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【テレビの開拓者たち / 佐久間宣行】「ゴッドタン」佐久間Pが仕事をエンジョイできる理由

6/21(水) 6:00配信

ザテレビジョン

二度にわたって映画化もされた「キス我慢選手権」、数々のライブイベントを行い今年3月には東京・日本武道館でのライブを実現させた「芸人マジ歌選手権」といったヒット企画を数多く擁する深夜のお笑い番組「ゴッドタン」を筆頭に、子供向けバラエティー「ピラメキーノ」('09~'15年)、シチュエーションコメディー「ウレロ☆」シリーズ('11年ほか)、そして千鳥の冠番組「NEO決戦バラエティ キングちゃん」など、個性あふれる番組を次々と世に送り出している佐久間宣行プロデューサー。近年好調のテレビ東京の立役者の一人でもある佐久間Pに、これまで携わった番組について、また、お笑いやテレビ界への思いの丈を語ってもらった。

お笑いファンから絶大な支持を受ける「ゴッドタン」。DVDも好調なセールスを記録している

■ 「ナミダメ」では、「感動をありがとう」という風潮を逆手に取りました

──佐久間さんがテレビ東京に入社されて、最初に携わった番組は?

「一番初めは、アイドルが主演する一話完結のオムニバス形式の『国産ひな娘』('99年)という深夜ドラマのADですね。当時付いていたADが急に辞めてしまって、僕はドラマ志望ではなかったんですけど、『体がデカくて体力がありそう』という理由で声が掛かったんです(笑)」

──プロデューサー、演出家としてのデビュー作は「ナミダメ」('01~'01年)。入社3年目で番組のプロデュースを手掛けられたわけですね。

「運良く企画が通ったんですよ。当時は『感動をありがとう』みたいな番組が多くて、『“ありがとう”って何なんだよ』と思っていたので(笑)、その風潮を逆手に取って、泣くことをバラエティー化しようとしたのが、『ナミダメ』のそもそものきっかけです。

その中で好評だったのが、『ナミダメバトルロワイヤル』という企画で。タレントの女の子が思い思いの泣けるグッズを持ってきて、みんなで合宿するんです。で、毎日涙をスポイトで採取して、涙の量が少ない子から順番に帰されて…最後に残った人に100万円をあげるっていう内容だったんですけど」

──壮絶だった記憶があります(笑)。スタジオのメインMCは伊集院光さんで、オダギリ ジョーさん、オセロのお2人も出演されていましたね。

「僕は昔から伊集院さんの深夜ラジオのファンで、自分で番組を手掛けるときは伊集院さんに司会をお願いしたいなって、ずっと思ってたんです。それと、他の番組とはかぶらないキャスティングっていうのも意識しましたね」

──「ナミダメ」以降、印象に残っているお仕事は?

「『ナミダメ』は半年で終わっちゃったんですが、そのころに『TVチャンピオン』('92~'06年)のADもやっていて、ここでも割と早めの段階でディレクターを担当させてもらえるようになったんですね。そこで、自分で一からオリジナルの企画を立ち上げることもできて。当たった企画もあるし、大外ししたものもあります。当たったのは、例えば『3分料理人選手権』。3分間でカツ丼なんかを作る料理企画なんですけど、いわゆる時短テクニックみたいな情報も盛り込んだりして、けっこう好評だったんです。シリーズ化が決まったときはうれしかったですね。大外ししたのは、『ママチャリ王選手権』かな。競輪の選手からBMXの選手、新聞配達員まで、自転車に乗るのを生業にしている方たちを集めて、同じ型のママチャリでレースするっていう企画で、僕としてはすごく面白かったんですけど、『3分料理人』の3分の1くらいの数字(視聴率)でした(笑)。今にして思えば、ゴールデンタイムに向いているものと向いてないものの差なのかなと。でも『TVチャンピオン』は、自分の企画で70分くらいの長尺のロケVTRを作らせてもらえるので、すごく楽しかったです」

■ “飽きる”というのは、お笑い番組では一番あってはならないことなんです

──『TVチャンピオン』では、具体的にどんなことを学びましたか?

