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押井守氏、映画『バイオ』制作に乗り気!? 『バイオハザード:ヴェンデッタ』辻本貴則監督×押井氏の師弟対談レポ

6/17(土) 13:01配信

おたぽる

 5月27日から全国劇場にて公開中のCGアニメ映画『バイオハザード:ヴェンデッタ』。6月13日にはそんな本作の大ヒットを記念し、辻本貴則監督と、その辻本監督が“師”と仰ぐ押井守氏によるスペシャルトークショーが新宿ピカデリーにて開催された。本記事では繰り広げられた濃厚なトークの模様の一部始終をレポートしていくが、ネタバレになる話題が多分に含まれているため、できれば観劇後にお読みいただくことをオススメする。
 
『バイオハザード:ヴェンデッタ』には、対バイオテロ組織「BSAA」のクリス・レッドフィールドや、特殊部隊「S.T.A.R.S.」隊員としてクリスと共闘したレベッカ・チェンバース、そしてこれまでのアニメ映画2作で主人公として活躍したレオン・S・ケネディという、シリーズ屈指の人気キャラクターが集結。そんな彼らがニューヨークで大規模なバイオテロを企てる国際指名手配犯のグレン・アリアスを阻止するべく奮闘する姿が描かれる。

 辻本監督は本作のオファーを受けてすぐに、押井氏に製作会社とのギャランティの交渉はどう行うのか、製作日数はどれくらいかかるかなどを相談したという。特にギャランティに関しては、押井氏から「いちばん重要な交渉だぞ」と念を押されていたものの「できなかったんですよ。会ったこともない人が名指しで誘ってくれているのに『足りないなぁ』なんて言えないでしょう(笑)!」と赤裸々にコメント。押井氏は「関西人のくせに」と煽りつつも、「Production I.Gの石川(光久)は買い物をするとき相手の言い値の半額から始めて、売るときは倍額から始める。そうするとだいたいいいところに落ち着くんだ」と交渉術をレクチャーした。

 さらに、今作の見どころのひとつでもあるレオンとケルベロスによるチェイスシーンをこっそりと見てもらったそうで、押井氏からは「(ケルベロスのもととなる)ドーベルマンの脚が太すぎる」とのダメ出しがあったそうだが、それは車を押しつぶすシーンの説得力を出すためだそう。「ゾンビのグロテスクな描写に関しては僕のこだわりです」と制作秘話も明らかとなった。

 押井氏といえば、血の表現が苦手なことで知られており、実写のそうした描写にも「俺は好きじゃない」とコメントしていたが、2015年に公開された映画『東京無国籍少女』の監督を務めたことで「意外に血が好きであることがわかってしまった」とその胸中を明かした。

「アクションで血しぶきがパッと広がると、それがいい“間”になるんだよね。リズムをつくりやすいっていうメリットもあるし、赤っていう色を映画のなかでうまく使うポイントになるから「血って意外といいな」と気がついた」と真剣な表情で続ける押井氏。今度は辻本監督から「気づくのが遅いっ!」と煽られては「お前が使いすぎなんだよ!」と返し、二人のテンポのいいやりとりが会場の笑いを誘っていた。その後「もし自分が『バイオハザード(以下、『バイオ』)』の次回作をやるなら?」と辻本監督に聞かれると「血みどろで!」と即答していたことも印象深い。

 辻本監督によると、押井氏は自身のメールマガジンで『バイオ』次回作の監督を狙っていることをにおわせていたという。しかし押井氏は「狙ってるわけじゃないよ。でもオファーが来たら絶対に断らない」と断言。お気に入りのキャラクターはダントツでジル・バレンタインで、もし自身が『バイオ』で映画をつくるときは間違いなく主人公にするという。

 また、「キャラクターは“対”になる」という持論に加え「女性が主人公でパートナーが男性だとどうしても恋愛ドラマになだれ込んでしまうし、そういう予想のもとにしか作品を見てもらえなくなる」ということで、パートナーも『バイオ6』に登場した女性キャラクターであるヘレナ・ハーパーにして「バリバリにハードな作品にしたい」と構想を熱く語った。そんな押井氏の姿に、辻本監督は穏やかな表情を浮かべながら「押井さんが『バイオ』にやたら詳しいのが本当に気持ち悪くて」と漏らす場面も。

 押井氏によれば、ちなみに敵役も女性キャラクターが理想なんだそう。その理由としては、映画『エイリアン2』(86年)のエレン・リプリーとニュートの関係を例に挙げて「主要キャラクターを女性にして、重要なポジションを動物や子どもにすることで“母性”が絡んだ奥行きのあるキャラクターが描ける。『バイオ』の女性キャラは基本的に“戦う女性”。この方向のキャラクターはあまりいないから“母性”はひとつ、落とし所になる」とのこと。本作のヒロイン・レベッカに関しては「あまり色っぽい女性だとレオンとクリスの関係性を壊してしまうから、この人選は正解だった」と称賛していた。

 押井氏は辻本監督から何度も「やっぱり次回作を狙ってるでしょ」とツッコまれていたが、「自分が勉強したことをムダにしたくない」のだという。「アニメの人間だから、何かが動くときに生じる“快感原則”に敏感なんだ。格闘は格闘だけ、銃撃は銃撃だけのゲームが多かったなかで『バイオ』は違った。パンチやキックに加えて銃器が絡んだ『バイオ』のモーションには『バーチャファイター』以来の新たな“快感原則”の可能性を感じた」そうで、シリーズ作品のプレイ動画を何百時間と見続けたんだとか。ちなみに『バイオ』シリーズでは『5』と『6』が特にお気に入りだという。

 最後に押井氏は「これで失敗したら辻本貴則という男は終わりだなと思っていましたが、うまくいったようでホッとしております。一人前の監督の仲間入りした以上は敵なので、次からは容赦なく叩こうと思います(笑)。今後とも辻本貴則をよろしくご贔屓に」と冗談混じりに本作の成功を祝った。

 辻本監督は「押井さんが僕のトークイベントのお相手になってくれて、僕の作品がこんなに大勢の方に楽しんでもらえている。こんな幸せな日はありません。こんな日がまた来るように、今後もみなさんに喜んでいただける作品をつくっていきたいと思います」と照れ隠しを交えながら語り、イベントは幕を閉じた。

 和気あいあいとしたトークを繰り広げながらも、ジルとヘレナを主軸として、血みどろでハードなアクションを描きつつ“母性”が落とし所になるという押井版『バイオ』の構想が語られた本イベント。カプコンの小林裕幸プロデューサー曰く「設定が複雑なので『ヴェンデッタ』での登場は見送った」(関連記事:http://otapol.jp/2017/05/post-10601_entry.html)というジルを押井氏がどのように料理するのか、ぜひとも観てみたいところだ。

 もちろん、本作の経験を得た辻本監督の描く次なる『バイオ』も観たいところなので、ひとまずは友人と一緒に改めて本作を観たあとで、どちらが観たいか存分に語り合ってみてはいかがだろうか。

(取材・文/イデア)


■映画『バイオハザード:ヴェンデッタ』
大ヒット上映中
配給:KADOKAWA
・公式サイト http://biohazard-vendetta.com/
・公式Twitter @bio_vendetta

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最終更新:6/17(土) 13:01
おたぽる