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【インタビュー】「選手が見えないものを見せる」吉田麻也所属サウサンプトンの新監督マウリシオ・ペジェグリーノが自ら語る指導哲学

6/24(土) 14:48配信

footballista

監督は人生の指針だった。私は一緒にいたすべての監督から生まれた作品だ

INTERVIEW with
MAURICIO PELLEGRINO
マウリシオ・ペジェグリーノ
(サウサンプトン新監督)



6月23日、サウサンプトンの新監督にマウリシオ・ペジェグリーノが就任することが発表された。16-17シーズンに指揮を執った昇格組アラベスでは敵地カンプノウでバルセロナ撃破を成し遂げ、コパ・デルレイでは決勝進出を果たしシメオネ、サンパオリ、ポチェッティーノらに続くアルゼンチン人の名将候補として注目を集めた指揮官はいったいどんな指導哲学を志しているのか。4月21日にJ SPORTSのサッカー番組『Foot!』で放送されたインタビューの全文を同番組の厚意で掲載する。



インタビュー・文 木村浩嗣
取材協力 J SPORTS『Foot!』



プレースタイルとは?
チームは単に守備的だとか攻撃的だとは言えない。答えは選手が握っているんだ


──勝ち点37ポイントを稼ぎ、1部残留は99.9%達成されました。となるとアラベスの次の目標は何でしょうか?
「次の目標は土曜日(3月18日)の試合に勝つことと、毎週我われのパフォーマンスを向上させていくこと。それ以上の目標、欧州カップ戦出場権獲得は残り4、5試合になってから考えたい。今考えているのは次の試合のことだけ。もっと上に行こうと思ったらもっと試合に勝たないといけない。だから手近な目標から始めたい。それはより多くの試合を勝つことで、パフォーマンスを向上させることだ」


──コパ・デルレイの決勝もありますが、それは別物ですよね?
「そうだ。決勝が行われるのはリーグ戦終了後でまだたっぷり時間がある。我われにとって最高の準備というのは、毎週最大限良い試合をし続けることだ。(編注:インタビュー後、5月27日に行われた決勝ではバルセロナに3-1で敗れ惜しくも優勝を逃した)」


──得点が不足しています。例えばそこは改善点でしょうか?
「そうだね。我われのゴールチャンス数とゴール数のバランスは、シーズンを通して常に良かった、とは言えない。好機をたくさん作りながら1点に終わった試合もあるし、この前の土曜の試合(第27節マラガ戦/○1-2)のように3度のチャンスで2点を挙げた試合もある。このことからわかるのは、ゴール前の効率は時にプレー内容と直接関係しないことがあるということだ。選手の調子が良い日だったとか、自信があったかどうかにも関わっている。私の仕事はチームを一歩前に出させ、多くのゴールチャンスを作らせ、相手チームを従属させること。この最後に点に関してはここ数試合で随分良くなった。コパ・デルレイの決勝進出を決めたことで自信がつき、バレンシア(第24節/○2-1)、セビージャ(第26節/△1-1)、アトレティコ・マドリー(第20節/△0-0)といった強敵相手でも我われのプレーの方が上回った。それが私にとって大きな満足だ」


──つまり、プレーの内容を良くすればゴールはおのずとついてくるということですね?
「その通りだ。ゴールというのはパフォーマンスの結果である」


──あなたのチームのプレースタイルを定義するとすればどうなるでしょう? 守備的でしょうか、それとも攻撃的でしょうか?
「シーズン当初からの我われの優先事項は、簡単なことから始めて試合ごとに自信をつけていくことだった。開幕時、我われにはたくさんの疑問符がついていた。なぜなら1部リーグとスペインサッカーで経験がある選手が少なかったからだ。簡単なことをやりミスをなるべく少なくすることで自信をつける必要があった。もし君がアラベスの最初の5試合と直近の5試合を比べれば、パフォーマンスがまったく違っていることに気がつくはずだ。チームは攻撃時にはより大胆になったし、守備時にははるかに前でプレスをかけるようになった。だからアラベスのスタイルは何かと聞かれると、シーズン始めはこうだったが今は違うと答えないといけない。今のチームには試合を支配する能力があり、攻撃のバリエーションも増えた。特にホームでの試合はそうだ」


