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キーワードは「5トップ化」と「中盤空洞化」。浦和対ドルトムントはミシャ戦術のミラーゲーム

6/15(木) 22:10配信

footballista

明治安田生命Jリーグワールドチャレンジ2017

ドルトムント&セビージャ来日!
迎え撃つはJの頂点、浦和と鹿島



月刊フットボリスタ第45号で「16-17を支配した5つの戦術トレンド」と題して欧州最先端の潮流を特集したが、そこで取り上げた先鋭的な2クラブが来日する。DFBポカールのタイトルを獲得したドルトムントと、リーガ3強を脅かしCL出場権を確保したセビージャ。迎え撃つは、2016年のルヴァンカップを制した浦和と、Jリーグ王者の鹿島という国内最高峰の2クラブだ。欧州トップクラスと日本サッカーの距離を知る絶好の機会である。
※断りのない限り、情報は2017年5月末日時点のもの


URAWA RED DIAMONDS vs DORTMUND
浦和レッドダイヤモンズ vs ドルトムント


文 清水英斗



 浦和レッズはドルトムントに似ている。いや、順序を守るならば、ドルトムントが浦和に似たサッカーをしている。そう表現した方が正しいだろうか。少なくとも、「私は30年前から研究している。あっちがウチを真似たのかもしれない」と主張しそうなミハイロ・ペトロヴィッチの前では。


凸対凸の正面衝突


 15-16シーズンからドルトムントの指揮を執り始めたトーマス・トゥヘル(今季終了後に退任。新監督はオランダで先鋭的な戦術が注目されたペーター・ボス)は、左サイド1、中央3、右サイド1の配分でピッチの幅を広く使う、5トップの戦術を浸透させた。就任当初は、それを支える後列の配置を2バック+アンカーで組んでいたが、カウンターやロングボールに対する脆弱性が明らかになると微調整。5トップを保ちつつ、最終ラインを3バックに増員し、中盤を削ってリスクマネージメントした。その結果、3バックとダブルボランチの後ろ5枚と、前線5枚がはっきりと分かれ、中盤を空洞化させる形に。

(ちなみに“削った中盤”とは、香川真司のこと。今季の香川が出場機会を減らしたのは、戦術上の相性が大きい。クライフが考案したアヤックススタイルの直系であるペーター・ボスが、クライフの弟子であるグアルディオラのサッカーから影響を受けた前任者のやり方をどこまで踏襲するのか。来季のドルトムントの最大の注目点だ)


 この中盤の空洞化により、後列と前線のリンクマンがいなくなった。バイグルやゲレイロ、あるいは3バックの一角ピシュチェクらが、大きなサイドチェンジで幅を生かして展開したり、あるいは空洞化した中盤へドリブルで持ち運んで縦パスを入れたりと、5トップにボールを届ける役割を担った。


 ……と書くと、この文がドルトムントだけでなく、浦和のミシャ戦術をも解説できることに気づくだろう。後ろ5枚と前線5枚。中盤の空洞化。後ろの配置は多少異なるが、戦術的な狙いについて、浦和とドルトムントの共通点は多い。


 守備も似ている。両チームともに高い位置からプレッシングに行くことを好み、ボールを奪ったら、素早くカウンターに出る。そこから挙げる得点も多い。共通点だらけだ。そう。これは真のミラーゲームと呼べる一戦かもしれない。浦和戦でのミラーゲームといえば、5トップに対して対戦相手が5バックで噛み合わせる試合を指すことが多かった。つまり、凸に対して、相手が凹に変化することをミラーゲームと呼んでいたわけだ。


 ところが、浦和とドルトムントの対戦は違う。凸に対して凸。両チームが同じスタイルでプレーしている。同じ戦術流派の2チームが、積み上げた『自分たちのサッカー』のプライドを懸けて戦うわけだ。なかなか、味のあるマッチメイクではないか。


「奪われれば即失点」の危険な香り


 シンプルに考えるなら、似た者同士の対戦は、個の力で決まるだろう。特に、空洞化したお互いの中盤を切り裂くカウンターは、最大の焦点になる。ドルトムントの前線はウスマン・デンベレやプリシッチなど、活きが良いスピードアタッカーが並ぶ。彼らの突破力は尋常ではない。浦和もカウンターの意識は強いが、その威力では分が悪い。今シーズンのJ1開幕節で齋藤学一人にやられたチームが、ドルトムントのカウンターを止める姿を想像しづらいのが、正直なところだ。


 その一方で、浦和はドルトムントよりもリスクを負って攻撃に人数をかける傾向が強い。例えば、5トップ対5バックで噛み合ったら、森脇良太、槙野智章、柏木陽介らが、後ろから6人目で上がり、数的優位を作って混乱を引き起こす。うまくいけば、前線3枚があまり守備に戻らないドルトムントには効果てきめんだろう。逆に、おかしなミスを犯せばカウンターから大量失点もあり得る。


 浦和にとっては緊張感のあるポゼッションになる。だが、ドルトムントのハイプレスにびびってはいけない。ロングボールを蹴り、ボールを捨ててしまったら、浦和の良いところがなくなる。もしかすると、堅守速攻を得意とする鹿島アントラーズの方が、ドルトムントにボールを持たせ、安定して戦えるのかもしれないが、それは浦和のスタイルではない。


 浦和対ドルトムントはあまりにも、がっぷり四つ。ハラハラドキドキ、危険な香りでいっぱいの試合になりそうだ。

最終更新:6/16(金) 11:47
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