく)

※文中敬称略

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

日刊SPA!

最終更新:6/14(水) 9:00
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