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1920年代に「音楽の民主化」を果たした、あるテクノロジーの物語

6/18(日) 12:30配信

WIRED.jp

レコード会社は1920年代、最新式の携帯録音機と共に米国各地を巡り、地元ミュージシャンを見出して録音。ポピュラー音楽のあり方を根本的に変えた。PBSの番組「アメリカン・エピック」を紹介。

デジタルで音楽を聴く時代、レコードプレーヤーに求められる機能とは

1920年代、「旋盤型録音機」は米国全国を巡り、ウェストヴァージニア州のプア・ヴァレーのような田舎町や、カーター・ファミリーといったミュージシャンのもとを訪れ、その音楽を世界の新たな聴衆に紹介した。

この驚くべきテクノロジーによって、人が音楽を見出して共有する方法は完全に変わったのだが、その事実は、音楽界の伝説的人物T・ボーン・バーネットと数人の友人たちが思い出させるまで、歴史の闇に埋もれていた。

iTunesやストリーミングと同じように、かつて旋盤型録音機が音楽を民主化したのだ。それまでのレコード音楽は、プロの作曲家が書いて、プロのシンガーが録音し、裕福な聴衆向けに売られていた。

「当時の音楽は、非常にエリート主義的なものでした。レコード販売は大都市を中心に、金持ち相手に行われていました」と語るのは、アメリカン・エピック」のディレクターであるバーナード・マクマホンだ。この番組は、録音が始まって間もないころにフォーカスした3部構成のTVドキュメンタリーで、2017年5月16日夜(米国時間)にPBSで放送されている。

結成、音楽捕獲チーム

ラジオが台頭すると、レコード業界は危機へと追い込まれた。レコード販売は1926年の1年間だけで80パーセントも下落した。そのためレコード業界は、新しい聴衆を惹きつけられるアーティスト探しに乗りだし、ニューヨークにあるスタジオの外でも音楽を録音できるようにするため、新しい技術に投資した。

コロムビア・レコードとヴィクター・トーキング・マシンがターゲットとしたのは、電気を使用するラジオは買えないが、手回し式のレコードプレーヤーなら手が届くという米国の田舎に住む人々だった。そこで、プロの作曲家やミュージシャンを雇うのではなく、携帯型の録音機器を>ウェスタン・エレクトリックから借りて、国中を巡る「音楽捕獲チーム」を派遣した。

このチームが録音したミュージシャンやジャンルは、その地域以外ではめったに聞けないものだった。レコーディングプロデューサーのラルフ・ピアは、テネシー州ブリストルに滞在した1週間だけで、ジミー・ロジャーズ、カーター・ファミリー、ザ・ジョンソン・ブラザーズといったカントリーミュージックのレジェンドたちを見出し、その録音を行った。

当時のレコード会社は、特定の地域の聴き手に特定のジャンルを売り込む計画だった。ルイジアナ州にはケイジャン音楽、ウエストヴァージニア州にはブルーグラスのレコードといったように。

「当時のレコード会社は、ミシシッピの田舎ミュージシャンが録音した音楽に、ニューヨークの人たちが興味を示すとは思っていませんでした」とマクマホンは述べる。だがこれらのレコードは、とてつもなく人気があることがわかった。数百万人がレコードを購入し、ポピュラー音楽のあり方が根本的に変わったのだ。

ゴスペル、デルタ・ブルース、ブルーグラスが初めて旋盤型録音機で録音された。ミシシッピ・ジョン・ハート、スキップ・ジェイムス、ロバート・ジョンソンといったミュージシャンたちの録音が、20世紀後半の音楽の基礎を築いたのだ。

「米国初のシンガーソングライターが生まれ、自分の人生や世界で起こったことを曲にして録音するようになりました。このとき初めて、音楽を通して米国の声が突然聞こえるようになり、米国は自国と対話し始めたのです」とマクマホンは語る。

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最終更新:6/18(日) 12:30
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