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ブラジル代表OBが指摘した日本サッカーの「弱点」。鹿島強化部長・鈴木満氏に聞く。

6/20(火) 18:00配信

BEST TIMES

Jリーグでもっともタイトルを獲得したチーム、鹿島アントラーズ。その数19――他クラブの追随を許さない結果を出してきた常勝軍団はいかにして作られたか。すべてのタイトルにかかわった強化部長で、6月に初の著書「血を繋げる。」(幻冬舎)を上梓した鈴木満氏に聞く、組織の在り方、リーダーの務め、アントラーズの秘密。最終回。

Q7・日本サッカーが世界で勝っていくために必要なことは何だと考えますか? 

 ――昨年末のクラブ・ワールドカップで鹿島はアジア勢として初めて決勝に進出しました。レアル・マドリード(スペイン)に敗れたとき、どんな思いを抱きましたか。

鈴木 あの時期は翌シーズンに向けたチーム編成で忙しくて、疲れていたこともありますが、レアルに負けた瞬間は本当にアタマにきました。「ここまで来て、何だよ」と腹がたちました。相手が欧州王者のレアルだから負けてもしょうがない、とはまったく思っていませんでしたから。
 石井正忠監督(当時)も選手たちも同じでした。本気で勝とうと思って、決勝に臨みました。だから、負けた瞬間はとにかく悔しかった。にもかかわらず、「素晴らしかった」「感動をありがとう」というメールや手紙をたくさん受け取ったときには違和感を覚えました。負けたのに、どうしてこんなに喜んでもらえるのだろうと思いました。善戦はしたけれど、タイトルは取っていないのですから。

――すべての試合を勝ちにいく、すべてのタイトルを取りにいくのは鹿島の伝統ですね。

鈴木 鹿島アントラーズが大きく変わった転換点は1993年の開幕前のイタリア合宿です。クロアチア代表との試合で鹿島は1―8で大敗を喫しました。あのとき、ジーコが「相手の方が格上だから、負けてもいいと思って試合に臨むな」と激怒しました。すべての試合に勝ちにいく鹿島の伝統はあそこから始まりました。あの教えが財産となっています。私もことあるごとに「負けていい試合はない」と選手に言い聞かせてきました。だから、レアル戦も本気で勝ちにいきました。

――日本サッカーが世界で勝つための課題は何でしょう。

鈴木 鹿島はジーコ、トニーニョ・セレーゾ、ジョルジーニョをはじめ、ブラジル代表として世界で戦ったトップクラスの選手や指導者から多くを学んできました。彼らは「日本人はまじめで、礼儀正しく、道徳心がある」と褒めてくれます。しかし、サッカーをするには欠けているものがあるとも言います。彼らの言葉でいえば「マリーシア」、ずる賢さです。
 日本の選手は目指すサッカー、こうしようと決めた戦術を90分間、やり通そうとします。しかし、ゲームではスコアや時間帯によって、やるべきことは変わります。相手を畳みかけなければならない時間帯もあれば、守りに徹しなければならない時間帯もあります。刻々と状況が変化する中で巧にゲームをコントロールしなければなりません。ジーコをはじめとしたブラジル人は「日本の選手はゲームマネジメントがつたない」と指摘します。そこが日本サッカーの最大の課題でしょう。国際試合をすると、その点を痛感します。

――鹿島はその点では優れているのではないですか。

 鈴木 日本の中では最もたけているでしょうね。だから、多くのタイトルを獲得できたのだと思います。
 ビスマルクがいたときの天皇杯決勝の終盤、リードしていた鹿島は敵陣のコーナーでボールをキープし、時間稼ぎをしました。勝つために必要なゲームマネジメントの一つですが、日本サッカー協会の関係者から「ああいうことをしてはいけない」という注文がつきました。
 私は「なぜですか? 日本代表が勝つために同じことをしたら、文句を言いますか?」と反論しました。あれがダメと言っていたら、イラク戦の試合終了間際に同点にされて、94年の米国ワールドカップ出場を逃した「ドーハの悲劇」のようなことが起きてしまいます。日本サッカー協会が「指導書で、ずる賢さを推奨するわけにはいかない」と言うのもわからないではないですが、世界で勝つためには状況に合わせたゲームマネジメントが必要です。
 日本サッカー協会の技術委員会(※2014年4月に就任)でも、毎回、日本サッカーの課題としてゲームマネジメントが挙がります。フィジカルの弱さとか技術の問題も課題でしょうが、ゲームマネジメントを向上させれば世界に近づけると思います。【集中提言1週間・鈴木満さんインタビュー】

文:ベストタイムズ編集部 写真:西尾和生

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