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「歳を重ねる」という言葉の復権:ファッション業界の年齢差別との戦い方

6/20(火) 7:10配信

DIGIDAY[日本版]

ジャッキー・オシャウネシー氏はロサンゼルスでの20年間の勤務を終え、ニューヨークに戻ったばかり。ウエストビレッジの友人宅に滞在していて、喫煙するため外へ出たときだった。午後9時、彼女はかつて住んでいた家の眺めと喧騒を懐かしんでいたとき、ひとりの女性が近くのレストランから出てきて彼女に近づいてきた。

「あなたはとても堂々としている」と彼女はいい、当時60歳だったオシャウネシーを驚かせた。彼女が異論を唱えはじめると、その女性は「そんなことはどうでもいい。あなたは美しいのだから」といって、夜の街に消えていった。

オシャウネシー氏は嬉しく感じたが、数週間後、はじめて出会った場所からほど近い別のレストランでその謎の女性に出くわすまで、そのやり取りをさほど気に留めていなかった。ふたりは一緒に夕食をともにした。数時間話し合い、連絡先を交換してから分かれた。それから数週間、ふたりは街で定期的に会った。ある日女性はオシャウネシー氏に写真を撮ってもらいたいかと尋ねた。女性はオシャウネシー氏が女優をしていた経歴を知っており、円熟したモデルを使った実験に興味をもっていた。

そのとき、オシャウネシー氏はマーシャ・ブラッディという名前しか知らなかったその女性が、実はアメリカンアパレル(American Apparel)のクリエイティブディレクターであることを知った。ブラッディ氏はオシャウネシー氏にブランドの次のキャンペーンの顔になって欲しいと頼み、オシャウネシー氏はそれを引き受けた。その日ランジェリーをまとったいくつかのポーズを含めた一連のポートレートでポーズを取ったあと、オシャウネシー氏はワクワクした。次に知ったことは、バイラルセンセーションになったということだ。

未開発市場

第2次世界大戦後の1946年から1964年のあいだに生まれた、ベビーブーマーと呼ばれる世代を調べたニールセン(Nielsen)の調査によると、米人口の推定50%が今年50歳以上になると予想されている。さらに、このグループは、2017年末までに米国の可処分所得の70%を支配すると見られている。

この現状は、アメリカで長年にわたり若者の代名詞であり、容姿や深く根付いた美の基準に基づいてその大部分が構築されているファッション業界に変化を促している。特に女性の場合それが顕著だ。ハリウッドを一目見ても、2014年から2016年の25の最優秀作品賞候補を調べた南カリフォルニア大学の調査では、60歳以上の俳優の78%が男性であったのに対して、女性はわずか12%だった。

50歳以上の女性がより大きな消費パワーをもつ時代、15歳の若いモデルを何十年もランウェイの中心に据えて途方もない値札をつけた商品を販売する高級ブランドにとっては、力が試される分岐点にもなっている。

『ディス・チェア・ロックス:年齢差別に対抗するマニュフェスト(This Chair Rocks: A Manifesto Against Ageism)』の著者アシュトン・アップルホワイト氏は、「ファッションで興味深いことは、それが美に極端な焦点を当てており、パラドックスを生んでいることだ。もちろん、私たちは若さに心酔し、若さと美を同一視するが、歳を重ねることと美しさの共存は可能だ。高齢のモデルを採用することは、それを検証することになる」という。

ファッションスポット(Fashion Spot)の調査によると、今年2月、ニューヨーク、パリ、ロンドン、ミラノで開催された世界ファッションウィーク期間中に、年齢50歳を超えるモデル21名がランウェイを歩いており、昨秋のモデル13名から増加している。ニューヨークでは、オシャウネシー氏がラルフローレン(Ralph Lauren)、マイケルコース(Michael Kors)、トムフォード(Tom Ford)、J.クルー(J. Crew)、レイチェルコーミー(Rachel Comey)、トム(Tome)といったブランドのショーに参加しており、年齢の壁をなくす動きを牽引した。

「我々はこれまで若さイコール美であるという考え方を植えつけられてきた。そして、商売のために若い女性の性的側面を強調することが主流となると、広告やショーに採用することが当たり前になった」と、トムのデザイナー、ラモン・マーティン氏は語った。 「そのキャスティングの方法が無視しているのは、そのほかの女性たち、デザイナーブランドの服を買えるだけのお金とライフスタイルをもっている円熟した女性の一大グループだ。そうした女性に共感する、同じ年齢層の人たちを目の当たりにして、私はそのような女性たちのことを考慮するようにしている」。

デザイナーブランド、トレーシー・リース(Tracy Reese)も年齢の壁をなくす動きに重要な役割を担っている。コミュニケーションマネージャーのアリーサ・ジョーンズ氏によると、ブランドは消費者基盤の理解を反映した取り組みを行っているということだ。「当社の顧客がさまざまな年齢層に広がっていることを認識しており、そのことを反映させる必要性を感じた。その年齢層の女性を代表する誰かが当社の服をまとっているのを顧客が目にすることで大きな違いが生まれてくる」。

ショーのランウェイやマーケティングキャンペーンに登場する50歳以上の女性モデルの割合は比較的小さいが、彼女たちの存在は話題になる。カルバン・クライン(Calvin Klein)は、73歳の女優ローレン・ハットン氏が同ブランドの最新下着キャンペーンに抜擢されることを4月末に発表したばかりだ。一方で、元モデルのタイラ・バンクス氏は、自身の人気リアリティー番組『アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル(America’s Next Top Model)』で参加者の年齢制限をなくすことを3月に発表している。また、モスクワを拠点にした新しいモデルエージェンシー、オルドゥシュカ(Oldushka)のように、45歳以上の顧客に限定して門戸を開くといった変化への明るい兆しを示す世界的な反響もある。

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