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初代『Surface』発売からわずか数年で一流のプロダクトメーカーに昇りつめたマイクロソフトのものづくり戦略

6/22(木) 7:10配信

@DIME

ノートPCとタブレットを兼ね備えた“2 in 1”のデバイスの先駆けとして、2012年10月に初代Surfaceが発売されてからわずか約4年半(国内発売は翌2013年3月)。Surfaceブランドはすっかり定着した感がある。5/26に開催された発表会では、そんなSurfaceブランドの新ラインアップが披露された。日本未発売だった28インチのディスプレイのオールインワンデバイス『Surface Studio』、新感覚のPC操作を可能にするホイール型デバイス『Surface Dial』、従来のSurfaceを正統進化させた『Surface Pro』、高性能と高機能をバランス良く搭載した美しいノートPC『Surface Laptop』が一挙にラインアップに加わった。

【写真】初代『Surface』発売からわずか数年で一流のプロダクトメーカーに昇りつめたマイクロソフトのものづくり戦略

つい数年前までマウスやXboxなどを除き、デバイスを作ってこなかったマイクロソフトがこの短期間でここまでクオリティーの高いデバイスを立て続けに投入できるのはなぜなのか?

今回マイクロソフトの米国本社にあるモノ作りの拠点『Building87』を取材することができたのでマイクロソフトのモノ作りの秘密を、同社のインダストリアルデザインを統括するRalf Groene氏のインタビューとともに紐解いて行きたい。

■マイクロソフトのモノづくり拠点「Building87」とは?

米国シアトル近郊のマイクロソフト本社内にある建物の一つ。プロダクトの開発チームが集結するビルで、デザインやプロトタイプの開発、検証、マーケティングなど一気通貫で行っている。

建物の見た目は地味だが、その中は他のビルとは全くことなる。開発中のデバイスなどもあるので、残念ながら一部を除き、撮影はできなかったが、日本の町工場のように所狭しと、重機やパーツが並んでいた。「下町ロケット」的な雰囲気と言えばイメージしやすいだろうか。ここでデバイスを生産しているわけではないが、工場のような光景がひろがっていた。今回の『Surface Laptop』のキーボードにはアルカンターラ素材が使用されているが、プロトタイプで使ったのであろう素材も数多くあり、度重なるテストの様子がうかがえた。

ちなみに、その中が気になる方にはこんな素敵なサイトがある。詳しい説明もあるのでぜひ見てみて欲しい。

『Inside B87』

Building87内には3つの無響室があり、世界で最も静かな場所としてギネスに認められているそうだ。ここでSurfaceなどに搭載するスピーカーの音響特性を評価、調整をしたり、コルタナの音声認識のパフォーマンス向上などに取り組んでいるという。

本社を取材しているとBuilding87以外にも「The Garage」という施設があった。これは日本でいうFabLaboのような感じで、3Dプリンターを始め様々な機器や工具が揃う施設だ。社員であればだれも自由に利用でき、マイクロソフトのメーカーとしての文化を生む拠点となっている。取材中もなにかの実験的なプロダクトの組み立てに真剣に取り組む社員の姿があった。

■開発のチームが共有する日本とドイツのモノづくり思想

5/26の発表時のプレゼンでプロダクトを統括するマイクロソフト コーポレート・バイス・プレジデントのPanos Panay氏は日本の“モノづくり”の思想や、ディテールに対するこだわり、妥協しない姿勢などが、Surfaceの設計に活かされていると語った。今回はPanos氏とともにデザイン面でSurfaceの開発をリードするRalf Groene氏に同社の開発思想を詳しく聞いた。

「Panosと私はクラフトマンシップの哲学を共有しています。彼は昔、日本の会社で働き、モノづくりを学びました。私の場合はドイツのフォルクスワーゲン社の近くにある工具メーカーでモノづくりの“パッション”を学びました。このいいものを作りたいというこの“パッション”をチーム全員で共有していることこそ、Surfaceが成功している秘訣でもあると思います。プロダクトの開発チームは最初は小さいチームでした。でも、今ではとても大きなチームになっています。それでもワンチームとして、Panosの元でビジョンを共有し、情熱をもって開発を進めているからこそ、こうしてスピーディーに新しいデバイスを皆さんに届けられるのだと思います。

プロダクトの開発に当たっては日本語でいう“トキメキ”を重視しています。実はドイツ語にもこれと似た言葉があるんです。開発過程で出たアイディアはすべて一つに集約されます。もちろん突拍子もないものも含めてです(笑) その無数のアイディアを精査していると誰もが心から“トキメキ”を感じるアイディアがある。その時に感じた“トキメキ”が製品化する過程でなくならないようにすごく大事にしています」

■具体的なこだわりのポイントどんなところなのか?

「例えば『Surface Pro』の場合、見た目は前モデルとあまり変わっていないように見えるかもしれませんが、細かいアップデートが施されています。例えばタブレットの周囲に廃熱の出口が見えていましたがこれをも目立ちにくくしています。エッジのカッティングやディスプレイと本体のつなぎ目もより滑らかに、駆動音を押さえつつ、スピーカー性能は向上させています。また、日本やディズニーのアニメーターから絵を描くときは15度か20度くらいの傾きがベストというフィードバックをもらい、今回のモデルではその角度でも安定するようにスタンドを調整しました。実は新モデルでは新しいパーツを全部で800以上使っています。そのうちヒンジとこのキックスタンドだけでも40以上の新パーツを使っているんです。

また、『Surface Laptop』のキーボードで新たに採用したアルカンターラ素材も数々のトライ&エラーを重ねて生まれました。以前のSurfaceではキーボードにマイクロファイバーで柔らかい素材を使っていました。日本のユーザーから汚れやすいというフィードバックもあり、今回は汚れにも強い素材になっています。Building87で数百以上のプロトタイプをかなりの時間をかけて作ってたどりついた形なんです」

■それでは今後のSurfaceシリーズはどう考えていますか? 以前から噂がある『Surface Phone』に関しても気になるのですが。

「まずSurfaceの基本的な考え方は人がデバイスを使うのを見て得たインスピレーションを元にしています。例えば初代Surfaceはタブレットがラップトップにもなればいいのにという人々のニーズにテクノロジーが追いついてきたからこそ生まれたデザインでした。それをきっかけでさらにその先にパフォーマンスを求める人へ向け『Surface Book』が生まれました。次に作った『Surface Studio』はクリエイティブな人が創作のすべてをこの一つのデバイスで行えることをテーマとしました。『Surface Laptop』は伝統的でクラシックな構造をもっとエレガントに美しく作るという狙いです。私たちはたくさんのデバイスを作りたいという発想でなく、意義のあるプロダクトを作って行きたいと思っています。残念ながら開発中のプロダクトに関しては言えませんが、これは次の製品を考えるうえでヒントになるはずです。我々にとって、Surfaceはもはやレファレンスモデルではありません。ひとつの重要なビジネスです。パートナーともインスピレーションを与え合いながら高め合っていきたいと思います」

Surfaceが今後どんな“トキメキ”を与えてくれるのか、プロダクトメーカーとしてのマイクロソフトにも今後注目していきたい。

取材・文・撮影/石崎寛明(編集部)

@DIME編集部

最終更新:6/22(木) 7:10
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