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「AI記者」の進化が、読者を増やし、ニュースルームを効率化する

6/24(土) 12:30配信

WIRED.jp

米大手新聞社の『ワシントン・ポスト』が、人工知能(AI)による報道を強化している。“記者”であるAI「Heliograf」は選挙報道において、いかにも『ポスト』らしい雄弁な語り口の記事を書くまでに進化した。同社の試みからは、AIによるジャーナリズムが今後大きな役割を果たす未来が見えてくる。

ニュースは「怒り」で拡散される

2016年11月に行われたアイオワ州第4下院議員選挙区の選挙で、共和党の現職スティーヴ・キングが民主党の新人キム・ウィーヴァーを破ったとき、『ワシントン・ポスト』はすぐさま選挙の結果と趨勢を次のように報じた。

「共和党が下院の支配権を維持した。圧倒的多数の議席をわずかに減らしただけだ。共和党の幹部の多くが2ケタの議席減を恐れていたなかで、これは驚くべき運命の逆転だ」

この速報には『ポスト』らしい明快さと力強さがあったが、ひとつの点が大きく違っていた。これを書いたのは、昨年『ポスト』のウェブサイトでデビューを果たし、ジャーナリズムの分野で現在のところ最も高度な使い方をされている人工知能(AI)の「Heliograf」だったのである。

期待するのはAIの“洞察力”

2013年にジェフ・ベゾスが『ポスト』を買収したとき、AIによるジャーナリズムは始まったばかりだった。Narrative ScienceやAutomated Insightsなど、自動コンテンツ生成システムをもつひと握りの企業は、スポーツファンや株式アナリストになじみ深い、簡単なデータ重視のニュース記事を生み出すことができていた。

しかし、『ポスト』の戦略家は、洞察力のある解説記事を生成できるとAI によるジャーナリズムの可能性を感じていた。さらに、人間と機械の「シームレスなやり取り」を促進するシステムも手に入れたかったと、2014年に戦略イニシアティヴ・ディレクターとして『ポスト』に加わったジェレミー・ギルバートは言う。「わたしたちが興味をもっていたのは、記事を高度にしていけるかということです」

数カ月の開発期間を経て、「Heliograf」は2016年にデヴューした。初期ヴァージョンが自動生成したのはリオ五輪の記事だったが、進化したヴァージョンは、より雄弁な語りが可能で、すぐに選挙報道に使われるようになった。

仕組みはこうだ。編集者が、予想されるさまざまな結果(「共和党が下院の支配権を維持」から「民主党が下院の支配権を奪取」まで)を説明するキーフレーズを含んだ記事のテンプレートを作成し、そのうえでHelografを構造化データのソース、たとえば選挙報道の場合は、VoteSmart.orgというデータセンターにつなげる。

Heliografのソフトウェアは関連するデータを特定し、テンプレートのなかの対応するフレーズとマッチさせ、複数のプラットフォームで複数のヴァージョンを公開する。このシステムには、予測よりも票差が大きいといった、データに発見された異常をSlackを通して記者に知らせ、チェックできるようにするという役割もある。

「スクープになりうる情報が得られるもうひとつの手段というだけですが」とギルバートは言う。

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最終更新:6/24(土) 12:30
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