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ナマコ研究40年超の生物学者 ナマコ嫌いだがナマコを尊敬

6/15(木) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 誰も知らないことを発見するために熱い情熱をたぎらせる研究者はたくさんいる。しかし、必ずしもそのテーマが好きで好きでたまらないわけでもない。

「僕はナマコは食べません。ウニも滅多に食べない。生物には特有の臭いがあって、その臭いを嗅ぐと研究室にいる気分になるからです。僕、実はナマコが嫌いなんですよ。でも、尊敬している。尊敬は好き嫌いとは関係ない。侵すことができない生物だと思っています」

 そう話すのは、40年以上にわたってナマコなどの無脊椎動物を研究してきた東京工業大学名誉教授の本川達雄氏(69)だ。ナマコの研究に没頭し、琉球大学助教授時代から、海に潜ってナマコを採取することもしょっちゅうだった。ただ、研究対象を選んだ理由は少し変わっている。

「僕はへそが曲がっていますからね。ナマコなんて誰も好きじゃないから、誰も研究しないでしょう。人がやらないことをやると、僕は非常にテンションが上がる。子供のころはみんなが手を挙げているときは手を挙げないタイプでした」

 本川氏の著書『ウニはすごい バッタもすごい デザインの生物学』は、ウニやバッタ、ナマコなどの無脊椎動物の体が、どういった進化の過程を歩んだかを解説した一冊。著者が描いたイラストも収録され、前著『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』に続いてベストセラーになっている。

「バッタの骨格をかたちづくるクチクラという物質は、人が生み出せないほどの高品質素材で、その骨格があるから速く動けて、体の何十倍もの高さまで跳ねられるし、飛ぶこともできる。

 生物の授業では、名前と事実の羅列を覚えるだけ。そんなもの面白いわけがない。こんな環境に適応するために、こういう体になった……といったことを一つ一つ説明していけば、『生物』はもっと面白くなる。それを多くの人にも伝えたくて本を書きました」

 本川氏がそう考えるようになったきっかけは、米国の物理学者・ファインマンのまとめた物理学の教科書が非常にわかりやすく感動したからだという。本が売れて先輩教授に妬まれても、これからも教育界には居座り続けるつもりだと笑う。

※週刊ポスト2017年6月23日号