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【テレビの開拓者たち / 西田二郎】未来のテレビに必要なのは“間違える勇気”

6/21(水) 6:00配信

ザテレビジョン

大胆なリニューアルを繰り返し、20年以上を経た現在も新鮮な面白さを届け続けているダウンタウンの代表番組のひとつ『ダウンタウンDX』('93年~日本テレビ系)をはじめ、伝説の“視聴率に挑戦”企画などで知られる「EXテレビ」('90~'94年日本テレビ系)や、母親を背負って思い出の地を巡る“おかんおんぶ”といったヒット企画を生み出した「ガリゲル」('10年~読売テレビほか)など、数多くの“これまでにないバラエティー番組”を世に送り出してきた西田二郎氏。現在は読売テレビの編成企画部長を務めながら、番組の企画・演出も手掛け、さらには同志と共に、一般社団法人「未来のテレビを考える会」を結成し、同会の代表理事も務めている。そんな西田氏に、番組や企画の誕生秘話や、今もなお新たな表現に挑戦し続ける思いを語ってもらった。

「Nj印」(LINE LIVE)や「西田二郎の無添加ですよ!」(’02~’07年読売テレビ)では、演出・プロデュースだけでなく司会もこなす西田二郎氏

■ 『ダウンタウンDX』が始まった当時は、2人が全国区のタレントへとステップアップする時期だった

――世のテレビ好きにとっては、西田さんと言えば、「ダウンタウンDX」の演出家というイメージが最も強いと思うんですけれども。

「そうですね、ディレクターとして番組の立ち上げから参加して、その後'14年まで、20年以上にわたって関わりましたから。途中からは、演出だけでなくチーフプロデューサーも兼務していました」

――第1回目のゲストは菅原文太さんで、そこから初期の数年は、岩下志麻さんや伊東四朗さんといった、ダウンタウンのお二人よりも年上の大物芸能人をゲストに迎えてトークを展開していましたね。

「『ダウンタウンDX』が始まった当時はちょうど、ダウンタウンが、関西の若者から支持を集める気鋭の芸人から、全国区のタレントへとステップアップする時期だったんですね。だから、松本(人志)さん、浜田(雅功)さんよりも上の世代の視聴者にも楽しんでもらえる内容を目指したんです。そこで敢えて、菅原文太さんをはじめ、大御所の方々にご登場いただきました。その意味では、開始から20年が経った今、当初狙っていた視聴者層とダウンタウンの年齢が一緒くらいになって、ちょうど良い感じになってきたんじゃないかなと思います」

――長い番組の歴史の中で、内容が何度も大きく変化しているのはなぜでしょうか?

「'90年代に他局で放送されていたダウンタウンの番組は、二人の笑いの才能を直接企画に落とし込むような内容が多かったんですね。二人だけのフリートークが中心だったり、コントだったり。それぞれの番組のスタッフの方々は、いわば、ダウンタウンの笑いを理解しているプロとして番組を作っていた。でも、僕にはそんな高度なスタッフワークはできるわけがない(笑)。なおかつ、放送時間はすぐに視聴率という数字が求められるプライムタイム。ですから次々と新企画を試して、ウケる方向性を探っていったんです。その結果、クイズ番組になったり、ゲーム番組になったり、そうやって、現在の集団トークという形にたどり着いたわけです」

■ ヒット企画は、追い込まれて追い込まれて、その末にやっと出てくる

――「ダウンタウンDX」で、特に思い入れの強い企画はありますか?

「『芸能人イメージレース』ですね。例えば『本気で悩みを相談するなら誰?』というテーマで、スタジオゲストを含む何人かをエントリーして、街のみなさんにアンケートを取って、誰が一番になるかを予想する。オッズを松本さんがつけて、まさに競馬のレースみたいに持ち点をベットするんです。そこで、街の人がアンケートに答えているところの見せ方として、それぞれの芸能人を出走馬に見立てて、票が入るごとにゴールに近づいていくっていう画をCGで作って。テレビ番組でそういうCGを使ったのは先駆けだったと思います」

――序盤に票が入らなかった方が、後半にすごい追い上げを見せたり、といった展開が熱かったです(笑)。

「『ダウンタウンDX』では、いろんな企画を試しましたけど、結局追い詰められてギリギリに飛び出した冒険的な思い付きがヒット企画につながるケースが多かったんですよ。そこはテレビの不思議なところだなと(笑)。

今は名物企画のひとつとなった『芸能人スターの私服』も、実を言うと、ひょんな思い付きからなんです。最初にアイデアを提案したときは、会議に出席してるスタッフ全員にポカーンとされるわ、ダウンタウンにはあきれられるわ、さんざんな反応で(笑)。ところが、いざ放送してみたら、大きな反響をいただいたんです。他にも、『視聴者は見た!』(街中での芸能人の目撃情報を視聴者から募る人気企画)なんか、今でも続くコーナーになるなんて思ってもみませんでした」

――そういったヒット企画を発想する秘訣はどこから?

