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「経済学」が世界を滅ぼす!――限界に達した資本主義の行方

6/21(水) 9:00配信

HARBOR BUSINESS Online

「経済成長という幻想こそ諸悪の根源」と警告。『経済学が世界を殺す』を上梓し、「脱成長」を掲げる資源・環境ジャーナリストの主張が話題だ。経済成長が限界に達した今だからこそ、これからは資源や環境に配慮した「持続可能な発展」を目指す企業が買いになる!?

●資源・環境ジャーナリスト

谷口正次氏

前回のインタビューでは、資源と環境への依存で成り立つ成長は限界を迎えており、このままの産業構造で経済成長を続けていると、社会的な損失も深刻になっていくと語った谷口正次氏。

◆川下の付加価値ばかりが重視されるものづくり

――「社会的な損失」とは、たとえばどういったことですか?

谷口:現代は高度な情報化社会のせいで、技術の進歩と市場競争のサイクルが早すぎる。A社が新製品を開発しても、それによる利益を十分に享受する前に、すぐB社が追従して競争が激化し、価格が下がってしまうんです。最初に新商品を出した者の利益は小さくなり、その結果、寿命の短い商品が大量の廃棄物として溢れ、希少な資源の無駄遣いを促進することになります。

――職場レベルでのもっと身近な悪影響もありますか?

谷口:国際競争力で勝つためには、労働生産性を上げなければいけないと言われますよね。しかし、労働の質を上げずに生産性だけ上げようとした結果、いわゆるブラック労働が蔓延してうつ病や自殺が増えているでしょう。うつ病・自殺による社会的損失は4兆3000億円という試算もあります。そもそも、人類は1万年前まで熱帯雨林で狩猟・採集をして暮らしていました。その状態がもっともリスクフリー、ストレスフリーであるように脳が初期設定されているんです。その後、環境が変わるたびになんとか適応してきましたが、現代の高度に文明化された経済・社会は、人類にとってもはや「適応限界」。このままでは「自己解体」していくのではないでしょうか。

――人類の文明が破綻してしまうと? そんな最悪のプランを回避するには、どうすればいいのでしょうか。

谷口:まずは、経済成長すればいい、という価値観を変えなければダメでしょうね。ものづくりには、資源を採掘して、精錬して素材にして、部品にして製品を組み立て、それが流通業者を通じて消費者の手に渡るというフローがあります。しかし、その川上と川下があまりにも断絶していて、消費者は川上のことを知らされていません。川下の付加価値ばかりが重視されて、川上である天然資源の価値評価額が不当に低くされているんです。

――これを是正するには、国レベルで政策を変える必要がありそうですが。

谷口:その通り。たとえば、価値の高い天然資源を消耗し、環境を破壊するような製品をつくるときには、「資源消費税」を徴収すればいい。その代わり、労働の対価である所得税や、社会保険料の企業負担分は大幅に減税する。そういうインセンティブを作ってやれば、みんなが競って資源を大切に使うようになるでしょう。

◆再生可能エネルギーの普及を阻む既得権益

――企業それぞれに求められることは何かありますか?

谷口:トップである経営者が、川上の資源の価値をきちんと認識していることじゃないですか。資源の採掘が環境や将来世代に与える影響を考え、配慮や対策をするのが企業の社会的責任だと思うんです。’70年代までは、資源や環境に対する哲学や思想をしっかり持っている「資源派経済人」と呼ばれた経営者がまだかなりいたんですが、’85年のプラザ合意以降、急激に円高になって資源に対する価値認識がひどくなった。目先の四半期ごとの業績ばかりを気にするサラリーマン社長ばかりになったこともよくない。

――最近では、企業の社会的責任や社会貢献といったことがだいぶ重要視されてきているようにも見えますが。

谷口:ポーズにすぎないところがほとんどでしょう。大企業は今、どこもCSR推進部なんてものを作り、わざわざコンサルを雇って勉強会を開いたりしていますが、そんなことしなくても、もともと日本の長寿ファミリー企業は、近江商人の「三方一両得」のように持続可能な経営哲学や経営理念をちゃんと持っていました。日本には、100年以上続く企業が2万5300社、1000年以上続く企業も21社ある。日本の雇用の77%を占めるこうしたファミリービジネスの労働の質に立ち返って学ぶべきですよ。

――たとえば、バイオ燃料など循環型の再生可能エネルギーの開発・研究をしている企業は、今後伸びていく成長産業になるのではないですか?

谷口:再生可能エネルギーの分野はどんどん伸びていくでしょうし、欧米や韓国・中国ではすでに洋上風力発電や潮流・波力発電などが実用段階として導入されています。ただ、日本だけが周回遅れなんです。なぜなら、電力会社という「レント・シーカー(利権集団)」が、政府や経済産業省の官僚と組んで、原子力発電による既得権益を必死で守ろうとしているからですよ。風力や波力、太陽光、バイオマスによる発電は不安定だから主力にならない、と今でも言い続けているんです。

――技術的には十分できるはずなのに実用化できないと思わされている、と。

谷口:それに、メタン・ハイドレートやレアメタルなどの海洋資源の開発をもっと進めれば、途上国の地下資源を採掘して環境破壊せずに済むし、家電や電子機器の基盤に使われている金銀銅、レアメタル、レアアースを回収して再利用するシステムを構築すれば、輸入量を大幅に減らせる。できることはたくさんあるはずなんです。

――今後、「持続可能な発展」という視点で見たときに、成長や評価が期待される分野や企業はありますか?

谷口:ひとつ、いい線いってる企業を挙げるなら、積水化学グループですかね。ここは、環境貢献製品を売上の100%にすることを最終目標にしていて、すでに50%を達成している。CSR推進部まかせにせず、社長をはじめ幹部陣がちゃんと勉強していて、トップダウンで取り組んでいるんです。長期的な目で見れば、これからは経済・環境・社会という3つの視点をトータルで考えている企業が、真の成長をしていくと思いますよ。

取材・文/福田フクスケ 撮影/武田敏将

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/21(水) 12:49
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