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高齢ドライバーの事故低減に求められる産官学民の連携

6/19(月) 18:30配信

@DIME

ここ数年、高齢ドライバーの運転リスクに対する世間の目が厳しくなっている。免許更新時、75歳以上に認知機能検査を義務付けるよう改正された道路交通法などは、その代表格といえる。しかし「認知機能が落ちたので免許を更新させない」だけで、この問題を根本から解決したことにならない。車を運転できない=外出の機会を奪ってしまうからだ。公共交通機関の整備されていない地方都市ほどその影響は大きい。

【写真】高齢ドライバーの事故低減に求められる産官学民の連携

理想的なのは「高齢になっても自由に移動できる、自立した生活」をできるだけ長く続けてもらうことだ。そこで各自治体は健康維持や介護予防運動に力を入れているが、「官」だけの取り組みには限界があるとの声も出ていた。

そんな中、新たにダイハツ工業が中心となり、産・官・学・民が協力しあう「高齢者の事故低減」に向けた取り組みが始まっている。具体的には産(ダイハツ工業/JAF)、官(自治体)、学(日本理学療法士協会)、民(住民)による活動だ。これはどのようなものなのか。この5月、三重県松阪市で行われた「健康安全運転講座」を例にしながら、今後の展開を考えてみた。

●地元販売会社を拠点にした地域イベント

会場になったのは三重ダイハツ販売松阪船江店。ここに地域の高齢者の方々に集まってもらい、以下のようなプログラムが行われた。

・運転講習会(JAF主催)

運転姿勢やドアミラーなどの死角確認など、実車を使い丁寧に説明。

・運転能力維持に向けた運動指導(理学療法士協会主催)

体力測定を行ったうえで、運転能力維持に役立つ運動指導。認知症防止のための頭の体操を取り入れた運動など。

・最新安全装備の体験(三重ダイハツ販売主催)

運転中のヒヤッとするシーンで事故の回避を図るスマートアシスト機能の体験など。

●欠点を見つけるのではなく、楽しく参加してもらう内容

参加者はおよそ20名。すでに地区の集まりや介護予防教室などで顔見知りも多かったようで、和気あいあいとした雰囲気だ。販売会社の若手スタッフがキビキビと動き、参加者を上手に誘導し、実際の車を使ったレクチャーはとても分かりやすく説得力があった。

運動指導の理学療法士は市の健康教室などで日頃からこの地区を担当しているスタッフで、参加者のウケも抜群。全般にわたり堅苦しさがなく、笑顔で物事が進んでいた。参加者を飽きさせず、継続に繋がる体制作りができていた。

イベントに直接的な介入はしていないものの、松阪市側のスタッフとして、高齢者支援課の課長や保健師。この地区を担当している包括支援センターの社会福祉士。同じくこの地区の市民センター所長も参加者の様子を最後まで見守っていた。

●それぞれのメリットを成り立たせながら進化することに期待

さらに、今回のイベントは三重ダイハツ販売の林恒雄取締役社長、ダイハツ工業の三井正則取締役社長、松阪市の竹上真人市長、日本理学療法士協会の半田一登会長(写真左からの並び順)なども姿を見せ、時には住民とともに運動をする場面もあった。それだけこの事業に対する期待が大きいということだ。

高齢者にまつわる社会問題対策は、これまで官がやらねば誰がやる的な流れがあった。かといって予算と人員には限界があり、住民への声がけひとつとっても「お願い」だけにとどまっていた。

そこに産の大きな組織力・企画力と、学の確かな知見と技術が融合したことで、イベントがより魅力的なものへと変化した。会場となった販売店の華やかなショールーム、関わっているスタッフの人数や若さ、行動力。まさに活気が感じられた。

●参加する民の意識も大きく変わる

イベント参加者に男性が多かったことも注目に値する。なぜなら、高齢者の集まりというと女性だらけになることがほとんどだからだ。女性はすぐに友達を作るのに対し、男性は群れたがらない。ハッキリいえば自宅にこもり、孤立状態になるケースが多いのだ。

ところが自動車メーカーが主催するイベントということで、男性の遊び心をくすぐった「料理のことは分からないが、運転のことは俺がやらなきゃ」との使命感、今の自分を再確認したいとの思いもあり、自分の意思で参加したはずだ。実はこれが重要なポイントだ。

ダイハツ工業では2016年度から三重県、広島県、静岡県で同様のイベントを行い、2017年度から本格的なプロジェクトを始動。全国規模の活動として拡大している。今後は他の自動車メーカーも追従し、各自治体や専門職の団体などとの連携がさらに進んでいくことが予想される。

自治体と特定の民間企業が連携を行うことに「いかがなものか」と、苦言を呈す人もいるだろう。ただ、そういった声に敏感に反応しすぎると、何もできなくなる。企業がそれにより利益を上げたとしても、他の官、学、民、すべてによい影響が出ているのなら大歓迎すべきだろう。

(文・写真/西内義雄)

@DIME編集部

最終更新:6/19(月) 18:30
@DIME

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