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安藤梢、7年半ぶり日本復帰の理由。愛する浦和で「優勝するため」のチーム改革

6/21(水) 10:20配信

フットボールチャンネル

 なでしこジャパンでW杯制覇など輝かしい功績を残し、ヨーロッパの頂点にも立った安藤梢が7年半ぶりに日本復帰を決断した。チーム合流から3週間、浦和レッズレディースには早くも変化が現れ始めている。愛する古巣で安藤が成し遂げたいこと、そして帰国を決断した理由とはどんなものだったのだろうか。(取材・文:舩木渉)

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●「帰ってきたなという感じ」。安藤梢が浦和に立つ

 試合を終えたインタビューの第一声は「ただいま!」だった。

「(試合前は)わくわくしていました。でも入ったら自然な感じというか、懐かしいというか、すぐに馴染むような感じでした。やっぱり長くここでプレーしていたので、帰ってきたなという感じはします」

 前身のさいたまレイナス時代から8シーズンにわたってプレーした古巣・浦和レッズレディースに、安藤梢が帰ってきた。そして17日、なでしこリーグカップ1部Bグループの第4節マイナビベガルタ仙台レディース戦で、約7年半ぶりに浦和駒場スタジアムのピッチに立った。

 安藤は浦和Lからドイツ女子1部のデュイスブルクへ移籍し、1.FFCフランクフルト時代には女子チャンピオンズリーグ優勝を経験。今季まではSGSエッセンに所属していた。なでしこジャパンでも2011年のW杯優勝などに貢献し、数々の功績を残してきた偉大な選手である。

 先月12日に6月からの浦和L復帰が発表され、仙台L戦はチームに合流後2試合目の公式戦だった。加入からまだ勝利はない。だが、ヨーロッパでのチャレンジを終えて日本に戻ってきた裏には確固たる決意があった。

「優勝するために帰ってきたので、もっと勝ちにこだわって、強いチームにしたいと思います。優勝するためにやらなきゃいけないこと、自分個人としてもですし、チームに経験とかも伝えていかなければいけないこともあるんですけど、それはやりがいがあるなと思ってやっています」

 浦和Lが最後にリーグ優勝したのは2014年のこと。それ以来2015年は6位、2016年は8位と低迷していた。今季もリーグ戦は10試合を終えて5位と苦しんでいる。主力選手の入れ替わりもあり、現状から「優勝する」のは並大抵のことではない。

●安藤が始めた「戦う」チームへの改革

 安藤はチームを変革しようとしている。

「沖縄の時(11日のリーグ杯第3節INAC神戸戦)はみんな戦えていないとすごく感じたので、ハーフタイムとか今週の練習とかでも結構みんなに強く言いました。戦う姿勢について言ってきて、1週間準備してきました」

 若い選手が多い浦和Lにとって、安藤の加入による影響は大きかったようだ。石原孝尚監督も「チームの中で戦うところであったり、結果のところであったり、練習から本当にこだわって選手たちに伝えてくれているので、そういうところは少しずつ出てきている」と手応えを感じ始めている。

 他の選手たちも同様に、改めて「戦う」ことの重要性に気づいたようだ。本職はセントラルMFながら最近は右サイドバックで起用されている栗島朱里は、守備面での変化を感じている。

「練習でも試合でも、守備でボールを奪い切れるのに奪い切れていないところがあった。緩くいっているわけではないけど、もっと体を張れるシーンもあるのにそこで奪い切っていないから、逆サイドに振られてみんなで一生懸命戻るみたいな。そういうのは『もどかしい』と言ってくれました。自分たちはそれが当たり前になってしまっていたから、球際は徐々に変わってきている。それはアンさん(安藤)の影響ですね」

 安藤自身「今日(仙台L戦)は沖縄の時よりも(戦うことが)できたかなと思う」と、ある程度チーム全体の向上を実感しているようだ。しかし「もう一歩、奪い切るところ、体を張ってはいるんですけど、最後のところで奪い切ることができていくと、より攻撃的になれると思います」と要求するレベルはまだ先にある。

