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タクトから生まれる魂の交歓、至福の音がもたらす奇跡の瞬間 佐渡 裕(指揮者)

6/21(水) 11:31配信

Wedge

国内外で年間100回近くの公演をこなす、日本を代表するマエストロ。一期一会のステージに日々向き合いながら、クラシックの裾野を広げ音楽の喜びを伝える活動にも情熱を注ぐ

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 オーストリア・ウィーン郊外で毎年夏に開かれるグラフェネック音楽祭は、古城と周辺の広大な庭園でゆったりと時を過ごし、食を楽しみ、感覚を解き放って音楽を堪能できる人気のイベント。昨年の8月、音楽祭の開幕を飾ったのは、100年以上の歴史をもつオーストリアの名門トーンキュンストラー管弦楽団によるベートーベンの交響曲第九番だった。

 指揮は2015年9月にこのオーケストラの音楽監督に就任した佐渡裕。開演直前には、2018年まで3年間の佐渡との契約を22年まで延長するという、楽団との調印式が行われていた。就任から1年もたたずにさらに4年間の任期延長を求めるのは異例のこと。オーケストラ側の、佐渡とともに活動していきたいという期待と信頼がうかがえる。

 自らが率いるオーケストラとの世界各国へのツアー、定期公演、他のオーケストラへの客演など、ウィーンを拠点に世界各地で活動している佐渡は、この日東京オペラシティ リサイタルホールにいた。翌日から2日間の東京フィルハーモニー交響楽団との公演の最終リハーサル。

 楽譜に何か書き留めたり、ざわついていた部屋の空気が、いきなりピタッと鎮まった。ふと見ると、トレーナー姿の佐渡が前に立っていた。小声で指示を出すと、間髪をいれずに演奏が始まる。瞬く間に佐渡を中心にした放射線状の糸が張り巡らされていく感じに、指揮者の求心力とはこういうものなのか、はたまた佐渡のオーラなのかと驚く。

 指揮者は、作品に込めた思いを音で表現するために、時には30種類もの楽器、100人にも及ぶ演奏者を自分の求める音の方向に導いていく。リハーサルは、全員と思いを共有するための貴重な時間。1年の半分以上を異国で活動する佐渡にとっては、日本で日本のオーケストラを指揮する機会のほうが少ない。

 「確かに日本語で練習できるのは楽ですが、それはほんのわずかなことなんですよね。自分が求める音をどうやって引き出すかが大事で、その道具として言葉は必要だけれど、要は自分の中にこういう音がほしいという深い思いがなければ伝わらないし、オーケストラにその思いを受け止めてくれるアンテナがなければどうしようもない。発信と受信のチューニングが合うことが大事なんです」

 言葉の前に、両者の間には楽譜というバイブルのようなものが存在する。楽譜をどう読み込んでいくか。「メゾフォルテ」と楽譜に記されていても、何デシベルの音を出せとは書かれていない。「少し強く」の少しとはどのくらいなのか。微妙な感覚でしかない。指揮者の佐渡は、その感覚を引き出すために演奏者の前に立つ。時には微動だにせず、時には指揮棒を置き、時には指揮台から転げ落ちそうになるほど激しく全身を使って、自分の思いを表現する。

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最終更新:6/21(水) 11:31
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