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「故郷の風景をもう一度」ダム建設で沈む集落 地元の人たちにバスマニアがツアーを企画 ダイヤやバス停も手作りで準備

6/25(日) 6:20配信

ファンファン福岡

 2017年度末に完成予定の福岡県営伊良原ダム(みやこ町犀川下伊良原)。ダム建設によって水没する故郷の風景をもう一度目に焼き付けたいと、地区住民有志の主催によるバスツアーが6月18日に開催されました。

「沈む前に故郷の風景をもう一度見たい」

 バスツアーは、路線バスの愛好サークル「砂津本陣會總本部」が運営に協力。同サークルは、廃止されたバス路線を貸切バスで巡るオフ会を定期的に行っており、今年3月のオフ会で、かつてバス路線があった伊良原地域を巡ろうと、福岡県のダム事務所から許可を得てダム底となる通行止め区間を走行しました。これが今回の地元向けバスツアー開催のきっかけです。

 3月のオフ会の後、ダム底をバスで走ったことを知った地元の方々から「最後の記念に私たちも乗りたかった」「沈む前に故郷の風景をもう一度見たい」という要望が本陣會に届きました。「それならば」という思いで、メンバーがバスの手配やダイヤ設定、ダムへの許可申請を手伝い、地元の人たちとともに今回実施したのがバスツアー「伊良原線路線バス完全復活祭」です。

本当にバス路線が復活したような光景

 参加者は地元住民126名をはじめとして、バスマニアも含めて計143名。直売所には回数券売り場の看板を設置し、ダイヤやバス停も手作りで準備するなど、本当にバス路線が復活したような光景が広がりました。

 満員の乗客を乗せて、バスはダム底までを3往復。バスの中では「ここらへんはホタルが凄かった」「ここの小学校に姉妹で通った」という地域の思い出だけでなく、「若い車掌さんなら切符買わなくても許してくれた」「朝からエンジンが始動しなくてジープで引っ張って手伝った」などというバス路線に関する思い出話も飛び交いました。

 参加者の中には、「亡くなった親父が完成したダムを見たがっていた」と語る人や、ご主人の遺影を抱えバスの車窓を一緒に眺めていた高齢女性の姿も。さまざまな想いを抱えた人々を乗せて、バスは旧道を走りました。

ツアーが終わりに近づいた車内では、地元主催者のひとりから決意表明も飛び出しました。

「私は生まれて63年間伊良原を出たことがありません!伊良原を愛しています。これからの伊良原の更なる発展は、まず無いでしょう。しかしこれからが伊良原の新しいスタートと思って頑張って参ります。」

 早ければ今夏にも貯水が始まる伊良原ダム。今回バスで通った地区は間もなくダム湖に沈んでしまいますが、この日、自分たちの故郷をしっかりと目に焼き付けた住民の皆さんは、明るい表情でそれぞれ帰路についていました。

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