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青春18きっぷで三江線、惜別の旅。90年間ありがとう!

6/16(金) 18:30配信

旅行読売

岡山発→
伯備線→山陰線→三江線→芸備線→可部線→呉線→山陽線
→岡山着

 とりわけ“鉄女”でなくとも、三江線が来年4月1日で廃止というニュースを聞き、さよなら乗車に行きたいと思い立った。三江線がどこを走るのかすら知っていなかったけれど、存廃の目安となる路線1キロ当たりの1日の平均通過人数2000人にははるかに及ばない、わずか1日58人(2015年度)という厳しさでこれまで存続してきたという。中国山地の山あいを縦断するのどかなローカル線のイメージが思い浮かんだ。
 
 時刻表をめくって目を丸くした。始点の島根県西部の江津(ごうつ)、終点の広島県の三次(みよし)からも列車は1日5本だけ……。しかしめげるわけにはいかないと、乗り継ぎパターンをあれこれ検討。時間節約のため、岡山―米子駅間は特急やくもを利用し、米子から青春18きっぷで山陰線に乗車、江津で三江線に乗り継ぐことにした。大阪方面からも十分に楽しめるコースだ。
 この時はまだ、乗り継ぎを考えるだけで精いっぱい。どんな出会いがあり、ましてや「三江線ありがとう」と旅の終わりにしみじみするとは思いもよらなかった。

時速30キロで心もゆったり

 15時5分に江津に着くと、ホームの反対側には三江線の白い気動車が待機し、乗客がこぞってカメラを向けていた。
 三江線は、中国地方最大の長流、江(ごう)の川に沿って線路が続き、108.1キロに及ぶ全区間が清流とともにある。時速約30キロでゆっくりゆっくり川辺を進み、移りゆく景色もスローモーション。水面に映る山影、緑の青さ、赤い屋根の家々やカラフルな橋梁が織りなす里の景色に、車内の誰もが見入っている。中には、沿線住民と手を振り合う乗客も。
 「農作業中の人や、学校帰りの子どもらも手を振ってくれて素直にうれしい」と、兵庫県から来た金子朋文さん、宇垣貴裕さん、北村匡視さん。島根弁の女性グループも、「普段は車だけん、地元にいながら三江線は何十年ぶり。車から見る景色とは全然違って新鮮よ」と、鉄道ファンのみならず初夏の鉄道旅を楽しんでいるようだった。
 
 私はさらに欲張って沿線で1泊する計画だ。駅前に温泉宿がある潮駅で降りると、川に面したホームの前には、まるで山水画のような景観が広がっていた。
 「きれいですねえ」。一緒に下車したもう一人の旅人に声をかけると、奇遇にも同じ宿に泊まるという。東京から来た松林建さんは、学生時代から30年来の三江線ファンで、沿線に広がる日本の原風景と、そこに息づく自然や文化が大好きです。廃線は寂しい」と名残を惜しむ。建設開始から全線開通まで49年を要しその後も40年以上、水害や赤字による廃線の危機と隣り合わせで走り続けてきた三江線の健闘を、旧友のように温かく称えていた。
 宿泊した潮温泉大和(だいわ)荘の支配人・高内光弘さんも、「三江線がなくなれば沿線の街も自然消滅していくようで心許ない。だけどね、こんな田舎に鉄道があっただけでもありがたかったと思いますわ」と、複雑な胸の内を感謝の言葉で包んだ。
 大和荘は潮駅前の一軒宿で、地元で人気の食事処でもある。自慢の温泉は源泉かけ流し。湯は濃いうぐいす色でややとろみがあり、肌触りが軟らかい。気持ちが良くてふーっと体の力が抜ける。その時、ガタンゴトン、と列車の近付く音が聞こえて、窓の下を白い車両が走り抜けた。
 ロビーへ行くと、車内で出会った金子さんたちと再会。聞けば、3駅先の宇都井(うづい)駅を見てから、30分後の列車で折り返してきたという。宇都井駅はトンネルとトンネルを結ぶ鉄橋の上にあり、「天空の駅」と呼ばれ人気がある。これはぜひまねしたい乗り継ぎ技だ。

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最終更新:6/16(金) 20:16
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