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豪州代表が直面する壁。W杯予選はガラガラ、新布陣はズタズタ…不安残し天下分け目の日豪戦へ

6/15(木) 12:14配信

フットボールチャンネル

 ロシアW杯アジア最終予選で日本と同じグループを戦っている豪州代表が窮地に立たされている。アジア王者として臨むコンフェデレーションズ杯前に控え組のブラジルに完敗を喫するなど、チームには不安だらけ。観客動員数でも現在の代表人気の低さが浮き彫りになった。W杯出場権獲得をかけた大一番、8月の日豪戦に向けて“サッカルーズ”の現在地を探る。(取材・文:植松久隆)

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●豪州戦、観客動員はブラジル対アルゼンチンの3分の1

 6月9日、豪州の「スポーツの首都」と称されるメルボルンで、9万5569人の大観衆がトップレベルのサッカーに酔ったーーといっても、それは自国代表の試合ではない。ブラジル対アルゼンチンという世界有数の好カードの親善試合だった。

 リオネル・メッシやフィリッペ・コウチーニョといった世界トップレベルの選手を見に来た観衆で、豪州国内最大の収容人数を誇るメルボルン・クリケット・グラウンド(MCG)は、ほぼ満員に膨れ上がった。

 その前日(6月8日)、豪州代表はロシアW杯アジア最終予選でサウジアラビアと対戦していた。この最終予選でなかなか勝ちきれない試合が続くサッカルーズ(豪州代表の愛称)にとって、この試合はW杯出場権を自力で獲得できる可能性を残すには是が非でも勝たねばならない大事な一戦だった。

 決戦の地に選ばれたのは、南オーストラリア州の州都アデレード。そして会場は、これまたクリケット場のアデレード・オーヴァル。約5万4000人収容のスタンドは、何としても勝てなばならぬ“Do or die”の戦いにしては寂しすぎる2万9785人の入場に留まり、空席が目立った。

 伝統的にプレーオフで苦戦を強いられてきたオーストラリアサッカー連盟(FFA)も、この試合の重要性は当然ながら理解しており、様々なマーケティングを駆使してファンに来場を呼びかけたが、笛吹けど踊らず。当日は現在の代表人気を反映したかのような不入りとなった。

 その客の入りに呼応したわけではなかろうが、試合内容もかなりお寒いものだった。新たに試している3-4-2-1が機能しない。3バックと2枚の守備的MFの連携が悪く、左右のサイドハーフは3トップのウィングともディフェンシブなウィングバックともつかないポジショニングで役回りがはっきりしない。

 右サイドで起用されたマシュー・レッキーは、とにかくポジショニングが悪く、自身で何度も首を傾げながらやりにくそうにしていただけの印象だった。この日の失点シーンを見ても、ボールウォッチャーになった3バックが簡単に突破されてのもので、安定しないまま90分が過ぎていった。

●自国代表戦に“興行”をぶつけた謎。代表人気の低下浮き彫りに

 最前線のファーストチョイスとしての立場を確立したトミ・ユリッチの2得点に加え、最後は名門セルティックで多大な存在感を発揮して一躍サッカルーズの攻撃の中心に昇りつめたトム・ロギッチの鮮烈なミドルシュートに何とか救われて3-2の辛勝。ホームで勝ち点3を何とかキープし、消化試合がひとつ多いながらも暫定的に上位2ヶ国と並んだ。

 その5日後の13日、サッカルーズはメルボルンにブラジルを迎え、アジア王者として臨むロシアでのコンフェデレーションズ杯に向けて“壮行試合”を戦った。この日の会場は、先日のブラジル対アルゼンチン戦と同じMCG。そして、集まった観衆は4万9874人。メッシ擁するアルゼンチンに代わって、自国の代表チームが登場したにも関わらず観客数は半減した。

 メルボルンの一般的サッカーファンは、かなり強気の入場料の値段設定から考えても、懐具合を考えて5日間のうちに行われる2試合から二者択一を迫られたに違いない。そして、結果的に自国代表の試合よりも他国代表同士の試合を選んだ人の数が2倍に上った。ここにも、現代表の人気が透けて見えてくる。

