ここから本文です

小笠原満男だってよく怒った。いまの若手を動かすには? アントラーズ鈴木満氏に聞く。

6/19(月) 12:00配信

BEST TIMES

Jリーグでもっともタイトルを獲得したチーム、鹿島アントラーズ。その数19――他クラブの追随を許さない結果を出してきた常勝軍団はいかにして作られたか。すべてのタイトルにかかわった強化部長で、6月に初の著書「血を繋げる。」(幻冬舎)を上梓した鈴木満氏に聞く、組織の在り方、リーダーの務め、アントラーズの秘密。

Q6.10年前と比べ、選手のメンタリティやパーソナリティは変化していると思いますか?  また変化しているとすればどのあたりでしょうか。

 ――選手のメンタリティの変化を感じますか。

鈴木 時代の流れとともに当然、選手のメンタリティは変わってきています。以前は強いチームに入って優勝を味わいたいと考える選手が多かったけれど、最近は、弱くてもいいから試合に出られるチームに入り、そこで自分をアピールして早く海外に行きたいと考えるようになってきました。最初から海外移籍が頭にあって、Jリーグはそのためのステップの場と位置づけている選手が少なくありません。

――選手の精神面はどうでしょうか。

鈴木 我慢強さがなくなってきている気がします。試合に出られないと、すぐに、出られるチームに移籍しようとします。試合に出られようになるまで、ここで辛抱しようと考える選手が減ってきました。以前は高卒の選手が30代まで在籍してくれたけれど、いまはそういう時代ではありません。
 一生、この会社に尽くそうという人が減ったのと同じでしょう。だから、先をにらんだチーム編成がしにくくなっています。それでも、変えてはいけない部分、クラブの伝統を守っていく努力を怠ってはいけません。こういう時代だからこそ、教育をして「鹿島の選手」にしていく必要があります。

――チームには伝統を継承してくれる選手が必要ですね。

 鈴木 いまのチームでいえば、昌子源が伝統を次の世代に継承していく中心になると思っています。そういうことができるかどうかは個人の資質の問題でしょう。誰でもできることではありません。リーダーになる資質を持った選手を獲得して、その資質を磨いていくしかありません。
 小笠原満男はむかしからリーダーだったわけではありません。やんちゃ坊主で、勝手なことばかりしたので、よく説教をしました。まさか、いまのようなリーダーになるとは思っていませんでしたね。イタリア(メッシーナ)に移籍して、鹿島に戻ってきてから変わりました。あの世代では中田浩二が一番、バランス感覚があった。本山雅志は前向きで、常に一生懸命、取り組む姿勢を示して後輩たちに影響を及ぼしました。曽ケ端準はすすんで若手にうるさいことを言うわけではないけれど、満男とセットでチームを引き締めてくれています。

――チームは「生きもの」とよく言いますが、その変化に対応していかなくてはなりませんね。

鈴木 以前より選手の出入りが増えているので、チームづくりの計算が立てにくくなっています。3年後はこの選手を中心にチームをつくろう、それにはこういうタイプの監督がいいだろうと考えていても、その選手がポッと出て行ってしまうことがあります。
 そのたびに、また新しくチームをつくり直さなくてはなりません。選手が入れ替わり、チームが変化するので、それに対応したタイムリーな監督人事が必要になってきました。勝つ確率を高めるには、現状に合った監督を当てはめていかなくてはなりません。対応の素早さが求められます。

――情報過多の時代になって、強化部長の仕事は変わりましたか。

鈴木 この世界でもいろんな情報があふれていて、大事なことが筒抜けになっています。代理人を通じて選手も情報を豊富に持っています。「あのクラブにいったら年俸はいくらもらえる」「海外に移籍すればいくらになる」ということを選手は知っています。契約交渉の場で対抗するには、代理人に負けないだけの情報を持っていなくてはなりません。そうしないと負けてしまいます。

――選手との年齢差が開くにつれ、コミュニケーションが難しくなりませんか。

鈴木 私の子どもより若い選手が入ってきているわけですから、話をするのが難しくなっています。最近は強化部の若い吉岡宗重に間に入ってもらっています。でも、私もグラウンドに出たら、なるべく若い選手に話し掛けるようにしています。私が現役のころは理不尽なことでも言われたとおりにやりましたが、今の選手は理屈を説明しないと動きません。合理性とか効率を重視します。だから監督も練習の目的とか意義をきちんと説明しなければなりません。何のためか分からないけれど、やらされているうちに身についたという私の時代とは違います。「いいからやれ」「黙ってやれ」は通用しません。【集中提言1週間・鈴木満さんインタビュー】

文:ベストタイムズ編集部 写真:西尾和生

記事提供社からのご案内(外部サイト)

出版社ベストセラーズの編集者が作る「感情を揺さぶる」情報マガジン「BEST TIMESベストタイムズ」。