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「勇敢な」セビージャ、「動じない」鹿島。似ているようで違う、特異な個性の激突!

6/16(金) 18:31配信

footballista

明治安田生命Jリーグワールドチャレンジ2017

ドルトムント&セビージャ来日!
迎え撃つはJの頂点、浦和と鹿島



月刊フットボリスタ第45号で「16-17を支配した5つの戦術トレンド」と題して欧州最先端の潮流を特集したが、そこで取り上げた先鋭的な2クラブが来日する。DFBポカールのタイトルを獲得したドルトムントと、リーガ3強を脅かしCL出場権を確保したセビージャ。迎え撃つは、2016年のルヴァンカップを制した浦和と、Jリーグ王者の鹿島という国内最高峰の2クラブだ。欧州トップクラスと日本サッカーの距離を知る絶好の機会である。
※断りのない限り、情報は2017年5月末日時点のもの


KASHIMA ANTLERS vs SEVILLA
鹿島アントラーズ vs セビージャ


文/西部謙司



 セビージャは16-17シーズンのヨーロッパサッカー界で最も注目すべきチームだった。チリ代表をコパ・アメリカ優勝に導いてセビージャの監督となったホルヘ・サンパオリ監督の戦術を端的に表現すれば、「勇敢なサッカー」である。


 強力な相手に対しても決して怯まない。最前線からプレッシングを仕掛け、レアル・マドリーやバルセロナにも引かなかった。一方、相手のハイプレスに対してはロングボールで逃げずにパスワークで外していく。攻守において相手を恐れず、自分たちを信じて戦う。レアルやバルサに対しては守備を固めてカウンターを狙うのが定石だ。ところが、セビージャはそうした弱者の戦法ではない。正面から撃ち合って倒す気満々なのだ。


 サンパオリ監督は同じアルゼンチン人でチリ代表監督の前任者でもあるマルセロ・ビエルサ監督の信奉者。ビエルサはオランダのトータルフットボールに感銘して独自の戦い方を編み出した監督であり、ルーツはバルセロナのスタイルと同じである。ただ、ビエルサが率いてきたのはバルサほど強大な戦力を擁するチームではない。その点はサンパオリも同じで、弱小ではないにしてもトップとも言えないチームを率いて最強チームと同種のサッカーを志向する。そして、戦力的には格上のチームにも勝ってしまう。弱者の立場ではなく、強者として強者に立ち向かう姿勢が特異だ。


 サンパオリはアルゼンチン代表監督に就任し、1シーズンでセビージャを去る。しかし、彼を招へいした時点でセビージャの方針は明らかだろう。弱者として勝とうとするのではなく真の強者を目指す。つまりレアルやバルサの上に立とうとしているクラブだ。



強者を恐れないDNA



 昨年のFCWCで準優勝した鹿島アントラーズは、決勝でレアル・マドリー相手に延長へもつれる接戦を演じた。鹿島の「動じない」プレーぶりが印象的だった。1993年、鹿島は“Jリーグの弱者”という位置づけで開幕したJリーグ初年度のファーストステージで優勝している。そして、その時からプレースタイルは基本的に変わっていない。たとえ弱者と見られていても鹿島は最初から何者も恐れていなかった。極端に守備的でも攻撃的でもなく、どんな相手や状況にも対応できるバランスの取れたサッカーを志向してきた。Jリーグでは試合巧者とも言われているが、それは何かに特化するのではなく、勝つためにすべてのことを疎かにせず、やるべきことをやる彼らの姿勢から、結果的に試合巧者となっているのだろう。


 レアルとの試合では当然相手に圧倒される局面もあった。しかし、鹿島はJリーグでも浦和レッズや川崎フロンターレに劣勢を強いられる試合をしている。その意味では普段と何も変わらない。冷静にレアルの攻撃を受け止め、反撃に転じていた。相手が強豪だからといって気負うことはないし怯みもしない。いつも通りに、やるべきことをやっていた。



まるでトヨタカップの図式



 セビージャが理想へ向かって前のめりのチームだとすれば、鹿島はどんな相手にも怯まず侮らない動じないチームと言える。両者の対決は、かつてのトヨタカップを思わせるものになるかもしれない。


 ナスリ、エンゾンジ、ビトロなどを擁するセビージャのパスワークはヨーロッパでも屈指のハイレベルにある。しかし、鹿島が戦いにくい相手ではない。かつてのトヨタカップでは、ネームバリューや下馬評では圧倒的有利なはずのヨーロッパ勢が、南米勢のしたたかな戦いに敗れた例がいくつもあった。鹿島はブラジルのスタイル、といってもセレソンではなく堅実な面もあるブラジルのサッカーを継承してきた。セビージャに対しても、いつも通りに動ずることなく対処するだろう。


 ヨーロッパの最先端を行くセビージャと、南米の伝統を受け継ぐ鹿島の一戦は、似ているようで異なる個性のぶつかり合いになる。

最終更新:6/16(金) 18:31
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