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パリはP-1哨戒機を買うか? --- 清谷 信一

6/22(木) 16:43配信

アゴラ

現在パリ航空ショーが開催されています。
すでに報道されているように海自のP-1哨戒機が現地に行っております。

実はフランス当局がP-1に興味を持っており、4月に急に話がきまりました。恐らくオーストラリア向けの潜水艦で失敗し、インドへの飛行艇の輸出では目がないと知ったアレな首相の思いつきでしょうが、現場の下々はいい迷惑ですよね。稼働率の低いP-1を現場から引き抜かれる海自も迷惑でしょう。

フランス軍は旧式化した哨戒機、アトランティックの後継機が必要です。
因みにドイツは、P-3Cを近代化して使用、英国はP-8を選びました。

現在西側で新型の本格的な哨戒機はP-8とP-1だけです。エアバスやサーブ、ボーイングも輸送機やビジネスジェットベースの機体を開発していますが、これは主として途上国や小国向けのものです。フランスの要求にはあわないでしょう。

かといて、今更エアバスの小型機あたりをベースに開発するにしてもフランスだけの需要では割高になるでしょうから、現実的ではありません。

ですが、フランスはアメリカから哨戒機を入れたくない。アメリカも技術を盗むであろう(笑)フランスに売りたくない。

そんなわけで、オランンド政権は消去法でP-1を欲しがっていたようです。マクロンはどうだか知りませんけどね。それとUAEもP-1には興味があるようです。

防衛産業の現実も知らずに、歴史に名を残したいだけの世間知らずの坊ちゃん総理が、「私が哨戒機や飛行艇や潜水艦を世界に売り込んだのです!!!!」と威張りたいだけでしょう。歴史に名を残したいという自分のチンケなな名誉欲が異常なほどに肥大している。

その実態は米軍に万歳突撃した日本軍レベルなんですけども、総大将は我が国の銃剣突撃をもってすれば鬼神も退く、とか調子のいい妄想をこいているのでしょう。

そんなに売り込みたかったら、ご自分がパリのエアショーに出張ってセールスしてくるべきでようが、どうせ国会も延長する機はまったくなかったんだし。

ただし、P-1に関するまともな情報をフランスの政権が持っていたのか、実際の運用側も同じ意識を共用しているのかは疑問です。何しろ、お高い機体です。しかも採用されてもシステムはタレスかエアバスのモノを使うでしょう。

P-1導入の最大の問題は維持費とエンジンの信頼性です。
専用の4発エンジンです。しかも実験で回した時間も3千時間ていどで少ない。信頼性が担保されている欧米のエンジンとは違います。しかもフランスには一円もカネが落ちない代物です。金満のUAEならばあまり気にしないでしょうけどね。

エンジンを換装するでしょうか。
主翼を改修して双発で欧州製エンジンを搭載すれば、相応にフランス国内に仕事が落ちてきます。
フランスならばやりかねないですが。

ただフランス政府は交換条件をだしてくるでしょう。
例えばフランス製の武器の○○を買えとか。例えばの話、ミストラル級を発注してくれとか、我が国が何百億円かの輸入をしてくれ、対米追従一辺倒の方向から変わる舵をきるきっかけになって毎年それなりの武器の対日輸出ができるのであれば、維持コストが馬鹿高いP-1を買っても元はとれます。現場は嫌がるでしょうけどね。
もっとも交換条件は兵器に限りません。鉄道や航空管制でタレスの製品を入れろとか、チーズやバターの関税下げろとかいうのもアリでしょう。

実際問題として主契約を仏企業とする必要があるでしょう。システムは彼らが担当するでしょうし。ただ組むにしても、タレスかエアバスか、ダッソーのどれを選ぶかでまったく戦略は変わってくるでしょう。でも彼らにしても案はあるでしょう。P=1と組むメリットがあると考えるかどうか。

でも最大の問題はメーカーである川崎重工です。
メーカーとしての当事者意識が全くない。今回のパリでのP-1の展示でもまったくやる気がありません。政府が売ってくれならお付き合いしても宜しくってよ、てなやる気のなさです。しかも川重は先のオーストラリアの潜水艦商戦の敗退にかしても、そもそも防衛輸出がいいかどうか考えた方がいいみたいな、話をトップがするような会社です。

メーカーに当事者意識と能力がないのですから、P-1の輸出は、非常に見通しが暗いでしょう
しかも売れてもドンガラだけです。それでフランス側に過大な譲歩をするのであれば、国全体とすれば大損です。

首相の見栄と、異常に肥大した名誉欲を満たすためだけに輸出をするならば、変な商売はやらない方が余程宜しい、ぼくはそう思います。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年6月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」(http://kiyotani.at.webry.info/)をご覧ください。

清谷 信一

最終更新:6/22(木) 16:43
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