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「三菱UFJ信託」が三菱自“役員人事”反対の波紋

6/19(月) 5:57配信

デイリー新潮

 株主総会の季節がやって来た。今年の集中日は6月29日。今や総会屋は“絶滅危惧種”となり、企業の監視対象はアクティビストと呼ばれる“物言う”個人株主になっている。だが、今年から“身内”の動向にも目を光らせなければならなくなったのだという。

 経済界では、5月31日に開示された三菱UFJ信託銀行の資料が波紋を呼んでいる。全国紙の経済部記者も驚きを隠さない。

「開示されたのは、昨年12月14日に開かれた三菱自動車の臨時株主総会に関する資料。株主である三菱UFJ信託が、三菱自動車の提案した取締役選任議案に“NO”を突き付けたことが読み取れるのです。取締役の候補者には三菱グループ“御三家”トップの2人も名を連ねていましたから、三菱UFJ信託が反乱を起こしたと受け止められても仕方がありません」

“御三家”トップの2人とは、すでに三菱自動車で社外取締役も務めていた三菱重工の宮永俊一社長(69)と、三菱商事の小林健会長(68)を指す。ちなみに、三菱UFJ信託は、“御三家”の1つである三菱UFJフィナンシャル・グループの100%子会社だ。

「結局、三菱自動車の取締役選任議案は可決されましたが、同じグループの信託銀行が反対に回ったことを知った重工の宮永社長と、商事の小林会長は決していい気持ちはしなかったでしょうね」(同)

 三菱UFJ信託銀行は三菱自動車の株式の事務手続きを行う“株主名簿管理人”を務めているが、保有株式は1%未満。議案の可否に影響力は大きくなく、“御三家”トップの2人から不興を買ってまで“反乱”を起こす理由は何だったのか。

■“馴れ合い”解消

「三菱UFJ信託は、“御三家”よりも金融庁を恐れたのだと思います」

 こう苦笑するのは、三菱系メーカーの幹部だ。

「3年前、金融庁は信託銀行を初めとした機関投資家に対して、投資先企業との対話などを求める行動指針、いわゆるスチュワードシップ・コードを導入しました。それが5月に改訂されて、各投資先企業の株主総会での議案賛否を明らかにするように定めている。改訂された指針に従わなくても法的罰則はないが、明らかにしない場合はその理由を説明しなければなりません」

 これまで信託銀行の多くは、株主総会で企業が提案する議案に唯々諾々と賛成してきた過去がある。メガバンク行員が解説するには、

「金融庁の狙いは、信託銀行と投資先企業との“馴れ合い”解消。我々、銀行は経営陣が正しいと判断して融資を実行しているので、株主総会では少々首を傾げたくなるような議案にも賛成しています。一方の信託銀行は、顧客から預かった資産を運用して利益を得ているわけですから、株主総会では“顧客の代弁者”としての行動が求められているのです」

 三菱UFJ信託の“反乱”は、金融庁向けの出来レースではないかと疑いの声も少なくない。だが、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、株主総会正常化への端緒になるのではないかと期待する。

「スチュワードシップ・コードの受け入れを表明している機関投資家は、信託銀行だけではありません。生損保や投資顧問会社、そして世界最大規模の公的年金である年金積立金管理運用独立行政法人も表明している。案件によっては、経営陣が提出した議案が否決されるケースも出てくる可能性があります」

 総会屋と同じく、“シャンシャン総会”が死語になる日も遠くない? 

「週刊新潮」2017年6月15日号 掲載

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最終更新:6/19(月) 5:57
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