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現役レゲエ歌手・leccaではなく2児の母として都議選に挑む――都民ファーストの会・斎藤礼伊奈の本気度は?

6/22(木) 9:00配信

週刊SPA!

 6月23日告示の東京都議会議員選挙(以下、東京都議選。7月2日投開票)。最大の焦点は、小池百合子知事率いる「都民ファーストの会」が、自民党に代わり第一党となるかどうか。が、今回のように政局の要素が強い選挙では、時として、候補者個々の資質や人となりを見ず、政党のみを見て投票する流れもできやすい。事前予想で優勢とされている「小池新党」の各候補者は、政治家としてどんなビジョンを持っているのか――候補者の素顔に迫ってみる。

⇒【写真】都民ファーストの会の事務局があるビル

【短期集中ルポ「小池新党は都政を変えられるのか?」第4回/南多摩・斉藤礼伊奈候補】

◆新人候補は現役バリバリのレゲエ歌手

 2016年6月13日の13時頃、東京・西新宿の都庁からほど近くにある都民ファーストの会の事務局を訪ねた。都民ファーストの会・南多摩(多摩市、稲城市)担当の斉藤礼伊奈候補(38)にインタビューをするためだ。

 教えられた住所をたどっていくと、新宿中央公園のすぐ目の前、1階にレトロな喫茶店が入った、レンガ色のビルに着いた。一見、普通のマンションのようにも見えたが、階段で2階に上がると、小ぎれいなオフィスフロアになっており、一般企業も入居していた。

 その一角に「都民ファーストの会」と書かれたドアを見つけ、インターホンを押して取材に来た旨を伝えると、「ちょっと待っててください」という男性の声が帰ってきた。しばらく待っていると、ブルーのジャケットを羽織った斉藤が、同じくドアの前にやってきた。

 斉藤が「取材の方ですよね?」と、ていねいにもドアを開けてくれたので、事務局の中に入ることができた。フロアの床にはグレーのカーペットが敷かれており、奥の事務所スペースから早足でやってきた30代くらいの男性スタッフが、「こちらへどうぞ」というまま、細ながい会議室のような部屋に通せられた。

 部屋にはすでに私服姿の男性一人がおり、誰かと思ったが、名刺を交換すると「エイベックスマネージメント株式会社」とある。何を隠そう、都民ファーストの会所属の斉藤礼伊奈は、2012年に単独武道館公演を果たした、現役バリバリのレゲエ歌手・leccaである。どうやら、男性はそのマネージャさんらしい。

 政治家としてのインタビューに、なぜエイベックスのマネージャーが来るのかという疑問はあったが、そうこうしているうちに、都民ファーストの会の広報担当者の女性まで来た。3対1の取材となり、政治家ではなく、まるでアーティストの取材のようだ。慣れない展開にすこし緊張しながら、筆者はインタビューをはじめた。

◆歌手として社会問題に向き合ってきた

 アーティストとしてのツアーを6月10日に終えたばかりの斉藤は、その翌日に地元多摩で都議選のための事務所開きをし、さらには2歳と6歳の子供の母親として子育てにも奔走するなど、慌ただしい日を送っていた。

 音楽と子育ての両立だけでも、大変なものと思われるが、さらに苦しいスケジューリングになるのを覚悟してまで、斉藤に政治を志させたのは、小池百合子東京都知事の存在と、夫のサポートだった。

「待機児童の問題や保育士の待遇改善に素早くきめ細やかに取り組む小池知事の元で学びたいと、毎晩パソコンの前で悩んでいた私に、『やらないと後悔するから絶対にやるべきだ。周囲のみんなも待ってってくれるよ』と夫が言ってくれたのです」

 実際、4月頃に、斉藤が都議選候補者として内定したという情報を知ったファンたちの反応は暖いものだった。ブログに寄せられたコメントのなかには、音楽活動への影響を心配する声もあったが、そのほとんどは「頑張ってください」というような肯定的なものだったのだ。

 そうしたファンの反応は、斉藤の楽曲とも関係している可能性がある。2017年3月に発売された最新アルバム『High Street』に収録されている楽曲『Woman』では、「働きすぎでまともに眠っていないから頭も冴えない」という、2016年に騒がれた電通の新人女性社員の過労死問題を彷彿とさせる歌詞もある。

