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夢見る少女を狙った“悪徳”芸能事務所が増えている――佐藤大和弁護士が警鐘

6/15(木) 9:00配信

週刊SPA!

「先日コスプレモデルの撮影と偽って少女を募集し、AVまがいの動画に出演させた事件が起こりました。いま、アイドルや芸能人と一般人の区別が曖昧になっており、そこを狙った悪徳ビジネスが増えているんです」

 こう指摘するのは弁護士の佐藤大和氏(レイ法律事務所、東京弁護士会所属)。今年5月に芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会」を設立した共同代表理事のひとりである。佐藤氏は、タレントの権利関係はもちろん、芸能界の陰に潜む様々な問題にも切り込んでいきたいと意気込む。

 これまでも多くの夢見る少女たちが悪徳事務所によって搾取されてきた。しかし、その大半が10代から20代前半……充分な知識もないまま、泣き寝入りするしかなかった現実がある。今回は、実際に佐藤氏のもとに寄せられた相談や事例などを交えつつ、どうするべきか話を伺った。

◆芸能界の闇にも切り込む「日本エンターテイナーライツ協会」

 佐藤氏は弁護士として、5月26日に元KAT-TUNの田中聖氏の逮捕に対する声明文を出したことでも話題となった。現在、「日本エンターテイナーライツ協会」の認知が思っていた以上に広がっている状態に戸惑いながらも、責任の重大性を感じているのだという。

「協会の趣旨は、芸能人の権利を守ることです。とはいえ、たんに芸能事務所と喧嘩しようというのではなく、事務所と芸能人の懸け橋になることが目的です。両者のトラブルは様々ですが、一方的に事務所側が悪いとは思っておらず、芸能人側の法律知識の欠如が原因となっていることも多いんです」

 そのため協会では、芸能人に法律の知識を提供することを目的としている。

 では、芸能人側と事務所側の間に起こる問題としてどのようなものがあるのか。佐藤氏は、“入口”と“中間”と“出口”の3つに分類できるのだという。

「入口は、事務所に所属するときの契約。書類の内容がよくわからないまま契約している人がほとんど。それゆえに、トラブルとなるケースも多い。中間は、移籍トラブル。パワハラやセクハラなどが原因となっていることもあります。そして出口では、引退やセカンドキャリアの問題」

 現在、地下アイドルやコスプレモデルの一大ブームをはじめ、大小様々な芸能事務所が立ち上がっており、“芸能人”の敷居が下がりつつある。華やかな世界に憧れる若者たちは絶えない。そこで佐藤氏が問題視するのは、“入口”だ。

「いま、アイドルや芸能人と一般人の区別が曖昧になっており、そこを狙った悪徳ビジネスが増えているんです」

 有名タレントやモデルなどがデビューするキッカケとして、渋谷や原宿、新宿などの路上で事務所からスカウトされた、というエピソードは珍しくない。しかし、佐藤氏は都心に限らず、郊外の繁華街に至るまで横行している“スカウト詐欺”に警鐘を鳴らす。

「街でスカウトした後、『これをすれば芸能人として売れるようになりますよ』と高額な美顔器を買わせたり、提携する怪しいエステやネイルサロンに行かせる。もちろん、彼女たちにそんなお金はありません。しかし、彼女たちはデビューさせてもらえるものだと思い込み、なんとかして支払ってしまう。その後、お金を手にした事務所等が逃げることもあるのです。被害に遭った人たちは100人、200人以上いますよ」

 手口はそれだけではない。所属してしまった後、“悪徳違約金ビジネス”もある。

「事務所に登録したあと異変に気付いて『辞めたい』と言った場合、違約金として20万から30万円を請求されるケースもあります」

 では、なぜ“20万から30万円”なのか。それには理由があるのだという。

「じつは、20万から30万円というのが絶妙な設定。皆さん、弁護士に相談せず、自分たちで調べて、弁護士にお願いをした場合それくらいの費用が必要だと思ってしまうのです。“弁護士”と聞けば、面倒な書類の手続きだったり、時間が掛かるなど、ハードルが高いイメージがある。『それならば、いっそ事務所に払うか』となるわけです」

 このように、詐欺集団がタレント・モデル事務所を騙り、若い女のコたちを食い物にしているのだ。果たして、どのような女のコが狙われるのか?