 正直言って、このタイミングで「ブラジル対アルゼンチン」という“興行”を自国の代表戦にぶつける意味があったのか、甚だ疑問だ。

 8日のサウジアラビア戦、9日のブラジル対アルゼンチン、13日のブラジル戦、この3試合はアデレードとメルボルンという南部の2大都市で行われた。せめて国内の違うエリアで開催するなど、やりようはあったはずだ。単純比較ができないように他の会場を設定できなかったのだろうか。しかも、サウジアラビア戦は公式戦であり、W杯行きがかかった大事な試合に十分なサポートがあったとは言い難い。

●ブラジルには完敗。コンフェデ杯に不安残す

 このサッカルーズの置かれた状況を他に置き換えて考えてみてほしい。代表ウィークに強豪の他国代表がやって来て親善試合を行う。それにファンが自国代表を差し置いて駆けつける。日本だけではなくサッカー先進国ではこんなことは起きえないはずだ。10万人の観客動員が見込めることで商売マインドにほだされ、自国代表の不人気を必要以上に白日の下に曝すような今回の日程と会場設定には疑念を禁じ得ない。

 サウジアラビア戦だけでも、東海岸のシドニーかブリスベンで開催していれば、観客動員面でも違う結果が出たはずだ。本来であればサウジアラビア戦はシドニー、メルボルンの2大都市に続く全豪第3の都市ブリスベンで開催するのが定石だろう。

 しかし、アンジ・ポスタコグルー監督自身かつて本拠地にしていたこともあるブリスベン・スタジアム(筆者注:通常はネーミングライツによりサンコープスタジアムで知られる)では、今回のW杯最終予選の試合は行われない。

 設備やロケーションは国内最高レベルだが、13人制、15人制と2種類のラグビーの試合で酷使され痛み切った同スタジアムの芝の状態は最悪。それを知るポスタコグルー監督は代表戦にふさわしいピッチだと考えておらず、結果的に試合は一度も組まれないままだ。

 コパ・アメリカを獲れず、今回のコンフェデレーションズ杯には出場しないブラジルとの“壮行試合”に話を戻そう。ここから大事な大会に向けて、様々な意味で状態を上げていかなければならないサッカルーズだったが、格上のブラジルになす術なく敗れた。

 日頃プレー時間の限られる選手や飛び級で招集された新戦力を試せたことなど意義は少なからずあった。とはいえ試合中継でコメンテーターの元代表ロビー・スレイターが「この試合は、コンフェデレーションズ杯に向けて理想的な準備だったとは思えない」と声を荒らげたように、壮行試合としての意味はなかったに等しい。

●急上昇した「日豪戦」の重要度。豪州側のシナリオは…

 飛車角落ちの相手に試合開始わずか12秒で失点。後半明らかにギアを落としてきた相手にさらに3失点。終わってみれば0-4の敗戦から得たものはあまりに少ない。それらの失点も、サウジアラビア戦から何も改善されていない中盤の底と3バックの距離感がつかめないまま、あまりにあっさりと喫したもので、今後に大いに不安を残した。

 ここまで戦いながらチームを強化して結果を出してきたポスタコグルー体制下の豪州。アジア代表として臨むコンフェデレーションズ杯では、ドイツ、カメルーン、チリと、各大陸王者の強豪とあいまみえる。

 この大会では、新システムへの自信と勝敗はともかく、強豪相手にきちんとした試合内容が求められる。さもなければ8月31日に迫る天下分け目の日豪戦までに立て直しが間に合わないような事態も起こりかねない。それは、ポスタコグルーとサッカルーズが一番避けたいシナリオだ。

 6月13日、日本は中立地テヘランでイラクに引き分けが精いっぱいで、勝ち点1を積み上げるだけにとどまった。この結果を受けて、次の「日豪戦」の両国にとっての重要性が一気に上がった。4年前、埼玉スタジアムで日本のW杯出場決定を見せつけられた苦い思い出があるサッカルーズは、さすがに同じ轍を踏みたくないだろう。

 それだけに、この試合で乾坤一擲の勝負に打って出てくるに違いない。日豪戦の後の両国はそれぞれ、アウェイでのサウジアラビア戦、ホームでのタイ戦を控える。この日程を考えれば、日本も当然ながらホームの地でW杯出場を決めにくる。久々のガチンコ中のガチンコ勝負となりそうな日豪戦は激戦必至。当然現地で見守るつもりだが、今から指折り数えてその日を待ちたい。

(取材・文:植松久隆)

フットボールチャンネル編集部

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