ここから本文です

女性ラッパーたちの勝負の行方は? HIPHOPの未来照らした『CINDERELLA MCBATTLE』を観た

6/15(木) 17:06配信

リアルサウンド

 日本でも盛り上がっているフィメールラップシーン。そんな中、真の女性ラッパーNo.1を決める『CINDERELLA MCBATTLE Vol.2』が6月11日、渋谷HARLEMで開催された。

 今年1月に開かれた第1回目では激闘の末にあっこゴリラが優勝。晴れて日本一のフィメールラッパーという称号を手にした。第2回目となる本大会だが、前回涙の敗退となった椿やワッショイサンバ、MC Frog、a.k.a音Solarがリベンジに挑むところとなった。また、オーディションを勝ち抜き、新たに挑戦するMCも多数登場。何より2000年代のHIPHOPシーンで大活躍したCOMA-CHIの参戦が話題になった。他にも元祖サイファー娘のCHARLESが産後からの復帰など、見どころが非常に多い第2回目のCINDERELLA MCBATTLE。果たして今回の優勝者は誰になるのか、多くの観客が見守る中、開幕となった。

 司会進行はラッパーのACE、アシスタントは青山めぐ。ルールは至ってシンプル。選手はDJが回すビートの上で8小節フリースタイルラップができる。それが3ターン交互に回ってくる。競う2人のMCのうち、どちらが会場のオーディエンスの歓声を得られるかという基準によって勝敗が決められる。それでも決まらない場合は延長試合になったり、監修のMC正社員のジャッジメントに委ねられることもある。ラップのスキルが問われるのはもちろん、どんなインパクトのある言葉で相手を言い負かすことができるかが勝負の分かれ目となる。

■序盤から波乱の幕開け

 いざ大会が始まってみると波乱の幕開けとなった。前回のリベンジに賭けるMC Frogが加藤真弓に僅差で負けてしまったのだ。MC Frogは『戦極MCBATTLE』第16章関西予選で準優勝もした実力派で積極的に音源もリリースしている。しかし対する加藤真弓も「サイタマノラッパー」にMC役で出演した女優という変わり種。「映画に出てギャグラッパーと馬鹿にされて、悔しくてここまでやってきた」とパンチラインを放つ加藤が延長戦の上、勝利を勝ち取った。他にもリベンジを狙うa.k.a音Solarが15歳のCESIAに負けてしまい、10代同士の戦いとなるladystarとKIYOのバトルではladystarが勝つなど、熱いバトルが繰り広げられ、会場を大いに盛り上げた。

(○)CESIA VS (×)a.k.a音Solar
(○)広崎式部 aka ASuKa VS (×)千
(○)加藤真弓 VS (×)MC frog
(○)ladystar VS (×)KIYO

■ベスト16では“ママMC同士の戦い”も

 続くベスト16の戦い。ワッショイサンバやまゆちゃむ、椿、MC Mystieなどリベンジ組の勝利が続く。COMA-CHIも長いキャリアで培ってきた実力を見せつけて勝利。CHARLESとTomgirlはママさんMC同士の戦いとなった。Tomgirlも『Let's get drunk』などのEPをリリースするキャリアの持ち主だが、元祖サイファー娘CHARLESを前にして一歩及ばず。しかしママMC同士の戦いという展開にこれからの女性MCの新しい生き方が見えたような素晴らしい試合だった。

(○)ワッショイサンバ VS (×)KIDA
(○)CESIA VS (×)しあ
(○)COMA-CHI VS (×)広崎式部 aka ASuKa
(○)まゆちゃむ。 VS (×)セルラ伊藤
(○)MC Mystie VS (×)土竜asNason
(○)椿 VS (×)加藤真弓
(○)ぱっつん VS (×)ladystar
(○)CHARLES VS (×)Tomgirl

■前回の王者あっこゴリラが登場
 
 ここで前回の王者あっこゴリラのショーケースが始まる。「あたしが前回優勝したあっこゴリラです」とおちゃらけながらのスタート。鉄板曲の「TOKYO BANANA」のほか、話題の新曲「PETENSHI × ITSUKA (Charisma.com)」「黄熱病 -YELLOW FEVER- × STUTS」などを熱唱。金メダルを噛むアスリートさながら、前回手に入れた王者の証でもあるティアラを噛んで会場を盛り上げた。「もし優勝すればあっこゴリラのように大勢の人の前でライブができる」、今回の出場者にそんな希望を与えるようなライブだった。

■ベスト8では注目カードで番狂わせも

 そしてベスト8のバトルが始まる。前回涙をのんだワッショイサンバは独特のワッショイ節でCESIAを翻弄。優等生なお姉さんスタイルでアンサーをしながらも「but無理is良くない。新曲のMVが明日リリース! 本来バトルはこんな風にプロモーションに使っても良いんだよ!」と自身のユニット・もつ酢飯の曲のタイトルに繋ぐなどユニークな戦い方で勝利した。

 しかしここに来てまゆちゃむとCOMA-CHIという大激戦が始まる。高速ラップを得意とし、戦極女帝杯でも優勝した19歳のまゆちゃむと大御所COMA-CHIの接戦。「19歳なんて私にとって赤ちゃんみたいなもの。母乳飲みますか?」とCOMA-CHIがまゆちゃむに問えば、まゆちゃむは「おばさんって何で皆下ネタに走るの?」と若さアピールで反撃。なによりも二人ともスキルが高いので瞬きする暇も与えない熱い試合となったが、より勢いのあったまゆちゃむの勝利となった。優勝候補とも言われていたCOMA-CHIの敗北に衝撃が走ったが、今後の勝負の行方がますますわからなくなり、会場の空気は更に盛り上がった。

