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G大阪移籍のファン・ウィジョ、J挑戦までの軌跡。地元ファンに愛された特別な存在

6/21(水) 12:11配信

フットボールチャンネル

 ガンバ大阪は20日、韓国代表FWファン・ウィジョの獲得を発表した。韓国2部にあたるKリーグ・チャレンジでプレーしていた選手はなぜJリーグ移籍を選んだのか。城南FC生え抜きの選手として地元で愛された特別な存在が歩んできた軌跡を追った。(取材・文:キム・ドンヒョン【城南】)

2017年J1在籍選手、通算得点トップ10。1位と2位は同一クラブのFWがランクイン

●城南FCのエース、そして地元の人気者がJリーグ移籍

 J1で現在暫定3位につけるガンバ大阪が、韓国2部にあたるKリーグ・チャレンジの城南FCから韓国人ストライカー獲得に成功した。

 元韓国代表という肩書は華々しい。2015シーズンには韓国1部にあたるKリーグ・クラシックで21ゴール3アシストを記録した実績もある。今年25歳という若さも魅力的だ。

 しかし今季の成績だけ見れば、G大阪で要求されるレベルにあるのか疑問が残る。城南FCは昨季Kリーグ・クラシックで11位に低迷し2部降格。彼自身、今季はKリーグ・チャレンジで4ゴールと決して目立つ成績ではない。

 到底J1で上位争いをするチームにふさわしいストライカーとは言えない数字だ。一部のガンバファンからは“第2のイ・スンヨル”(編注:イ・スンヨルは2012年に鳴り物入りでガンバ大阪に加入した元韓国代表FW。FCソウルでの出番減にともない移籍前年から絶不調に陥っていてJリーグでは8試合無得点に終わり、加入から半年で放出された)になるのではないか、と心配する声も聞こえる。

 だが、この男はJリーグで羽ばたけるだけのポテンシャルを秘めている。その名は、ファン・ウィジョ。今季2部リーグで4ゴールにとどまっていたのにはそれなりの理由があった。

 城南FC一筋の男には紆余曲折があった。

 ファン・ウィジョはジュニアユース時代から城南FCに在籍してきた生え抜きである。筆者の地元である城南市が彼の出身地だ。卒業したプンセン中学校やプンセン高校も城南市が誇るサッカー名門校で、城南FCと提携しているユースクラブでもある。

 彼は2011シーズン、城南FCからドラフトで優先指名を受けたうえで、出場機会を確保するため延世大学に進学。2013シーズン、延世大学を中退し、古巣である城南FCへ帰ってきた。大学時代を除くと、サッカー人生のすべてを城南FCに捧げてきた選手だけにファンの期待もかつてないほどだった。

●運命に翻弄されたストライカー、激動の4年間

 だが、あいにくファン・ウィジョがプロ選手として城南FCに帰ってきた時、クラブは激変期の真っ只中だった。2013年まで経営に携わっていた親会社である一和がサッカー事業から撤退し、城南一和天馬の名前で知られていたクラブは、市民クラブの「城南FC」として再編された。予算は半分に激減し、スター選手は次々とチームを去った。当然、ユース出身の彼にかかる期待は当然大きかった。

 ファン・ウィジョはその期待にふさわしい大型新人だった。かつてセレッソ大阪でJリーグ得点王に輝いたファン・ソンホン(現FCソウル監督)に似たスタイル、正確さやパワーを兼ね備えたキック、守備での積極的な姿勢はまさしく新人離れしていた。そして2013シーズン、Kリーグデビュー戦となった水原三星戦でいきなり2ゴールを叩き込み、一躍国内にその名を轟かせた。

 彼の才能が本格開花したのは2015シーズンだった。爆発的な決定力でリーグ戦だけで15ゴールを奪った。城南FCの本拠地タンチョンスタジアムはファン・ウィジョの名前が入ったユニフォームで埋まっていた。ファンの人気者となり、同時にA代表まで上り詰めた最高のシーズンだった。

