ここから本文です

国策捜査か? 職員のスマホさえも問答無用で取り上げた森友学園への家宅捜索

6/22(木) 16:00配信

HARBOR BUSINESS Online

 19日に行われた森友学園への強制捜査。大阪府内の籠池泰典前理事長の自宅や学園事務所、系列保育園、長男宅など計5か所へ家宅捜索に入った。

 テレビニュースでは大量の段ボール箱を運ぶ姿のみが放映されるのみ。特捜部がどのように動いているのか、視聴者にとっては気になるところである。

 今回、捜索に立ち会った塚本幼稚園の女性職員がガサ入れの実態を明かしてくれた。

「そもそも、あの日は従業員がヒアリングを受けることになっていたんですよ。ちょうど5時半から理事会があったので、6時くらいになると聞いてたんですけど、どうも様子がおかしい。園側が『報道陣も沢山集まっていて、報道されるのがイヤなので今日は止めてください』と伝えたみたいですが、幼稚園の入口に張り付いて帰ってはくれません。その時、初めて強制捜査だと気づきました」

 幼稚園の外にいた取材陣は、検察官が携帯電話を片手に問答している様子を目撃している。間近にいた新聞記者によると検察官は「今すぐ、ここを開けてください。そうでなければわれわれは乗り越えてでも入りますよ」と電話口で叫んでいたという。

 午後7時4分に2名の捜査官が、ほどなく7名ほどが園内に入っていった。

「まず検察の女性職員から身体検査を受けました。パンツのなかまで見るわけではありませんが、上から下まできっちりと触られるなど、かなり厳重でしたよ」

 幼稚園の一職員であっても、まずは疑ってかかるというのが特捜のやり方だ。

 ほぼ同時刻に系列保育園にも大阪地検の係官が到着したのだが、保育園の従業員は帰宅してしまっていたため、なかには入れない。

「検察の人が『保育園の先生に電話を掛けてください』と命じました。理事長が渋々電話を掛け、つながったところで検察官が電話を取り上げ、『大阪地検です。至急保育園の方へ戻ってください』と言ったんです。絶対に断れないような厳しい口調でした」

 ほどなく保育園の方も職員が解錠し、特捜部員がなだれ込んだ。

◆職員のスマホですら問答無用ですべて押収

 幼稚園内部の様子に戻る。

「まず職員室とその横の倉庫の捜索に入りました。倉庫には金庫があるんですよ。『お金を数えるから見ててね』と言われ、1万円札何枚、千円札何枚と確認を取っていきます。職員室では棚に置いてある書類を根こそぎ集め、段ボール箱に入れていきました。『まったく関係ないものですから』と言っても聞いてくれず、にかく書類という書類はすべて持って帰るんです。『幼稚園の業務に必要です』と懇願した書類だけ、コピーを許されます。もちろん自分たちでコピーするんですよ」

 捜索する際はすべて幼稚園の関係者の立ち会いのもとで行われる。見えないところで勝手に書類や物品をあさられることはない。

「もちろん、わたしたち自身も常に見張られていて、ひとりになることは許されません。お手洗いの際も入口までついて来ます」

 証拠隠滅されぬよう警戒は怠らないのである。

「『外部との連絡を絶つためスマホを預からせて欲しい』と言われたので、手渡しました。その時は後ほど返却するような雰囲気だったんですよ。やがて、スマホの設定状況やメーラーはなにを使っているのかなどを調べはじめます。おかしいなと思っていると、パソコンを押収された際、『スマホとパソコンは全部持って行く』と言われました。その時はじめて騙されたと気づきましたね。わたしたちは被疑者ではなく参考人だと聞いていましたし、今の時代、携帯がなくては普通の生活ができなくなるので抵抗したんですけれども、問答無用でした」

 没収されるだけではない。

「『LINEとGMAILの暗証番号を教えてください』と言われたんですよ。『教えたくないんで、教えなくてもいいですか?』と言い返すと『教えなくてもいいけど、解析に時間がかかるから返却が遅くなるよ』」

 と暗に開示するよう要求してきたという。

◆稲田大臣の名刺が出たとき、捜査員は動揺した

「教職員の机の引き出しもすべてやられます。ショップのポイントカードとか、どう考えても必要ないものも持って行かれますよ。稲田朋美防衛大臣の名刺が出てきたときだけ『どうしよう?』とかなり動揺し、係員同士で顔を見合わせていました」