 そして椿とMC Mystieのバトルも見逃せない。筋の通った男らしさを見せつける椿に対し、アニミズムとフェミニズムを融合させた思想の持主のMC Mystie。本来であればMCバトルは自身の強さを誇示し、相手の弱みを叩くものであるが、この二人のバトルは愛に溢れたリスペクト合戦となった。「貴女と今日ここで当たって良かった」とお互いに語り合う姿は涙すら誘う。しかし勝利への深い執念を見せたのは椿だった。「女は男には勝てない、だからこそこのフリースタイルを用いて平和を願いたい」という独特なテーマでラップをして観客を魅了するMC Mystieに対し、「平和を願うスタイルはMystieさんに譲ります。でもバトルの勝ちは絶対譲れない」と強い意志を表した椿の勝利となった。

 CHARLESとぱっつんのバトルではCHARLESが培ってきた底力を見せたと同時に、彼女のもつスキルや母として得た強さでぱっつんを圧倒し、CHARLESの勝ちとなった。

(○)ワッショイサンバ VS (×)CESIA
(○)まゆちゃむ。 VS (×)COMA-CHI
(○)椿 VS (×)MC Mystie
(○)CHARLES VS (×)ぱっつん

■そして優勝の行方は……

 準決勝となるベスト4。まゆちゃむとワッショイサンバのバトルではワッショイサンバが「そろそろ日が沈む時間。まゆちゃむ西に沈みますか?」とワッショイ節で関西出身のまゆちゃむに畳み掛けるも、まゆちゃむが機転の早さとラップのスキルを以って上手くアンサーする。2人共言葉遊びが上手い故に接戦となるもまゆちゃむの勝利となった。

 更に椿とCHARLESのバトル。ぐいぐい来るCHARLESに対して椿は「母親の顔になったお前を見た時に本当に嬉しかったんだよ」と姉御の余裕を見せる。CHARLESの勢いに対して揺らぐことのない芯の強さを見せつけた椿が勝ち、決勝へと進んだ。

(○)まゆちゃむ。 VS (×)ワッショイサンバ
(○)椿 VS (×)CHARLES

 そして決勝戦が始まる。HIPHOPシーンという男社会の中で冷遇されて泣きを見るも、リベンジを誓っていくつもの現場をこなし、CDもリリースした叩き上げの椿、19歳という若さと天性のスキルと頭の良さでミサイルのように突き進むまゆちゃむ、この二人がぶつかり合う。

 まゆちゃむが鋭利な高速ラップでいくら畳み掛けようが椿の芯の強さは揺るがない。それをわかっているのか、まゆちゃむも真剣な表情で椿の言葉を受け止めながら、がむしゃらにアンサーをする。しかし椿はぶれない強さを見せる。「どけないんだわ。10年間ここで叫び続けてる」。椿が10年かけて築いてきたものはあまりにも大きかった。激しいバトルの余韻が残る中、オーディエンスによる厳正なる審査の結果、『CINDERELLA MCBATTLE Vol.2』の優勝は椿に決まった。

■ラストには、勝者・椿、ゲストのMARIAがパフォーマンス

 長年、HIPHOPの現場で叩き上げられてきた椿が遂に日本一に輝いた。表彰式では「友達に子供が出来たんですけど、その子にこのティアラあげるって約束したんです。自分じゃ似合わないのわかってるので」と照れながら椿は語った。ステージ上では男前な彼女もマイクを置けばひとたび普通の女の子に戻る。

 今回は準決勝に終わったものの、まゆちゃむのスキルと頭の良さは群を抜いて秀でている。まだ19歳という若さの彼女が、更に現場経験を積んだ時、ライバル達の前に大きな壁となって立ちはだかることになるだろう。それはまゆちゃむに限った話ではない。若いチャレンジャーそれぞれに伸びしろを感じた。彼女たちには今回流した涙を糧に今後もがんばってもらいたい。

 バトルの後も熱気冷めやらぬままスペシャルゲストのライブが続く。

 優勝者となった椿のライブが元々予定されており、奇しくもウィニングライブを披露することとなった。近々アルバムをリリースする予定の椿だが、先だってMVが公開された「遺言」を熱唱。叩き上げで身に着けてきたラップスキルを見せつける。そして「I'm a Rapper」「福岡」の他、椿の代表作「LUNATIC」も披露。新しい女王の存在感を存分に感じさせる堂々とした歌いっぷりであった。

 そしてSIMI LABのMARIAが登場する。MCバトルとは無縁な彼女だが、昨今のフィメールラップシーンにおいて重要な役割を果たしてきた。SIMI LABの紅一点メンバーとして、そしてソロMCとしてHIPHOPシーンにヒット曲を多数ドロップしており、今のフィメールラップ市場が切り開かれるきっかけを作ってきた。そんなMARIAも「SPASA」や「Helpless Hoe」など代表曲を熱唱。客演として参加したDJ SOULJAH「aaight」もソロ仕様に編成され、ファンを大いに喜ばせた。

 ライブを終えたMARIAは語った。「こんなにフィメールラッパーが登場したんだ。HIPHOPの未来は明るいよ。100年、いや、100年以上続けようよ」

 最後は女性だけによるマイクリレーが始まる。今回の出場者はもちろん、観客として来ていた女性も参加できるこのマイクリレー。涙を流した敗退者もこの時ばかりは笑顔でフリースタイルをかます。

 女性のための女性によるMCバトル、それがCINDERELLA MCBATTLE。そこからはとてつもないエネルギーと男性MCには醸しだせない華やかさを感じた。その盛り上がりはMARIAの言うように「HIPHOPの未来は明るい」と思わせてくれる程だ。この熱いバトルを次回はぜひ会場で見てもらいたい。

最終更新:6/15(木) 17:06
リアルサウンド