「芸能界に入れるほどではないけど、地域レベルでは少しかわいいコ。そもそも、芸能界で成功できるのは、ほんのひと握りです。詐欺と気付いたときには遅いこともある。彼女たちが最後に行き着く先は、お金に困り、破産、そして風俗やAVも多いですね……」

 すべては“芸能人”という言葉の魔力と言っていい。

「スカウトされると『チャンスだ!』と舞い上がってしまうんです。でもそれが搾取される一歩になることもある。『モデルの仕事がある』と甘い言葉に誘われ、行ってみたらAVだったという事例も多い。そこで断ることが出来ればいいのですが、本人は目の前の大金欲しさに承諾してしまうこともある」

 AVに出演してしまった後は、インターネット上の様々なサイトにものすごいスピードで拡散される。佐藤氏のもとには「消して欲しい」という依頼が絶えない。しかし、それを「ある程度は削除できるが100%削除するのは難しい」のだという。日本だけではなく、海外のサーバーを介した違法アップロードなど、海賊版の餌食になってしまうことも……。

「裏のマーケットに流れてしまった場合は、完全には削除できません。例え、数年後に結婚しても、いつ画像や動画が出てくるかわからない。悩んで苦しむ結果となりますね。後先を考えず、ブランド品欲しさにやってしまう女のコが本当に多い。目の前のニンジンに踊らされてしまう。そのニンジンには毒が含まれている可能性がある。しかも、その毒はすぐにではなく、ジワリジワリと蝕んでいく……」

◆“悪徳”芸能事務所を見抜く方法

 とはいえ、被害に遭わないためにはどうしたらいいのか。いわゆる“普通の芸能事務所”でも街でスカウト活動を行っていることは周知の事実である。レッスンや宣材写真の撮影として金銭を請求されることもあるだろう。例えば、最近よく話題となる「グループの団結力を高めるために寮で寝泊まりしていた」というケースはどうなのだろうか。

「寮で衣食住の面倒を見たり、トレーニングできる環境を整えているのなら、問題はありません。しかし、それでも未成年の場合、親権を持っている両親がNOと言えば、それはNOです」

 とはいえ、そもそもグレーな部分が多い芸能界。“事務所が悪徳かどうか”の判断は本当に難しいと言える。では、悪い芸能事務所と良い芸能事務所の具体的な見分け方はあるのだろうか?

「1つ目は、みんなが知っている事務所かどうか。誰も知らない事務所なら危ないと思ったほうがいい。あとは、有名なタレントが所属しているほうが安心できます。とはいえ、『過去に所属していた』などの曖昧な言い方をしてきた場合は、気を付けるに越したことはありません。2つ目は、社長やマネージャーがきちんとした人か。芸能界とはいえ、今は世の中も厳しい時代。常識と照らし合わせて、おかしなことを強要してくるようであれば、疑ったほうがいいでしょう。そして、3つ目……そもそも契約書がしっかりしているかどうかです」

 しかし、実際に素人が契約書や杜撰な事務所かどうかを見抜くことは難しいのではないだろうか。

「そんなとき、弁護士に相談して欲しいんです。大きなトラブルに発展する前に、まずは“入口”である事務所と契約する段階で気を付けることが大事。これまで芸能関係を得意とする弁護士は少なかったのですが、気軽に相談できる存在になりたいですね」

【佐藤大和(さとう・やまと)】

1983年、宮城県生まれ。レイ法律事務所代表弁護士。立命館大学法科大学院卒業。2014年にレイ法律事務所を設立。代表弁護士となる。著書『ずるい暗記術』『ずるい勉強法』(共にダイヤモンド社)、小説『二階堂弁護士は今日も仕事がない』(マイナビ出版)、新刊に『超楽仕事術 ラクに速く最高の結果を出す「新しい働き方」』(水王舎)がある。フジテレビ『バイキング』にコメンテーターとして毎週月曜日レギュラー出演中。

<取材・文/大橋博之、撮影/藤井敦年>

日刊SPA!

最終更新:6/15(木) 9:00
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