 国策捜査なので政治家の名刺に逡巡したのだろうか? 違うと信じたい。

「幼稚園のバスや従業員の私用の車も捜索されました。広い建物なんですけれども、幼稚園の職員同行のうえ、すべての部屋や倉庫も調べます」

 筆者は幼稚園の外で待ち構える取材陣のなかにいたのだが、ときおり2階の教室に懐中電灯の光らしきものが見えたので、その時のものだろう。

「数時間が過ぎたくらいになると、段ボールが増えてきて職員室内に置けなくなったため、講堂にすべての書類を集めることになりました。三台のノートパソコンで押収する資料の目録を作りはじめます」

◆家宅捜索は深夜まで及んだ

 日付は変わり、やがて丑三つ時を迎えた。家宅捜索は終わらない。

「最初、立ち会ってくれた弁護士さんは『そんなに長くかからないから』とおっしゃっていたんですけれども、やがて『12時は回るかも』、しばらくしてから『2時は過ぎそう』と言ってきます。検察の人に『いつ終わるんですか?』と聞いても『もうすぐ』としか言ってくれません」

 一番辛かったことを尋ねると、

「廊下のほうから検察の方の笑い声が聞こえてくるんですよ。本当に悲しくて悔しくて、『笑ってる場合とちゃうやろう』と泣きたくなりました」という。

 検察関係者の笑い声は幼稚園の外で取材していた僕も何度か聞いている。底抜けに明るい声だった。権力の行使は楽しくて仕方ないらしい。想像を絶する権限を付託されているからこそ、持ち合わせていなくてはならないはずの自覚が完全に欠落している。”検察一家”としての矜持を失い、精神が弛緩しきっている。

「5時を過ぎた時点で、ようやく6時過ぎには終わると言われました。押収品目録交付書に母音を押すよう促されたんですけれども、もうそのころには完全に思考力を失っていて、悔しいという気持ちもありませんでしたね」

 終了したのは午前6時半。11時間半にわたる捜索のあいだ、ずっと当局係官の監視のもと、ひとときの休息も許されず、夕食も摂っていない。

◆参考人にすぎない女性職員を11時間半も拘束

「わたしたちは何度も『ひどすぎる』と抗議をしました。でも検察の方は、『みんな、こうしている』『これは当たり前のことなんだ』と言うばかりです。幼稚園の先生方は7時に出勤してきます。ですから私たちは一睡もせず、翌日の通常業務にあたりました」

 当局の言う「あたりまえ」は検察村の屁理屈のなかでの「あたりまえ」に過ぎない。検察村の常識が一般社会の常識と隔絶してるからこそ、大阪地検特捜部による「主任検事証拠改ざん事件」の際、ごうごうたる非難を浴びたのではなかったのか。あれほどまでに大阪特捜不要説が取りざたされたのではなかったのか。朝日新聞の報道によると、徹夜の捜索について、捜査関係者は『通常の捜査だ。普通は園児のいる平日の昼には入らない』と言ったそうだ。被疑者ではなく参考人にすぎない若い女性職員を11時間半にわたって監視付きで拘束、食事の時間どころか、ひとときの休息すら与えないような捜査を『普通の捜査だ』と言ってのけるところを見ると、あの方たちの内面は「主任検事証拠改ざん事件」の前とまったく変わっていないようだ。公権力を行使するうえで、人権上の最低限の配慮すらできない人たちに、社会正義の実現などできるわけがない。

◆とかげの尻尾切りは許されない

「検察の方たちが園内から立ち去られたのは6時半を回ったくらいでした。7時には幼稚園の先生方が出勤してこられるので、わたしたちは一睡もできないまま翌日の勤務に臨みました」

 政治家のからんだ大規模な汚職など、なかなか警察が手を出しにくい案件に取り組むことを国民に期待されているからこそ、特別捜査部は存在を許されている。今回の森友学園の件は、告発があったとはいえ、通常では大阪府警マターであり、特捜部が取り組むべきレベルの犯罪ではない。

 森友事件は朝日新聞による国有地の払い下げ報道が端緒となっている。売買価格が8億円から大幅に値下げされた経緯や、財務省による書類破棄、大阪府による不可解な学校設立認可など明らかになっていないことは多い。

 報道を見ても、国民の大多数はその点の解明を求めている。

 今回の捜査によって事件が籠池氏によるものだけに矮小化され、とかげのしっぽ切りに終わるようなことになれば、大阪地検特捜部は今度こそ国民からレッドカードを突きつけられることになるという覚悟を持って調べを進めてほしい。社会は特捜検察をあなた方が思っているほど温かくは見ていない。

<取材・文 赤澤竜也 twitterID: @tatsu_a>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:6/22(木) 17:22
HARBOR BUSINESS Online