「いやいや、ヒット企画なんてすぐには出てこないですよ。今まで誰もやっていないような企画がポンポン思いついたらいいんですけどね(笑)。さっきも言った通り、追い込まれて追い込まれて、その末にやっと出てくる、というのが実際のところで。そのあたりの感覚は、立ち上げからADとして参加した『EXテレビ』で培われたような気がします。

『EXテレビ』というのは、一世を風靡した『11PM』('65~'90年日本テレビ系)の後継番組で、始まるときに、企画会議に出てる全員が『斬新たな企画で挑戦を!』と、関西発信で力入りまくりでした。そのなかで、『視聴率』というテーマが出てきて。ただ、テーマは決まったものの、番組のオチになる企画案が全く出てこない(笑)。当時、僕は駆け出しのADですから、コピー取りとかお茶くみくらいしかできることがなかったんですけど、会議がとうとう行き詰まったなっていうときに、机の上に散らばってる視聴率表が偶然目に入ってきて。よく見たら、『EXテレビ』が放送されてる時間、NHK教育テレビ(現・NHK Eテレ)は視聴率がゼロになってるんですよ。そこで、『視聴者に呼び掛けて、NHKの教育テレビに1分間だけチャンネルを合わせてもらったらどうですか?』って、思い付いたことをポソッと言ってみたんです」

――今でも語り種になっている伝説の“視聴率に挑戦”企画ですね!

「言った瞬間に、先輩のスタッフが全員『それや!』って飛びついて、すぐに実現しちゃいました(笑)。生放送の中で『視聴率調査機のある2600世帯のみなさん、今から1分間だけNHK教育テレビにチャンネルを変えてください』と呼びかけて、結果、0%だった視聴率がその時間だけ数%跳ね上がったんですよ。これがものすごい評判になって、自分の中でも、テレビのあり方をも問う型破りなことができたなという手応えもありました」

■ 何よりも作り手の“熱”を大切にしているんです

――'98年からは、番組制作会社「ワイズビジョン」の設立メンバーとして、「わらいのじかん」('99~'00年テレビ朝日系)、「松本紳助」('00~'06年日本テレビ系/'03年より「松紳」に改題)など、読売テレビ以外の局の番組も数多く手掛けられています。

「『ダウンタウンDX』を始めるときに、僕は『EXテレビ』の思想を受け継ぎたいと思ったんですね。だけど『DX』以降に新しい番組を始めるときは、『EX』と『DX』、この二つの番組とは違った展開で自分の中にあるものを紡ぎ出したいと。そのためには、絶えず視点や発想を変えて、違う場所を掘っていったほうが可能性があるんじゃないかと思うんです」

――現在、読売テレビの編成企画部長であり、「未来のテレビを考える会」の代表理事でもある西田さんですが、今現在のテレビメディア、そしてそれを取り巻く状況を、どうご覧になっていますか?

「『テレビはもはや娯楽の王様ではない』とか、いろいろと厳しい声もありますけど、個々の番組のクオリティは、昔と比べて間違いなく上がっていると思うんですよね。ただ逆に、うまく作りすぎていて、それまでの常識をぶち破るような魅力に欠けている気がするんです。残念ながら、“熱”が感じられる番組が少ない。そもそも『EXテレビ』の視聴率企画にしたって、深夜番組とはいえ、要は『他局を見てください』って呼び掛けてるわけで、常識に照らして考えれば、完全にご法度ですからね(笑)。もしかすると今のテレビマンは、ある種“間違える勇気”を持つことも必要なんじゃないかな。もっと言うと、世の中にも、もう少し間違いを許す余裕が生まれるといいなと思うんだけど(笑)。

かく言う僕自身、間違いを恐れず、いろいろと試行錯誤しているところで。例えば、今年に入って『愛するバックショット』('17年3月、読売テレビ)という番組の企画・演出を手掛けたんですが、これは海外に番組のフォーマットを販売することを前提にしているんです。テレビの新たなビジネスモデルを構築したいという思いから生まれたプロジェクトです」

――親子や夫婦、友人といった“愛する人”を、後ろ姿を見ただけで当てる、というクイズバラエティーですね。

「普遍的なテーマなので、どの国でも楽しんでいただけるんじゃないかと思うんですよね。ちなみに、番組内で流れる音楽はすべて僕が“Nj”という名義で作曲していて、京都フィルのメンバーが生で演奏してるんですよ。個人的にも新たな挑戦ができましたね」

――他にも、LINE LIVEで『Nj印』と題した生配信のシリーズも手掛けられています。

「第1弾は、『ダウンタウンDX』の放送中に、元チーフプロデューサーの僕がタレントさんたちと一緒に番組の裏話を実況する、という掟破りに挑戦しました(笑)。LINEの配信とはいえ、言ってみれば“裏番組”を作っているわけで、『元スタッフが何してんねん』って話なんですけど、会社(読売テレビ)は『どんどんやれ』と言ってくれて。ホンマにありがたいなと(笑)。

ともあれ、自分が手掛けている企画は、『破綻してる』とか『掟破り』とか、たとえ批判されようとも、われわれ作り手の“熱”を何よりも大切にしているつもりなんです。だから、若いテレビマンのみんなにも、間違いを恐れず“熱”を注ぎ込んだ番組を作っていってほしいですね。むしろ、『どんどん間違えようぜ』と言いたいです(笑)」

最終更新:6/21(水) 6:00
ザテレビジョン

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