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ウナギ闇取引を摘発、親玉は「ウナギ漁の父」

6/20(火) 7:22配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

特別レポート:米国ウナギビジネスの闇(1)

 米国東海岸を舞台にしたものとしては、過去最大級の野生生物の違法取引。その“親玉”と目される人物を訪ねたのは、2017年5月上旬の雨の夜だった。

【写真】ウナギ闇取引で摘発されたビル・シェルドン氏

 場所は米メーン州エルズワースにある、「クォンセット・ハット」と呼ばれるかまぼこ形のプレハブ小屋。その男、ビル・シェルドン氏は、緑色の大きな机に向かい、回転いすに深く腰掛けていた。

 現地で「ウナギ漁の父」とも言われるシェルドン氏は昼も夜も、ここで漁師たちを待っている。漁師たちがやって来ると、くねくねと動くウナギの稚魚(シラスウナギと呼ばれる)で事務所のボウルはいっぱいになる。

1ポンドあたり1250ドル

 72歳のシェルドン氏は、めがねを掛け、青いシャツにジーンズ、防水のブーツにL.L.ビーンの野球帽という出で立ち。携帯電話に着信があると、騒々しい音が鳴る。頭上の看板には、「シラスウナギ買います」の文字。今日の市場価格は1ポンド(454グラム)あたり1250ドルだ。

 小さなテーブルにデジタル表示の量りが置かれ、シラスウナギが入ったボウルがその上に乗せられる。近くに置かれたガラス瓶の中で、香り付きキャンドルに火がともっている。シェルドン氏いわく「魚臭さを消すため」だそうだ。

 落ち着いた物腰のシェルドン氏は、重大な犯罪に加わっているようには見えない。しかし、3月30日、シェルドン氏とティモシー・ルイス氏は、野生生物の違法取引で起訴された。10週間にわたるメーン州のシラスウナギ漁期が始まって、わずか1週間後のことだった。

 2人は無罪を主張した。

 裁判資料によると、ルイス氏(46)は、米国東海岸の各地でシラスウナギの違法ロンダリングを共謀したことを含む2つの重罪に問われている。シェルドン氏はさらに深刻だ。メーン州にある自宅、エルズワースのモーテル、サウスカロライナ州の借家で「ケネベック・グラスイールズ」という会社を経営していた彼は、シラスウナギの密輸7件を共謀した罪に問われ、7つの州(メーン、ニュージャージー、デラウェア、バージニア、マサチューセッツ、ノースカロライナ、サウスカロライナ)の州法に違反したとされる。

 シェルドン氏は1件ごとに最高で罰金25万ドルと懲役5年の刑に処される可能性があるほか、使用された船、設備、自動車も没収される可能性がある。黒いピックアップトラック、2012年のフォードF450もその1つだ。ナンバープレートには「EELWGN」(イールワゴン)の文字が刻まれている(シェルドン氏は前もってトラックを売り払ったのだが、記念のプレートだけは手元に残していた)。予定では今年7月、シェルドン氏とルイス氏の審理が別々に行われる。

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