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怒りの椰子──パーム エンジェルス 2018年春夏コレクション

6/22(木) 14:19配信

GQ JAPAN

あぁ、ミラノの悪羅悪羅系のギャングファッションね、と思ったら大間違いだ。2018年春夏のパームエンジェルスは、内側に激しい主張と怒りを込めているのだ。

【写真で見る】パーム エンジェルス 2018年春夏コレクション

会場はミラノの端っこのイベント会場、ソーシャル ミュージック シティ。ランウェイ中央には、大量の土とショベルカー、ダンプカーが置かれている。トラックによる無差別テロがEUで頻繁に起こっている今、ちょっと物騒な印象を観る者に与えるセットである。

パームエンジェルスのデザイナーであり、かつモンクレールのアートディレクターであり、そして写真家でもあるフランチェスコ・ラガッツィは、LAのサーフ&ストリートを表現させたら右に出るものはいない。2017年秋冬はゴリゴリのLAギャングファッションだったが、今シーズンもその“強面の流れ”は継続している。

全体を支配するのは、肉体労働者を連想させるワークウェアと、ブランドの象徴であるパームツリーのモチーフだ。多くのポケットが付いた茶色のセットアップスーツは、激しい労働で所々が痛んでいる風情。サーファーの日焼け避けのような帽子は、消防士のユニフォームのようにも見える。

開放的な雰囲気のはずのパームツリーは、ダークな表現が中心。ウィメンズのストッキングのそれは、墨で塗りつぶされたように真っ黒。メンズのトラックスーツも、黒地の上にパームツリーが並んでいるから、どこか暗い雰囲気が漂う。

サーフィンへのこだわりは、より直接的な表現になってきている。ファーストルックの3色切り替えのマウンテンパーカは、首のストラップがウェットスーツの素材になっていて、水陸両用といった趣。後半にはサーフィン用のタッパを織り交ぜている。サイドに虹色のストライプが入ったワイドパンツは、サーフブランド「SUNDEK」(サンデッキ)とのコラボレーションだ。

アメリカ作家、ジョン・スタインベックは1939年、小説「怒りの葡萄」を上梓した。その頃のアメリカ中西部は、開墾が原因の砂嵐により農作が行えなくなり、農民たちは土地を追われるようになっていた。あくまで私見だが、フランチェスコは、難民、移民がEUに押し寄せる現状と当時を重ね合わせているのではないだろうか。

トラックは荷物を運ぶ道具であり、人を殺める道具ではない。また、労働者が労働者らしく誇りを持って働けるような環境が、世界的に蔑ろにされている。洋服の上で控えめに主張する「RAGE」(激しい怒り)、「Black Sun Poetry」(黒い太陽の詩情)、「FIRE」(炎)、「BURN」(燃える)などの言葉を含め、ラガッツィはファッションを通して自分の考えを声高に叫んでいるのだ。

ピッティ・ウオモでのオフ-ホワイト c/o ヴァージル アブローは、ショーの冒頭の20分間、政治的なメッセージをピッティ宮殿に投影した。ラガッツィとともにイタリアのアパレル会社、ニューガーズグループに所属している。ファッションと政治、世の中の情勢を結びつけることに賛否両論があるのは理解しているけれど、私はありだと思っている。何より今を牽引するデザイナーたちがファッションを通して意思を表明しはじめたことを、ファッションの書き手として嬉しく、また頼もしく思う。

Words:Kaijiro Masuda

最終更新:6/22(木) 14:19
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