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誤審は本当に増えてる? 映像技術とSNSの発達で“総審判時代”【里崎智也の捕手異論】

6/22(木) 10:00配信

ベースボールチャンネル

 ことプロ野球においても、ここ数年「誤審」が槍玉に挙げられるケースが増えている。16年間におよぶ現役生活のなかで、捕手という球審にもっとも近い場所からそれらを見てきた里崎智也氏の見解とは!?(『週刊実話』17年6月1日号より抜粋して掲載。本記事は5月上旬の取材をもとに構成されています)

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■“誤審”が目立つのは技術の低下が原因か?

──広島の緒方孝市監督が退場になった一件をはじめ、今季も“誤審”がクローズアップされる機会が多いように思います。一部には「メジャーのようなチャレンジ制を導入すべき」といった声も上がっていますが、里崎さんはそのあたり、どうお考えを?

 導入するなら、それでもいいとは思いますけど、やるんだったら、MLBみたいにとことんまでやらないと意味がない。今みたいに場合によっては追えてないことすらある中継カメラの映像をもとに検証をするだけじゃ、どのみち文句は絶対に出ると思います。

──MLBでは、全球団の本拠地球場に12台の専用カメラを設置し、それらの映像をニューヨークのオペレーションセンターで一括管理しています。数十億円とも言われるそれだけの巨額投資に見合う効果が果たしてあるのか、というところでもありますよね。

 同じことをやろうにも、日本の場合は、年に数回しか試合をしない地方球場はどうするのか、とか超えなきゃいけない問題も山ほどある。MLB式のシステムを仮に作ったところで、自分が応援するチームが不利益を被ったときに文句を言うのは、結局同じだと思いますしね(笑)。

──近頃よく聞かれる「誤審が増えた」という論調に対してはどうですか?

 これは、今回の単行本(「捕手異論 一流と二流をわける、プロの野球『眼』」)でも詳しく書きましたけど、結局は映像の技術とSNSが発達したおかげで、観ている側の目に、より触れやすくなっただけのことだと思うんです。なにしろ、その気になればスマホで全試合が観られる今は、誰もが“リプレー検証”できる時代。一人ひとりの『今のはセーフやろ!』が、瞬時に『そうや! そうや!』と拡散するから『増えた』と感じるだけなんです。

──言わば、“錯覚”であって、審判の技術が下がっているわけではないと。

 もちろん、審判は審判でそういうことが起きないように、ビデオを見返して立ち位置を工夫してみるとか、自分なりの反省点をもって次の試合に臨んでいくべきだとは思います。でも、人間がやることにミスはつきもの。キャッチャーとして一番近い場所で接してきた立場からしても、技術そのものはむしろ向上しているというのが、正直なところでもありますしね。


■ひいきは気のせい。判定には寛容に

──巷では、しばしば露骨に巨人を“ひいき”する審判が存在するなどとも言われていますが。

 いやいや(笑)。それはさっきも言ったように、単純に「不利益を被った」と感じる人の絶対数が多いからですよ。もし仮に巨人ファンの人が「ぶっちゃけ、ウチに甘い判定してくれる審判多いよな」って言ってるなら、実在するのかもしれないけど、そんなことはおそらくない。彼らのほうも“非巨人ファン”と同じくらい「あの判定はおかしかった」っていう場面を経験しているはずですよ。

──里崎さんからすれば、改善の余地はあっても、そこまで目くじらを立てるほどのことではないと。

 一昨年の阪神対広島の一戦(15年9月12日/甲子園)で起きた、CS(クライマックスシリーズ)争いにまで影響を及ぼすような“誤審”は、昔のような線審を置くなりして、なくす努力をしていく必要はあると思います。でも、勝ち負けを決めるために戦っている以上、全員が幸せになるなんてことは100%ありえない。自分たちに有益な場面も少なくないのだから、そこはもうちょっと寛容であっても罰は当たらないような気はします。


(取材・文:『週刊実話』)


里崎智也

1976年5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮高)、帝京大学を経て98年のドラフト会議で千葉ロッテマリーンズを逆指名して、入団。03年に78試合ながら打率3割をマークし、レギュラー定着の足がかりをつくる。05年は橋本将との併用ながらも、日本一に貢献。06年にはWBC日本代表として世界一にも輝いた。持ち前の勝負強さで数々の名シーンを演出。00年代の千葉ロッテを牽引した“歌って、踊って、打ちまくる”エンターテイナーとしてファンからも熱烈に支持された。14年限りで現役引退。現在はプロ野球解説者・評論家を務める。

ベースボールチャンネル編集部