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柴崎岳、現実味帯びてきた1部昇格。大一番で決定的な活躍、もはや完全なキープレーヤーに

6/22(木) 12:57配信

フットボールチャンネル

 21日、スペイン・リーガエスパニョーラ1部昇格を争うプレーオフ決勝が開催され、柴崎岳が所属するテネリフェはヘタフェとの試合に臨んだ。ホーム&アウェイ形式で決着をつけるこの舞台。テネリフェホームの初戦では準決勝にひきつづき日本人MFが躍動した。(文:舩木渉)

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●準決勝につづき、決定的な活躍を披露

 今季最後のホームゲームはとにかく厳しい条件が揃っていた。

 柴崎岳が所属するテネリフェは現地時間21日、スペイン2部の1部昇格プレーオフ決勝1stレグに臨んだ。対戦相手はレギュラーシーズンを3位で終えたヘタフェである。

 120分間の激闘だったプレーオフ準決勝2ndレグから中2日、移動こそなかったものの、前の試合から中3日のヘタフェに対し休養に充てられる時間は少なかった。相手に長距離移動があるとはいえ、120分間プレーした3日後に迎える大一番の過酷さは想像に難くない。

 昨季まで1部を戦い、1年での昇格を目指すヘタフェには、当然1部での経験豊富な選手が揃っている。ベティス時代に1部で2年連続20得点を記録したこともある絶対エースのFWホルヘ・モリーナを筆頭に、スタメンのほとんどが国内でも名の通った選手たちだった。

 元バレンシアのGKビセンテ・グアイタをはじめ、元アルゼンチン代表DFカタ・ディアス、5季連続30試合以上出場のダミアン・スアレス、7季連続30試合以上出場のフランシスコ・モリネロ、昨季の厳しさを知るファン・カラで形成する守備陣は2部でも屈指の陣容だ。

 そんな相手に対し、テネリフェは3日前のプレーオフ準決勝2ndレグからスタメンを1人も入れ替えず真っ向勝負を挑んだ。満員のホームスタジアムの声援を受け、序盤から攻勢に出る。

 そして左サイドMFとして先発出場した柴崎岳は、またしてもチームを勝利に導く決定的な活躍を披露した。

 22分に獲得したコーナーキックの場面。柴崎が蹴ったボールは大きな弧を描いてペナルティエリア内へ。最後は前線まで上がっていたDFホルヘ・サエンスがプロ初ゴールとなる豪快なヘディングシュートをゴールネットに突き刺した。

 完璧なゴールにスタジアムが爆発する。前の試合でゴールを決めた際、ガッツポーズのみで感情を表に出さなかった柴崎でさえも、弾けるような笑顔でチームメイトたちと抱き合った。結局はこの1点が決勝点となり、テネリフェはホームでの重要な1stレグでヘタフェにアウェイゴールを与えず勝利をつかみ取った。

●サイド起用で引き出された柴崎の長所

 この日のテネリフェは序盤からボールを支配し、主導権を握ってヘタフェを抑え込んだ。もちろんピンチがなかったわけではないが、カディス戦のように猛攻を食らうことなく、90分間を通して相手の時間を作らせなかった。

 ピッチ中央に構えるアイトール・サンスとビトーロのコンビが安定し、中盤でしっかりと攻撃を組み立てられたこと、そして守りでも中盤が機能したことは2ndレグに向けてポジティブなポイントだろう。

 アウェイで戦ったカディス戦の1stレグは柴崎をボランチで起用し、チーム全体のバランスが崩れてしまったが、それ以降は安定感を取り戻した。むしろ柴崎が完全なるキープレーヤーとして機能するようになっている。

 ブロックを作る“耐える守備”を実践したカディス戦の1stレグでは、両サイドに縦への推進力を武器とするアタッカーを置いてカウンターに望みを託した。結果的にその狙いはハマらず、カディスの猛ラッシュに屈した。

