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不動産メインの父親の財産を浪費家の妹夫婦が狙う!

6/20(火) 20:10配信

サライ.jp

あらゆるパターンの相続トラブルを目撃してきた相続問題の専門家・曽根惠子さんに、これまであった相続トラブルの実例と、その解決策をご紹介していただきます。

親はもとより自分自身も“終活”を意識する年齢にさしかかっているサライ世代。後戻りできない骨肉の争いを避けるために、ぜひ読んでおいてください。

【認知症の父の不動産メインの財産を、浪費家の妹夫婦が狙う!】

今回の相談者は、松村雄二さんご夫婦(62歳・仮名)。神奈川県内の二世帯住宅で、奥様(60歳)と85歳のお父様と同居しています。お母様は10年前に亡くなりましたので、お父様の財産の相続人は、松村さんご自身と、妹さん(58歳)の2人になります。

「先日、認知症の父が入院し、いつ相続が発生してもおかしくないと思い、思い切って財産をリスト化しました。

父親は潔癖な性格で“お金のことと食べ物のことにこだわる奴は意地汚い”という考え方の持ち主。だから先送りしていたのですが、いよいよ危ないと思い、書類や通帳の内容を整理したんです」

松村さんご自身は、一部上場企業を退職した後、ベンチャー企業の人事アドバイザーになったり、読書会を主催したりと多忙な生活を送っており、さしあたってお金に困ることもないとか。

「娘2人を小学生から大学生まで私立に入れてしまったので、現在の貯金は2000万円程度。厚生年金の支給開始が64歳ですが、月収は20万円ほどあるので、貯金に手を付けずに済んでいます。

しかし先日、同級生と話をしていて、“親が死んで不動産を相続したら、相続税を2000万円支払った”という話を聞き、これはまずいと思いました」

お父様の財産は、松村さんの予想以上に多かった。不動産の評価額については国税庁のホームページで調べたそうです。

「父の財産は、現在住んでいる神奈川県内にある自宅の土地と建物、自宅の裏にあるマンションの土地と建物、預貯金で総額が約1億円ということがわかりました」

ちなみに相続税の対象となる財産は、土地、家屋、現金、預貯金、証券、生命保険、貸付金、特許権、ゴルフ会員権、書画、骨董など多岐にわたります。松村さんは、相続税を試算してみると、基礎控除額の4200万円を引いたあと、課税されるのは5800万円、その場合の相続税は770万円になることがわかり、かなり焦ったそうです。

しかし松村さんはお父様と同居しているので、『小規模宅地等の特例』(※注1)を活かせば、相続税は100万円程度に下がりますので、負担は軽くなります。

「問題は、自宅の裏にあるアパートなんです。

建物はすでに私が15年前に4000万円のローンを組んで建てており、父と一緒に完済しました。ですから父の死後も、土地は私名義にしたいのです。

また財産のバランスにも問題があります。不動産が85%、預金が15%なのですので、もし私が自宅とアパートを相続すると、妹には1500万円程度の預貯金だけになります」

お父様の介護、母親の看病は、松村さん夫婦が引き受けてきて、東京都内に住む妹夫婦はノータッチ。貢献度を考えても、松村さん夫婦に相続させたいとお父様も言っていたそう。

「でも父はすでに認知症で、遺言書が作成できません。妹と『遺産分割協議』(※注2)をして、財産の分け方を決めなければなりませんが、それが問題で……。

妹夫婦はハデな生活をしていて、消費者金融やクレジットカードで借金を繰り返しており、父がその肩代わりをしたことも何度もあります。母が生きていた頃は、お小遣いをせびりに来ていました。

私にとって都合がいいのは、妹が現金だけでよしとして譲ってくれること。しかし、“パパが死んだらこの家が私のものになるのね~”と平然と言うあの妹夫婦が納得するかどうか……」

*  *  *

さてこんな場合、いったいどのようにすればいいのでしょうか? 曽根さんの解説とアドバイスを聞いてみましょう。

「財産の大部分が不動産で分けにくいケースはどうすればいいか」

では、相続問題の専門家・曽根惠子さんに解説とアドバイスを伺いましょう。

「小規模宅地等の特例で、相続税は安くできますが、同居する松村さんが相続する内容の遺産分割が整わないといけません。妹さんに税額の違いを示して理解を得ておくようにお勧めします。

現実的に考えても、不動産は松村さんが相続し、妹さんは現金という分け方が合理的。ただし、それでは松村さんの取り分が多くなるため、父親の現金は妹さんが相続し、不足分は代償金を払うという方法があります。代償金の金額の決め方が難しいところですが、妹さんの希望も聞いて折り合いをつけていくようにします」

こんなケースに陥らないために、いったいどのように備えておけばいいのでしょうか?

「財産の大部分が不動産で分けにくいケースが、相続で揉めて、相続人全員が損をする代表的なパターン。これがこじれて、不動産を全て売却しお金を分けるというケースも少なくありません。深刻なトラブルを回避するには、お父様の生前から、よく妹さん夫婦と話し合うことをおすすめします。第三者を交えて冷静に話すといいですよ」

【今回の教訓】
「大損ケースは、話がこじれて調停に時間がかかり、きょうだい絶縁になった上に、せっかく親が遺した不動産を売り払って現金を分けるしかなくなる場合。そうならないために、早めの段階できょうだい間で話し合って、着地点を見つけておくべし」

※注1『小規模宅地等の特例』
配偶者や同居親族、自宅を所有しない子供が自宅を相続する場合や事業を継承する相続人がいる場合は、土地の評価減を受けられる制度。居住用宅地は330平方メートルまで80%減額、事業用宅地は400平方メートルまで80%減額できる。

※注2『遺産分割協議』
遺言書がない場合、相続人全員で遺産について、誰が何を相続するか決めるための話し合いを遺産分活協議という。

監修・曽根惠子
夢相続 代表。PHP研究所勤務後、不動産会社設立し、相続コーディネート業務を開始。1万3000件以上の相続相談に対処、感情面、経済面に即したオーダーメード相続を提案。『相続はふつうの家庭が一番もめる』(PHP研究所)、『相続に困ったら最初に読む本』(ダイヤモンド社)、『相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル』(幻冬舎MC)ほか著書多数。

取材・文/前川亜紀
イラスト/上田耀子

最終更新:6/20(火) 20:10
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