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船頭なき船は迷走する―「失われた30年」を防ぐカギは人事改革

6/22(木) 12:30配信

Wedge

 「あの東芝が経営危機に陥るなんて想像もできなかった。本当に悲しいことだ」

 Wedge7月号特集(日本型人事への最後通告)の取材をしている間、こうした声を何度も聞いた。一流大学を卒業した学生が入社し、日本の頭脳が集結しているはずの東芝を貶(おとし)めたものはなにか。

 経営共創基盤の冨山和彦CEOは、「稼げる可能性が著しく低いビジネスを捨て、次の分野に移るという迅速かつ果断な意思決定を、経営者が行えなかったことが大きな要因だ」と説明する。

 優秀な船頭、つまり良き経営者がいなければ、どんなに立派な船でも迷走する。三洋電機、シャープ、そして東芝……かつて世界を席捲(せっけん)した日本の電機メーカーが、次々と没落していった。こうした問題は電機産業に限らない。直近20年間の日本の平均経済成長率は、GDP上位5カ国の中で最下位であり、日本企業全体の成長の勢いも弱まってきている。

 「競争力のある海外企業では、30代の頃から幹部となり、1人で決断することを迫られる。年功序列で昇進し、60歳でやっと経営者になる日本とは、経験値がまるで違う」(冨山氏)

時代遅れの人事制度はデメリット

 一部に根強く残っている年功序列、終身雇用といった、いわゆる「日本型人事」。新卒を一括で採用し、入社後、長い年月をかけて成長させていくというモデルは、高度経済成長期のキャッチアップ型の産業にとっては有効な雇用形態であり、日本企業を一時期「ジャパン・アズ・ナンバーワン」に導いた。

 だが、「戦後の経済成長期は、日本型のモデルがたまたまうまくいっただけの話。とうの昔に終わったゲームのルールを今も多くの日本企業が使い続けている」(カルビーの松本晃会長兼CEO)

 急速なITの進化で技術進歩のスピードは全く変わった。産業構造が変化し、短いサイクルでのイノベーションが求められる今、長時間かけて横並びで育成するモデルはむしろデメリットになる。

 競争力のある海外企業は、新卒・中途を問わず、必要な能力を備えた人材を必要なタイミングで世界中から採用し、イノベーションが起きやすい環境を整えている。常に、その時その時の、最良の布陣を敷くのが当然だ。

 「上司の顔色を見て、文句も言わず、言われたことをこなす。ミスをしないように、リスクを伴う挑戦はせず、無難に業務をこなす。こんな人が出世し、上層部に固まっている企業は成長せず、いずれ没落する」(元エルピーダ・メモリ社長の坂本幸雄氏)

 「失われた10年」という言葉は、いつの間にか「失われた20年」となり、気がつけば、あと数年で「失われた30年」になろうとしている。日本企業の活力なくして日本の未来はない。「失われた30年」の到来を防ぐべく、問題の根源の1つである日本型人事からの脱却策を検証した。

浅野有紀 (Wedge編集部)

最終更新:6/22(木) 12:30
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