 しかし2016年、思わぬアクシデントが起こる。プライベートでの浮気が報道されたのだ。あいにくこれを機に調子も落ちていった。韓国代表での悲惨なパフォーマンスもファンから批判を浴びるのに充分であった。

 あの浮気報道で不当な批判も受けた。調子を落としたファン・ウィジョは、彼を中心に作った攻撃のシステムさえも狂わせた。結局シーズンが終わってみれば城南FCは2部へ降格していた。クラブ創設以来初の降格だった。

●自ら望んだ変化。エースとしての覚悟

 するとガンバがファン・ウィジョを狙い始めた。今冬、一度目のオファーが届く。しかしクラブは彼を何とか慰留させた。彼自身に降格の責任があったことは否めない。そしてチームを再び1部の舞台に昇格させたい思いも強かった。

 その責任は彼のプレースタイルさえも変化させた。184cmで特に大柄ではないが、競り合いに強かったため、これまではポストプレーで相手の守備を引きつけて味方のためにスペースを作るプレーを得意としてきた。パワーとスピードを併せ持つファン・ウィジョだからこそできたスタイルだった。

 しかし今季はサイドでのプレーもこなすようになった。かつてベガルタ仙台や横浜FCにも在籍したFWパク・ソンホが加入したからだ。34歳の長身ストライカーを活かすにはファン・ウィジョのポジション変更は避けられなかった。

 そんな状況で、ファン・ウィジョは自らサイドでのプレーを志願した。「チームを活かすためにはそれがベスト」というのが彼の考えだった。

 結局は今季、本来の1トップではなくサイドで戦ってきた。より体力の消耗が激しいポジションで守備にもこれまで以上に積極的な姿勢を見せるようになった。ゴール数こそ少なくなったが、献身的な守備は光っていた。競り合いの強さは相変わらずで、どんな相手にも恐れず向かっていった。城南FCのパク・ギョンフン監督も「とにかく献身的だった。今となっては守備もできるようになった」とエースの変化を称えていた。

 ファン・ウィジョと共に城南FCもどんどん調子を上げていった。一時期最下位まで沈んだが、その後地道に勝ちを積み重ねて5位まで這い上がった。しかも5月7日の水原FC戦から6月12日の牙山ムグンファFC戦まで6試合連続無失点だった。

●拒めなかったガンバからのオファー。ファン・ウィジョが城南FCに残したもの

 迎えた18日、ファン・ウィジョは釜山アイパークを相手に2ゴールを奪い、城南FCを2-1の勝利に導いた。チームは1失点したものの、7試合無敗は継続している。そして翌々日の20日、ガンバから届いた二度目のオファーを拒めず、クラブを去ることが決まった。

 いずれ去ることになるとは知っていたが、やはり別れは辛い。だが、彼は城南FCファンに最後まで経敬意を示した。契約書に「Kリーグ復帰の場合は必ず城南FC」という条項を入れたという報道は地元ファンとしてうれしかった。感動さえも覚えた。多くの城南ファンもそうであろう。

 城南FCのユース出身では初の韓国代表であるファン・ウィジョはファンから愛された、本当に特別な存在だった。筆者も彼を愛していた1人だった。ジャーナリストである以前に、彼の熱烈なファンだったことを記しておく。

 今でもファン・ウィジョがゴールを量産していた2015シーズンが忘れられない。試合後の子どもたちへのファンサービスを怠ることは決してなかった。名前をコールされて照れくさい表情を浮かべる彼が今でも記憶に刻まれている。

 今回の移籍は両チームにとって非常にポジティブなものになるだろう。まず城南FCには莫大な利益が生まれた。市民クラブである城南FCの年間予算は10億円弱。ユースから育てた選手の売却で受け取る1億円以上の移籍金は決して少なくない金額だ。ガンバにとっても運動量豊富で、決定力やパワーを兼ね備えた万能FWは大きな力になるはずだ。

 だからこそガンバファンにはファン・ウィジョを温かく迎えてもらいたい。彼は必ず結果を残す。そして献身性と決定力がチームを助ける日がくると信じている。1人の城南のサポーターとして、彼のことをこれからも応援し続けたい。

(取材・文:キム・ドンヒョン【城南】)

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