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ベトナム中部の観光名所ミーソン遺跡でヒンドゥー教文化を体感する

6/16(金) 12:01配信

CREA WEB

20世紀に発見されたヒンドゥー教遺跡

 世界的なブランドホテルが続々と誕生し、今やベトナム屈指のリゾート地となったダナン。日本の雑誌やテレビなどでも特集が組まれ、一度はその名を耳にしたことがある人も少なくないかもしれません。さらに、現在は日本からの直行便も運航しており、世界遺産であるホイアンとあわせてベトナム中部を訪れる旅行者は、年々増え続けています。

 しかし、そんな中部観光の目玉のひとつでありながら、郊外にあるためか、まだ訪れる人の少ない場所があります。それが、かつて2世紀から19世紀までの長きにわたり、ベトナム中部沿岸地方に一大王国を築いたチャンパ王国の聖地、ミーソン遺跡です。そこで今回は、リゾートステイの合間に多民族国家であるベトナムの歴史もちょっぴり学べる、こちらの遺跡をご紹介します。

 ミーソン遺跡は、ベトナムに暮らす54の民族のひとつ、チャム族の祖先である古チャム人の聖地とされる場所。ホイアンから南西へ車で約1時間の山中にあり、ダナンやホイアンなどの街から、現地発のオプショナルツアーで訪れるのが一般的です。

 ベトナムの宗教といえば仏教を想像しがちですが、チャム人が信仰していたのはヒンドゥー教。そのためミーソン遺跡にはカンボジアのアンコール遺跡群を思わせるタワーやレリーフが見られ、その希少性から1999年にはユネスコの世界遺産にも登録されました。

 とはいえ、実はこの遺跡が発見されたのは、なんと20世紀に入ってからのこと。ベトナム戦争時にアメリカ軍の空爆により遺跡の大半が破壊されましたが、発見当初にフランス極東学院により残された綿密な調査資料を基に、現在少しずつ修復が進められています。

森の中に佇む荘厳な祠堂

 ヒンドゥー教の遺跡であるミーソンには、それぞれ男性器と女性器の象徴である、リンガとヨニがいたるところに残されています。そして、それらご神体を納めているのがチャムタワーと呼ばれる祠堂です。現在は発掘されたうちの一部しか公開されていませんが、かつては約70ものタワーが林立していたと言われています。

 さて、遺跡の見所はやはり祠堂です。その多くは8~13世紀頃に建てられたもので、驚くべきことにモルタルなどの接着材を使わずに赤茶色の煉瓦を積み上げていく、高度な建築技術が用いられています。

 また、少しずつ煉瓦をずらしながら積み上げることで生み出されるアーチ状の屋根は内部に広く高い空間を有し、ゆるやかな曲線を描くその姿は、チャム人の祠堂の特徴ともなっています。

 祠堂の壁面を彩るレリーフも必見です。優しく微笑む女神像や細やかな唐草模様など、表面を覆う砂岩に刻まれたレリーフの数々もまた、当時の技術の高さを現代に伝えています。

 この他にも、遺跡に残されていた石像などの一部は、ダナン市内にある「チャム彫刻博物館」にも展示されています。博物館では時代ごとの歴史背景なども説明されており、遺跡見学前の予習にもぴったりです。

 ベトナムのヒンドゥー教文化という、いつもとは違う側面を見られるミーソン遺跡。歴史にあまり興味がない人も、緑の木々が生い茂る地の散策はまるで軽いハイキング気分。ビーチの旅のアクセントに、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

杉田憲昭(すぎたのりあき)
ベトナム・ホーチミン市在住のエディター&フォトグラファー。編集プロダクション・広告代理店「GRAFICA」代表。日本で編集者として活躍後、渡越。在ベトナム14年。女性誌や旅行誌、機内誌などの取材・撮影・コーディネートを通じ、幅広くベトナム情報を発信中。

杉田憲昭

最終更新:6/16(金) 12:01
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