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「読み書き障害」をもつ人が広告業界に多い理由:「脳内の配線が少し人と違うだけ」

6/19(月) 8:10配信

DIGIDAY[日本版]

リッチ・シルバースタイン氏は、成長の過程で大変な時期を経験した。広告エージェンシーのグッドバイ・シルバースタイン&パートナーズ(Goodby Silverstein & Partners)で共同議長とパートナーを務める、広告業界のレジェンドの中学・高校時代は困難の連続であった。先生は彼を「能無し」や「怠け者」と呼んだ。彼は成績不振児が集まるクラスに割り当てられた。「それがどんなに恐ろしいものだったか、よく覚えている」と、彼は語る。「モノを思い描く能力には自信があったが、それと比べると読み書きは上手にはできなかった」。

ニューヨークのヨークタウン・ハイツにあるホームセンターで得た最初の仕事では、ネジの(大きさや形状の)違いが分からず、間違った器具をみんなに提供していた。デザイン系の学校に自分の居場所を見つけたあとも、5年間はグラフィックデザインやエージェンシーの仕事を転々としていた。言葉は彼を困惑させた。

全米で4000万人存在するディスレクシア(読み書きの能力の発達を妨げる神経障害)患者のひとりに違いないということに、シルバースタイン氏自身が気が付いたのは、もっとあとになってからだった。

さらに、広告業界にはディスレクシアを抱えている人が非常に多いようだ。「ほかのクリエイティブ業界と同様に、広告業界も学習障害をもった人で溢れている」と、サーチ&サーチ(Saatchi & Saatchi)の元クリエイティブチーフで、彼自身もディスレクシアであるクリス・アーノルド氏は語る。アーノルド氏は現在、ザ・ガレージ(The Garage)という自身のショップを経営している。「私の会社のクリエイティブ部門の社員の半数は、ディスレクシアを抱えている」。

「人とは異なる脳内配線」

広告業界内のディスレクシアに関する統計や研究はいまだない一方で、ディスレクシアや自閉症を引き起こす脳内の異常は、クリエィテビティや芸術的なスキル、そして物ごとを異なる手段で可視化する能力の向上に繋がる、という研究結果がでている。たとえば、精神科医のガイル・ソルツ氏は、彼女の著書『相違の力:障害と天才の繋がり(The Power of Different: The Link Between Disorder and Genius)』で、ディスレクシアを抱える人は、突出した視覚・空間関連の才能をもっている、と書いている(また、ディスレクシアを抱える著名なビジネスリーダーとしてApple創設者のスティーブ・ジョブズ、ヴァージン・グループ創設者のリチャード・ブランソンが挙げられている)。

シルバースタイン氏にとって、成功の鍵は物ごとを視覚的に考えることだった。正式な診断結果を受けたわけではないが、自身の能力はディスレクシアがもたらしたものであり、シルバースタイン氏が「言葉の使い方に優れている」と表現する、共同創設者兼パートナーのジェフ・グッドバイ氏との長年にわたる協働関係にも大きく寄与していると信じている。シルバーステイン氏は、これらの言葉を芸術的な表現に置き換える。

「私の頭のなかの配線は少し人とは違うだけだ。私が行うことのすべては直感的で視覚的だ」と、彼は語る。「私の脳は極端に視覚的で、瞬時にアイデアを視覚化できる」。

同様に、自閉スペクトラム症を抱える人々は、大きな障害を抱えているにもかかわらず、クリエイティブな問題に対してユニークな答えを思いつくタイプの人が非常に多い。DDB ニューヨーク(DDB New York)でクリエイティブテクノロジーオフィサーを務めるアレクザンダー・リア氏がまだ成長中なんだといったように、彼らは社会的には扱いにくいタイプかも知れないが、この病気はある特定の強みを得るのに一役買っている。たとえば、リア氏は、細部に対する鋭い目と、目の前の作業に対して脅威的な集中力を発揮する能力をもっていて、コーディングやプロトタイピングといった作業に役立っていると語る。

「私たちの不可思議な性質や構造のおかげで、人とは異なった方法で物事に集中することができる」と、30代で自閉症と診断されたリア氏は語る。「いま思えば、自閉症は私をテレビゲームやパソコンにのめり込ませ、いま私が進んでいるキャリアの道に導いてくれたのだ」。

アーノルド氏によると、昔ながらの教育の線形的な構造が、ディスレクシアを抱える人々をクリエイティブ方面に傾倒しやすくする要因だという。決められたカリキュラムを上手にこなせない者が芸術に引き寄せられるのは当然のことだ。これがアーノルド氏が、広告業界にディスレクシアや自閉症を抱える人が多いと感じる理由のひとつかもしれない。

「線形的なシステムは、非線形な人々を芸術面で秀でさせる」と、アーノルド氏は語る。「彼らは、型にハマったことを上手くこなすことが苦手なため、彼ら自身の得意分野を探すことを余儀なくされる」。

多くの会社重役が広告業界に身を置くことになったもっとも大きな要因は、おそらくその業界の特質にある。広告業界は、人とは異なる考え方や表現を求める傾向があり、これは直線的な考え方に従うことをしない人々にとって魅力的だと、自身もディスレクシアを持ち、サンフランシスコに拠点を置くクリエイティブショップ、ジャーショニー(Gershoni)の共同設立者兼クリエイティブディレクターを務めるジル・ジャーショニー氏は語る。

ディスレクシアを抱える人は、物ごとをさまざまな方向な角度から同時に見て、複雑な概念を素早く考慮することができる」と、ジャーショニー氏は語る。「ブランドが革新的な発想を求めるコミュニケーションの世界では、これはとてつもなく大きな財産となる」。

幼少期にこれらの障害によって苦労してきた人々が、いまは彼らが抱えているディスレクシアや自閉症を価値ある財産として見ていることは不思議ではない。「自閉症を自分の『スーパーパワー』だと思っている」と、リア氏は語る。「進化論でいえば、我々は未来、定型発達した人(精神医学的な健常者)は過去かもしれないー『エックスメン』(X-Men)のように」。

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