──要約すると、当初は守備的だったが今はボール支配率が上がり攻撃的になった?
「我われは常にバランスの取れたチームだった。私にとって、チームというのは単に守備的だとか攻撃的だとは言えない。試合に勝つためには両方、よく守備をしよく攻撃をしなければならない。答えは選手が握っているんだ。相手ゴール前にいる必要がある選手もいるし、前にスペースが必要な選手もいて、私は選べるのだから。私が言えるのは、チームのベースは精神力の強さとプレーに対する優れた姿勢だったが、少しずつ攻撃への自信を深めていったということだ」



指導とは?
我われの重要な仕事は選手が見えないものを見せ、彼らを未知のところへ導くこと



──あなたの説明を聞いていると、カンプノウでバルセロナに勝った試合(1-2)が最高の試合だとは言えませんよね? あれは第3節のことでした。
「違う。勝った試合が常に良い試合だとは限らない。あの時は我われの可能性の中で最高の方法だと思っていたやり方でプレーした。チームのメソッドとアイディアというのは生きているプロセスであり、決して終わることがない。常に未完だ。人がすることだから前進もするし後退もする。サッカー選手はサッカーをプレーする人なのだ」


──サッカー選手と“サッカーをプレーする人”というのはどこが違うのですか?
「サッカー選手はプロだから良いプレーを何度でも繰り返すことができる、と我われは考えがちだ。まるで機械のようにね。だが彼らは機械でなくサッカーをする人なのだ。だから波がある。8点や9点の時もあるし5点や6点の時もある。人生と同じだ。すべての仕事をする人がそうであるようにね。メソッドとアイディアのプロセスは前へも進むし、行き詰まるし、後退もする。常に変化しているのだ。私が今日言っていることは3週間後には意味がないことかもしれない」


──意味がない。それは良くなっているからですよね?
「そうだ」


──あなたと話をしていると教師と話をしているような印象を受けます。監督には例えばサンパオリのように叫び動きまくる人もいるのですが、あなたは穏やかで静かです。選手もしくは人間に物を教える人というか。
「監督、教師、マエストロ、プロフェッサー、ディレクターと呼び名はいろいろあるが、我われの重要な仕事は選手が見えないものを見せること。それを教えて彼らを未知のところへ導くこと。これこそが永遠の教えのプロセスである。チームをより良くすることと同じくらい、選手個人を良くすることが私は大好きだ。特にメンタル面はね。自分の限界を学ぶことによって(可能性を)広げられるということを教えたい。繰り返すが、彼らはプロフェッショナルな選手ではなくサッカーをプロとしてプレーする人なのだ。だから誰しも限界を持っており、それを自覚することで学びの領域が広がる」


──あなたが言っていることはアラベス成功の鍵かもしれませんね。ここにはマルコス・ジョレンテやテオ(エルナンデス)のような若い選手が多いし、ベテランでも他のチームで行き詰まっていたトケーロやアレクシスのような選手がいて、ともに成長して良いプレーを見せています。
「彼らに加えて2部や2部Bから上がってきた選手もいる。だから最初に経験不足の選手が多いチームだと言ったのだ。サッカーのエリートの世界の問題は、自分の力を3日ごと6日ごとに見せ続けなければならないことだ。だから本当にやる気がある者だけに可能性が与えられる。彼らは学ぶことに夢を抱いていることを示してくれたし、そう思っている者だけに未来の可能性は広がる。それが今季のアラベスの強さだと思う。我われは戦いたい。そしてサッカーは欲する者たちに機会を与える」


──話を戻しますが、アラベスは昇格したばかりで新しい選手が多かったし経験も不足していた。しかも、昇格へと導いた監督ではないあなたの仕事はまるで虫眼鏡を使うかのように事細かに見られる。監督就任はリスクの大きい決断ではなかったのですか?
「そんなことはないよ。最大のリスクというのは何もしないこと。人生で最も危険なのはじっとして何もしないことだよ。私はアラベスの最後の1部リーグでのシーズン、05-06にこのチームでプレーした。街も知っていたし人の文化も知っていた。選手たちと同じように私にとっても大きなチャンスだとわかっていた。アルゼンチンサッカーを3年間経験し、再び偉大なリーグの一つに戻って来られる。私にとって偉大な挑戦だったから、選手にも挑戦するつもりで臨んだ」


──ビトリアでの生活はどうですか?
「大好きな街だ。ビトリアは欧州の中では生活の質が最も高い場所の一つだと思う。緑が多く食べ物のクオリティも高く尊敬できる人々がいる。練習場でもスタジアムでも人々は選手が自信をつけるのをサポートしてくれた。尊敬というのはこの街で学んだ重要なことの一つだ」

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最終更新:6/24(土) 16:15
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