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35歳で末期がん。余命数ヶ月で奥さんと子ども2人に伝えたかったことは―『人生の終い方 自分と大切な人のためにできること』

6/19(月) 11:00配信

ダ・ヴィンチニュース

 身内や知人の不幸を知ったとき、夜中に一人で過ごしているとき、ふと死ぬときのことを想像し、言いようのない恐怖に襲われることがある。きっと誰にでもあるはずだ。毎日を忙しく過ごしていると忘れがちだが、私たちはいつか死ぬ。目の前のことに気を取られ、この重大な事実にいつも目をそらしてしまう。しかし、もしあなたが近い将来、病気によって死ぬ運命を突きつけられたら、残りの時間をどう生きるだろう。あなたの周りの人たちに、どんなことを残していけるだろう。

 2016年5月、NHKスペシャル「人生の終い方」が放送された。超高齢社会の日本では、いわゆる「終活」が大ブームだが、この番組で放送された内容はちょっと違う。それぞれの人が人生の集大成として、最後にどんな言葉を残し、何をして人生をしめくくることがその人らしいか、それが残された人の何になるのか。そんな素朴な疑問を問いかけながら視聴者と一緒に考える番組だ。この番組には落語家の桂歌丸師匠が出演されており、放送された日が『笑点』の勇退を発表した日でもあったので、覚えている方がいるかもしれない。

『人生の終い方 自分と大切な人のためにできること』(NHKスペシャル取材班/講談社)では、それぞれの人たちが残りの時間を必死に生きた「人生の終い方」が紹介されている。そのなかでも本書で私が一番心打たれた「終い方」があった。残された時間の中で子どもたちに何を伝えられるか、何を残せるか、必死に探しながら生きた小熊正申さんだ。

 小熊さんは35歳という若さで末期がんを患った。奥さんと子ども2人を残して、余命数ヶ月という残酷な運命を突きつけられた。3ヶ月の娘の小学校の入学式も出られないかもしれない……。それでも小熊さんは悲嘆に暮れることなく、最期まで家族と過ごすため、病院を退院して家に戻ってきた。

 小熊さんには、どうしても子どもたちに伝えたいことがあった。「立ち向かうこと」「あきらめないこと」だ。しかしそれを言葉だけで伝えることは難しい。様々な葛藤が襲い、「俺の命に価値はあるのか?」と自暴自棄になることもあった。そんな小熊さんの気持ちを知ってか、2人の子どもたちは明るく、そして小熊さんを励ますように過ごした。

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