 ホームに戻ったテネリフェは柴崎を左に、キャプテンのスソを右に配置する形に切り替える。すると左でボールを動かし、巧みにキープしながら時間を作って右あるいは中央にラストパスを通す柴崎の得意なプレーが出やすくなった。

 右のスソから崩す場合、柴崎はしっかりとゴール前に詰めている。チームとして徹底された形をより表現しやすくなったと言えるだろう。カディス戦2ndレグの柴崎のゴールも、サボらずゴール前に走り込み、フリーになるポジションをとっていたことから生まれた。

 21日のヘタフェ戦でもゴールにはならなかったが、59分に右サイドの崩しから柴崎がシュートを放つ場面があった。特にここ最近はレギュラーシーズン終盤にコンディションを落とし気味だったスソの調子が戻り、仕掛けのキレが増しており、両サイドからの攻撃にアクセントを加えている。

 テネリフェのホセ・ルイス・マルティ監督は、試合後に「柴崎岳とスソをサイドで起用した。ビトーロも良い出来だったし、彼らは素晴らしいパフォーマンスを発揮していた」と、中盤の3人を絶賛した。

 レギュラーシーズン中は左サイドに欠かせない存在で、プレースキッカーも担っていたアーロン・ニゲスを外してまで柴崎を起用するのには、それなりの理由があるということ。最近の活躍で地元ファンの心をがっちりと掴み、指揮官からの信頼も確固たるものにした。

●大一番で活躍してきた実績。第2戦でもかかる期待

 中3日で迎える次の試合で、テネリフェは今季ホームで圧倒的な強さを発揮してきたヘタフェの本拠地に乗り込む。現在ジェフユナイテッド千葉を率いるファン・エスナイデル監督の下、シーズンのスタートダッシュに失敗して一時は21位まで沈んだヘタフェは、監督交代とともにチームを立て直し怒涛の勢いで3位まで駆け上がった。その快進撃を支えたのがホームでの強さだった。

 ヘタフェのレギュラーシーズンにおけるホームとアウェイでの成績を比較すると、下記のようになる。

ホーム:13勝7分1敗 34得点13失点
アウェイ:5勝7分9敗 21得点30失点

 これだけ露骨に差が出ると、対戦相手の心理に影響がないとは考えにくい。テネリフェも25日のアウェイゲームでは、これまで以上に慎重な戦い方を選ぶことになるかもしれない。

 だが、ここで必要以上に相手を恐れるような姿勢を見せてしまえば、ヘタフェの思う壺だ。テネリフェはアウェイゴールを許さず2ndレグに挑めるポジティブな要素も考慮して、前半から積極的に前に出ていくべきだろう。

 仮にアウェイで先制できれば、いくら圧倒的な強さを見せてきたと言っても、ヘタフェは勝利のために3ゴールが必要になる。まずはアウェイゴールを先に奪いにいくことがテネリフェの最重要ミッションだ。

 そしてカディス戦で犯した失敗を繰り返してはならない。守備的に試合に入れば、ヘタフェの強力攻撃陣が襲いかかってくる。

 1部昇格を決める運命の2ndレグで、鍵を握るのはやはり柴崎の活躍だろう。特に昇格プレーオフに入ってからは、紛れもなく冬に加入した日本人司令塔の活躍がテネリフェを勝たせている。彼のテクニック、ひらめき、卓越したプレービジョンをフルに発揮できれば、テネリフェの攻撃のクオリティは格段に上がる。

 そして柴崎の強みは、鹿島アントラーズで数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験だ。幾度もタイトルをかけた大一番を経験し、厳しい優勝争いに身を置き、クラブW杯ではレアル・マドリー相手に2ゴールを奪って強心臓ぶりを世界に見せつけた。

 これまでの経験は1部昇格プレーオフの舞台でも役に立つはず。柴崎がテネリフェを7年ぶりの1部の舞台に導く、そんなシナリオがいよいよ現実味を帯びてきた。

(文:舩木渉)

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