「やっぱり、出場してくださる“一般人”の面白さですね。そして、それを引き出すためには、僕ら作り手が謙虚でなければいけないんだ、ということ。僕だけじゃなく、『TVチャンピオン』に携わった人はみんな、そういう謙虚さは学んだんじゃないかな」

──確かにテレビ東京では、“一般人”にスポットを当てた番組が多いですよね。

「そうですね。『家、ついて行ってイイですか?』をやっている高橋弘樹(プロデューサー・演出)にしろ、『モヤさま(モヤモヤさまぁ~ず2)』の株木亘(総合演出)にしろ、今うちの局で第一線で活躍しているディレクター陣は、『TVチャンピオン』に携わったことのある人間が多いんですよ」

──では、佐久間さんのテレビマンとしてのターニングポイントは?

「たくさんあるんですが、(『ゴッドタン』レギュラーの)おぎやはぎと劇団ひとりに出会ったのは、やっぱり大きいですね。入社2、3年目に、『さまぁ~ずの若手で笑っちゃったよ!』('02年)という特番で、ネタ見せのオーディションをやったんですけど、急きょ僕も立ち会うことになって、そこで僕がいいなと思ったのが、おぎやはぎと劇団ひとりだったんです。そこから、『大人のコンソメ』('03~'04年)、『ゴッドタン』と、ずーっと何かしら一緒にやってるんですよね。こんな長い付き合いになるとは思ってなかった(笑)」

──3人とは馬が合うのでしょうか?

「合うのかなぁ…分かんないんだよなぁ(笑)。小木(博明)さんなんて、一回もご飯を食べに行ったことないですからね」

──(笑)。そんな盟友3人と共に、斬新な企画に挑戦している「ゴッドタン」ですが、毎週のように企画が変わるので、番組作りは大変なのでは?

「いや、本当に難しくて。10年以上やってますけど、いまだに勉強中というか(笑)。他の番組ではうまく行く方程式が、『ゴッドタン』には全く当てはまらないんですよ。事前にオチのパターンを3、4個考えるんだけど、どのオチにもたどり着かない。すごくムダな作り方をしてるんですが、でも、その方が面白いんだからしょうがない、という(笑)。また、おぎやはぎも劇団ひとりも、特に飽きやすい人たちだから、同じ企画はずっとやれないですしね。最初は面白いなと思った企画でも、2、3回やったら、その後1年くらい寝かせないとダメなんです。でも、それも仕方ないですよね。“飽きる”というのは、お笑い番組においては一番あってはならないことなので」

■ テレビは新しい何かを知る“きっかけ”のメディア

──最後に、テレビ界における今後の展望などについてお聞かせください。

「これからの映像文化は、テレビ放送とインターネット配信の両輪で発展していくんだろうなと思いますね。テレビ放送のライブ感、みんなで共有できるお祭り感みたいなものと、ネット配信が持つアーカイブ性や検索性、その両方をうまくミックスしながら進んでいくんだろうなと。

ただ、テレビにしかない良さっていうのは間違いなくありますよね。まず、バジェット(予算)と人材という面では、他のどのメディアと比べても、いまだにテレビがNo.1だと思います。それと、これは僕自身の実体験として感じることでもあるんですが、テレビって、新しい何かを知る“きっかけ”になるメディアだと思うんですね。僕も若いころ、フジテレビの深夜番組なんかを見て、演劇や音楽の魅力を知ることができたわけだから。その点ネットの場合は、自分で検索するか、おすすめが表示されるか、という形でしか情報を受け取れないから、ひとつの趣味を深めていくにはいいんだけど、未知のものと偶然出会うチャンスはなかなかないんじゃないかなって。だから、これからも、僕らテレビの作り手が頑張って、面白いものを探している人たちの“きっかけ”になるような番組を作っていかないと。やっぱり僕は、テレビの世界で頑張りたいです」

──ちなみにひとつお聞きしたいんですが、「ゴッドタン」という一番組から発展して、「キス我慢選手権」では映画を2本も監督されて、「芸人マジ歌選手権」では日本武道館ライブも演出されて…もうやり尽くした感はありませんか?

「それはないです(笑)。まだまだやりたいことはたくさんあるので。でも考えてみたら、“映画を撮ってみたい”、“武道館でライブをやってみたい”という、10代のころに思い描いていた夢が2つとも叶っちゃってるんですよね。武道館だけじゃなく、Zepp Tokyoも渋谷公会堂も中野サンプラザも、好きなライブハウスは全部巡りましたからね、ロックバンドでもないのに(笑)。それに『ウレロ』では、ずっとあこがれていた芝居の作・演出もできましたし。僕ぐらい、仕事をエンジョイしているテレビマンは珍しいんじゃないかな。そこは割と自信があります(笑)」

最終更新:6/21(水) 6:00
ザテレビジョン

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