 浦和Lには技術の高い選手が揃っていて、ボール支配率を高めて攻める形はできている。その一方で全体のリズムが単調になりすぎる傾向があり、緩慢さを突かれて失点したり、悪くなった流れを押し返すことができなかったりする試合が多かった。

●欠けていた「真のリーダー」。安藤が最後のピースか

 相手と「戦う」姿勢をより自然にピッチ上で表現できるようになれば、積年の課題を解決するための第一歩になる。安藤の加入とそれによる影響は、いまのところポジティブな反応を示していると言っていいだろう。

 10番を背負って2014年のリーグ優勝も経験したFW吉良知夏は「安藤さんがやっているから(自分も)やらなきゃいけない」と言葉に力を込める。これまでの浦和Lには明確なリーダーがいなかった。

 2012年シーズンを最後に中心選手を含む6人が一度に退団し、それに伴うチームの急激な若返りの影響もあって2013年は残留争いを強いられた。2014年は若い力と強力なカウンターを武器に序盤からの勢いを維持して一気に勝ちを積み重ねたが、それ以降は再び低迷する。

 20代中盤の選手たちは真のリーダーになれず、かつて先輩たちに引っ張られていた頃の感覚から抜け切れていなかったのかもしれない。「安藤さんみたいに気合いを入れてくれる存在はいなかったというか、上の人が言ってくれるからやらなきゃというか、存在は大きいですね」と吉良は語る。安藤は浦和Lに欠けていた最後のピースだった。

 それでも勝ちを拾えない現状に、安藤は満足していない。「もっとできる選手たちだと思うし、優勝を目指しているので、まだ強い、勝ち切るチームまではいけていないと思う。球際のところもですし、攻撃の迫力も足りないと思っているので、みんなでやっていきたい」と、チームメイトたちにさらなる奮起を求める。

●「優勝するために帰ってきた。もっと勝ちにこだわる」

 もちろん要求するだけではない。安藤は自分が求めるものを表現しようとする選手たち以上のプレーを、自分自身で練習中から見せていかなければならないと肝に銘じている。

「1個1個のプレーですけど、目の前の選手に負けているようじゃダメだと思う。そこで勝ち切ったり、戦うところを出しつつ、やっぱり今日の試合(仙台L戦)だったら自分が得点していたら勝てていたので、自分もしっかりやっていきたい」

 日本に復帰して「自分の中ではプレッシャーとかはドイツでやって来たときの方が強いので、余裕はある」とは言うものの、合流から日が浅く、まだ周りと呼吸が合わない場面も見られる。「チームの中で自分を出せていない」のがもどかしいという。

 安藤自身が前線で誰よりも戦う姿勢を見せてボールを奪うきっかけを作っても、リスクを恐れて奪ったボールをすぐ後ろに下げてしまうことも多い。シュートを打つ回数もまだ理想には程遠い。改善すべき課題は山積状態だ。

「自分が(周りに)合わせる部分もあるけど、自分としては要求して、浦和にポゼッションにプラスして前への迫力みたいなものを出していきたいなと思う。今日(駒場で)試合をしてみて、たくさんサポーターが熱い応援をしてくれている。優勝するために帰ってきたので、もっと勝ちにこだわって、強いチームにしたいと思います」

 ヨーロッパで数々の修羅場をくぐり抜けてきたベテランFWは、メディアの前で的確かつ鋭くチームの課題を指摘していく。そのうえでピッチに立てば誰よりも勝ちにこだわる姿勢を見せ、若いチームメイトたちを引っ張っている。

 来月9日に35歳の誕生日を迎える安藤にとって、浦和Lでの挑戦はキャリアの集大成となるかもしれない。故に並々ならぬ決意と覚悟を胸に日本復帰を決断した。これからは愛するチームとともに「優勝」という大きな目標に向かって持てる力のすべてを注いでいく。

(取材・文:舩木渉)

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