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100回以上の試し書きから生まれた!「ミッフィー」が世界中で愛される秘密とは?

6/24(土) 11:00配信

ダ・ヴィンチニュース

 誰もが一度は見たことがある、子どもから大人まで世代を超えて愛される世界一有名なうさぎと言えば、2017年に逝去されたディック・ブルーナの「ミッフィー(うさこちゃん)」ではないでしょうか。シンプルな線とバッテンの口もとが印象的な絵本のヒロイン・ミッフィーは、海や動物園に行ったり、夢の中で女王さまになったり、時には嫌がらせを受けているクラスのお友達をかばったりもする、60年間世界中の子どもの友達で居続ける女の子。

 本書『MOE特別編集 ブルーナが語る ミッフィーのすべて』(白泉社)は、4回にわたるブルーナのロングインタビューと豊富なイラストレーションをもとに、ミッフィーの誕生秘話や絵本に込めた想い、制作工程などを紹介。またこれまであまり知られていなかったブルーナのグラフィック・デザインや装丁の作品群を掲載することで、彼の画業全体を俯瞰できるファンのみならずアート好きにはたまらない一冊になっています。

 過去に『MOE』で紹介されたブルーナを敬愛する田中一光、福田繁雄らのインタビューも再収録。谷川俊太郎をはじめ多数の有名人のメッセージやイラスト、立体作品からも、ブルーナの世界を楽しむヒントがたくさん詰まっています。では、一見すると誰でも描けそうなシンプルな絵がどうして世界中を魅了するのか、その謎に迫ってみましょう。

■描きこまないことで育まれる想像力 余白というコミュニケーション

インタビューによれば、ブルーナが絵本を作るときの約束事は大きく2つあります。

子どもの心に、なんともいえないあたたかさ、幸せな気持ちをプレゼントしたい(中略)それと同じように、なるべく単純化して描くことで、子どもが想像力を使って楽しむ余地を残すようにもしています
 ときにはすべてのページが100回以上の試し書きを経てたどり着いた究極の「線」と、納得のいくまで探して絞り込んだ「6色」のみで構成されています。「余白」があるからこそ子どもの想像力が自由に羽ばたけるのです。

 文章もすべてブルーナが考えました。心がけたのはそのシンプルさ。2回読めば暗記できるほどのストーリーだからこそ、子どもたちの心にしっかりと残ります。そもそも自身の息子にねだられたのがきっかけで創りはじめたのがミッフィー。絵も言葉も子どもへの優しい語りかけであり、本は温かなコミュニケーションの場に他ならないのです。
他にも、アンリ・マチスの色遣いに感銘を受けたこと、ぞうのババールやスヌーピーへの尊敬、CGへの思いなど、ブルーナの言葉からは彼の様々な側面がうがかえて興味深いものがあります。

ブルーナさんの絵は、自分のいつも原点にあるんです。(中略・彼の絵は)絵を描くことの邪念のようなものをきれいにしてくれる ―安西水丸―
 子どもはもちろん、アーティストにも影響を与え続けるブルーナ作品。小さな絵本が世界に与えた大きなインパクトを知れば、「ミッフィー」は今よりいっそう魅力的なものに感じられるはずです。

文=青柳寧子