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豊洲移転問題、盛り土をやめた東京都が掘った墓穴

6/20(火) 18:22配信

週刊金曜日

 東京都は5月25日、築地市場(中央区)で行なった表層土壌の汚染調査で、111カ所のうち30カ所から環境基準を上回る5種類の有害物質が検出されたと発表した。

 最大で鉛が環境基準の4・3倍、ヒ素2・8倍、水銀1・8倍、フッ素1・5倍、六価クロム1・4倍だった。環境基準を超えた個所数は、ヒ素が20カ所であり、他は1~6カ所だった。今後は10メートルまでの土壌と地下水を調査し、11月までに発表する。

 今回の結果について、豊洲市場(江東区)の土壌汚染対策を検討している専門家会議の平田健正座長(放送大学和歌山学習センター所長)は、1カ所から検出された水銀について、「常温でも揮発する物質で、表層での検出は重く受け止めるべきだ」との見解を発表した。

 これに対し、日本環境学会の畑明郎元会長は、「築地で水銀が検出されたのは1カ所で、1・8倍と低い。豊洲は水銀の場合、9カ所で最大24倍です」と指摘する。豊洲では、土壌汚染対策前は土壌から最高4万3000倍のベンゼンが検出され、全4122カ所の調査カ所のうち土壌または地下水が環境基準を超えたのは1475カ所(約36%)。畑元会長は、「豊洲の汚染は高濃度で広域的だが築地は局所的で質・量ともに軽微。再整備の際に処理すればよい」と述べた。

 また、築地市場用地にはかつて米軍のクリーニング工場、ガソリンスタンドなどがあった。これについて畑元会長は、「それらの施設はベンゼンの汚染源となりえるが、ベンゼンは揮発性で、土壌中に残留しているものは少ないでしょう。一方、豊洲のベンゼンはガス工場操業由来のコールタールなどに含まれていたので土壌や地下水中に残留したのです」とコメントした。

【盛土なしでガス上昇】

 小池百合子都知事は、築地の汚染について「コンクリートやアスファルトで覆われており、土壌汚染対策法などの法令上の問題もない」と繰り返し、述べている。

 しかし、元大阪市長の橋下徹氏は、「コンクリートで土壌が覆われて地下水を利用しないのは豊洲も同じ。築地がその理由で安全だということは豊洲も安全なんですよね?」とブログに書いている。

 豊洲と築地の決定的な違いとして、各務裕史元岡山県農林水産総合センター農業研究所副所長は「地下空間」をあげる。

 平田座長は、今年1月14日の専門家会議で、豊洲市場は「環境基準の100倍のベンゼンを含む地下水があっても(建物の)地上に揮発する量は大気の環境基準以下なので問題ない」旨述べた。

 だが、各務氏は「(平田発言は)4・5メートルの盛土が前提で、盛土がないと地下空間でベンゼンは気化するので私の試算では環境基準の7万5000倍に濃縮されます」と指摘する。

 都は、日水コン(本社東京・野村喜一社長)に委託して盛土がない場合、コンクリートの劣化でひびや亀裂から地下空間のベンゼンが建物1階に侵入する場合のリスク評価を行なっていた(本誌4月7日号で報告)。その結果、10万人に1人の発がん確率に抑えるには、地下水を環境基準の11倍に抑える必要があるとしていた。

 だが、各務氏はこの日水コンの計算の前提は砕石を盛土とみなしてガスが拡散しにくい土壌の値を適用するなど現実離れしていると批判。現実的モデルで計算すると、地下水位がAP(荒川工事基準面)2・5メートルの場合、環境基準の10分の1未満の管理が必要だと判明した。

 だが、50センチでも盛土があれば地下からのガス上昇が強く抑制され、環境基準の42倍の地下水でも平田座長の評価法に従えば地上は安全だった。各務氏は「盛土の力を再認識しました」という。

 築地と豊洲の決定的な違いは、汚染を濃縮する地下空間なのだ。都は独断で盛土をやめ、自ら豊洲の安全性を損なう墓穴を掘った。

 各務氏、畑元会長らは安全性評価などについて平田座長に5月29日に公開質問状を出し、2週間以内の回答を求めている。

(永尾俊彦・ルポライター、6月9日号)

最終更新:6/20(火) 18:22
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