 2011年の東日本大震災では支援活動をきっかけに、被災地である岩手県釜石市の観光親善大使になった。そのほかにも、子宮頸がんの啓発イベントへの出演など、以前から社会的な活動に携わってきた歌手・leccaのファンにとって、斉藤の出馬はそれほど意外なものではなかったのかもしれない。

「私は自分で作り歌ってきた歌詞や楽曲のすべてに、メッセージを込め、社会的な問題に向き合ってきました。歌手という経歴に否定的な意見を持つ人もいると思いますが、自分がやってきたことの“中身“を伝えていければ、と思います」

◆「働く母親」にとってハードな現状を変えたい

 2児の母であり、自らの子供もいわゆる“待機児童”だったという斉藤は、政治家として「子育て」や「保育」には、とくに力を入れたいという。さらに、「現在の日本社会は、働く母親にとってかなりハード」だと指摘し、働き方改革にも意欲をみせた。

「女性が男性と同じくらい活躍し、また子供も持てるように、というような子育て支援は90年代からありました。しかし、現実は、仕事で無理をしてしまい、妊活や不妊治療で苦労したり、女性特有の病気になったり、身体をこわして30代に離職したりする方が、私の周りでも少なくない。こうした問題を、子育て政策や働き方改革で解決していきたいです」

 女性として、働く母親として、斉藤だから気づくことができる日本の論点がある。それを街頭では、子育てにくわえ親の介護なども折り重なってくる30代~40代の自分と同世代の人々を中心に、訴えていくつもりだ。

 ミュージシャンの街頭活動というと、どうしてもパフォーマンス的な面が注目される。2016年の参議院選東京選挙区に出馬した三宅洋平は、ライブと演説を融合した「選挙フェス」で話題を呼んだ。しかし、斉藤には選挙戦で歌う予定はないそうだ。

「エイベックスと契約してプロの歌手として活動している私が、普段はお金をいただいてやっているものを、街頭で無償でやってしまうと、公職選挙法違反の恐れがあるので斉藤れいなとしては、歌は歌いません」

 また、いわゆる“ミュージシャン候補”と自らの違いについて、質問すると、斉藤は「私は音楽と政治を分けて考えています」と、きっぱりと回答した。

「私にとっては音楽は理想を追求し、徹底的に開かれたものです。レゲエでいえば“One Love”の精神ですね。けれど、政治は現実と向き合いながら、理想を目指す。あるべき論だけを語り、大きな理想を掲げるだけでは、議論が難しい。人員配置や予算の配分も含め、“小さい山から大きな山を目指す”発想が重要だと考えています」

◆政治家として生きる覚悟を見せられるか

 南多摩(多摩市、稲城市)の定数は2議席。これを、自民党現職・小磯明(65)、共産党新人・菅原重美(68)、無所属現職の石川良一(65)、そして斉藤の4人が争う構図だ。

 斉藤の候補者は強敵ぞろいだ。地元の桜美林大学の元理事で自民党現職の小磯は6期目を、稲城市長を20年続けた無所属の石川は2期目を目指す。そして、初当選を目指す共産新人の菅原も、多摩市議を5期務めた過去をもつ。

 選挙区の、斉藤にとっては小学校以来、長年にわたり過ごした地元だ。2006年にエイベックスからメジャーデビューし、都心に音楽スタジオを構え、一人暮らしを始めるまで住み続けた。とはいえ、対抗馬と比べると、地盤や組織が違いすぎる。

 インタビューでは、女性の労働環境や、子育てや保育などをめぐる、自分の体験をもとにした、斉藤の問題意識の豊富さを感じた。それにくわえて、選挙戦で重要になってくるのは、政治家として生きる覚悟をどこまで有権者に伝えられるか、ではないか。

 斉藤は「本格的に政治をやらせていただくことになった場合。いままでのようなペースで音楽活動を続けるのは無理だと思う」と政治活動に集中する意欲を見せてるが、ほかの候補者たちはもとより、政治家としての活動に主眼があり、失職するか当選するかという危機感のなかで、必死で議席を狙ってくる。

 “小池人気”という追い風は吹いているのは確かだが、持ち前の問題意識と働く母親ならではの視点を生かして、多摩と東京のためにどれだけ尽力するできるのか――。

 選挙戦でその熱意を充分に訴えられるかどうかが、強敵揃いの選挙区で戦い、政治家を目指す上でのポイントになってくるだろう。

〈取材・文/河野 嘉誠〉

日刊SPA!

最終更新:6/23(金) 9:50
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