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柴崎岳が証明した確かな実力。テネリフェ、1部昇格ならず…3失点で見せつけられた地力の差

6/25(日) 10:20配信

フットボールチャンネル

 現地時間24日、スペイン2部の1部昇格プレーオフ決勝2ndレグが行われた。ホームでの1stレグを1-0で制していたテネリフェは、アウェイに乗り込んでヘタフェとの大一番に挑む。最近の活躍で現地メディアなどから絶賛を浴びているテネリフェの柴崎岳は、今季最後のゲームでもチームのために懸命に戦った。(文:舩木渉)

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●序盤に衝撃の2失点。柴崎は2戦連続アシスト

 底力を見せつけられた。

 現地時間24日、スペイン2部の1部昇格プレーオフ決勝の2ndレグが行われ、柴崎岳を擁するテネリフェはヘタフェと対戦した。

 ホームでの1stレグを1-0で制していたテネリフェは、悲願の1部昇格を成し遂げるべくアウェイに乗り込んだ。しかし、序盤から厳しい現実を突きつけられる。

 9分、コーナーキックのこぼれ球をアレハンドロ・ファウリンに押し込まれて先制を許すと、続く12分にも左サイドを崩されてダニ・パチェコに追加点を奪われた。わずか10分ほどで立て続けに失点し、ヘタフェに主導権を握られてしまう。

 今季ホームで圧倒的な強さを見せつけてきたヘタフェは、本拠地の大声援を得て躍動した。スタメン4人を入れ替えたことで息を吹き返し、怒涛の勢いでテネリフェのゴールに襲いかかる。

 対するテネリフェは昇格プレーオフ準決勝2ndレグから3試合連続で同じ11人を起用しており、若干疲れが見えた。だが、1人の男がヘタフェに傾きかけた流れを変える。

 17分、左サイドでアイトール・サンスからのパスを受けた柴崎は、ワンタッチでゴール前に折り返す。走りこんできたアンソニー・ロザーノが滑りながらそのボールを押し込み、テネリフェが貴重なアウェイゴール奪った。

 柴崎はロザーノがゴール前に入ってくるタイミングに合わせた地を這うような高速クロスで2試合連続アシスト。A・サンスからのパスを受ける前のオフサイドを避ける予備動作から、完璧なラストパスまで、誰が見ても唸るほど高いレベルの技術が詰まったアシストだった。

 この1点によって、テネリフェは落ち着きを取り戻したように見えた。2失点はしたものの、2戦合計スコアを2-2にしたことで、アウェイゴール差で再び優位に立つ。これで延長戦の可能性は消えた。

 しかし、ヘタフェに押し込まれる展開は変わらない。リーグ全体を見てもホームとアウェイで戦い方に明らかな違いが出る傾向があり、それはこの試合でも変わらなかった。アウェイチームはどうしても失点を恐れて引き気味になってしまう。

●まさかの柴崎交代。後半も流れを変えられず…

 テネリフェも例に漏れず、アウェイゴールを奪ったことで消極的な姿勢がより顕著になってしまった。経験豊富な選手が揃うヘタフェは、そういったスキを見逃さない。

 37分、フランシスコ・ポルティージョのスルーパスに抜け出したホルヘ・モリーナがシュートを放つ。テネリフェのGKダニ・エルナンデスが一度は弾いたが、ボールがこぼれたところに詰めていたのは、またしてもパチェコだった。これまで何度もスーパーセーブでチームを救ってきた守護神も追いつけず、出場停止明けのアタッカーに再びゴールを許す。これで2戦合計スコアを2-3とされてしまった。

 この日のテネリフェ守備陣には明らかな問題が生じていた。失点を恐れて消極的になるディフェンスラインと、ひとつでも多く追加点が欲しい中盤よりも前の間で意思統一が図れていなかったのか、ダブルボランチとセンターバックの間にぽっかりとスペースが空いてしまっていた。2失点目と3失点目はその穴を見事に突かれた。

 前半はヘタフェのシュート10本に対し、テネリフェはわずか1本。チャンスはゴールの場面以外ほとんどなく、終始押しこまれていた。

 もうひとつアウェイゴールを奪えれば、と逆襲を期して臨んだ後半、テネリフェのホセ・ルイス・マルティ監督は51分に最初の交代カードを切る。ベンチから送り出されたのはドリブルを得意とするサイドアタッカーのアーロン・ニゲス。

 そして交代を告げられたのは、なんと柴崎だった。連戦の疲れは多少見られたものの、前半からテネリフェの中盤で傑出したゲームビジョンとテクニックを発揮し、アシストだけでなく巧みなボールキープや相手の意表を突くパスで攻撃を組み立てていたチームの希望を、あっさりと下げてしまった。

 A・ニゲスの投入によって、確かにシュート数は増えたが、攻撃は相手のディフェンスラインの裏を狙うだけの単調なものになり、ゴールまでの明確な道筋が見えない。あと1点入りさえすれば…という状況のまま時間だけが進んでいく。

●柴崎が証明した確かな実力

 ホームで優位に立ったヘタフェは落ち着いてボールを回しながら、F・ポルティージョを中心にとどめの1点を狙いにきた。テネリフェは踏ん張ってカウンターを狙う、それが唯一残された活路だった。

 結局、試合終了の笛が鳴るまでにテネリフェは追撃の1点を奪えなかった。昇格プレーオフ決勝2ndレグの最終スコアは1-3、2戦合計2-3。あと一歩及ばず、この数字が両チームの現実的な実力差だろう。激戦を制したヘタフェが来季の1部昇格、そして1年での1部復帰を決めた。

 最後まで食らいついたテネリフェだったが、2ndレグでヘタフェに見せつけられたのは地力の差だった。週に2試合の連戦で3試合連続同じメンバーを起用した、あるいはそうせざるをえなかったテネリフェに対し、ヘタフェは出場停止者などもいながら柔軟にメンバーを入れ替えてチーム力を落とさず戦えていた。昨季まで1部を戦い、トップリーグでの経験豊富な選手が揃っていた強みもヘタフェにはあった。

 とはいえ、柴崎個人がこの昇格プレーオフで見せた輝きは、来季以降につながるポジティブなものだったに違いない。4試合で1ゴール2アシスト、テネリフェを窮地から救うゴールに、決定的なアシストを重ねた姿は非常に逞しかった。チームメイトや監督からの信頼もがっちりとつかんでいた。

 来季もテネリフェに残留するかは不透明だが、ヘタフェとの2試合では1部のレベルでも戦える確かな技術と戦術眼を証明した。守備でも鹿島アントラーズ時代以上に体を張って懸命に走る様子が見られ、スペインに渡ってからの短期間で攻守両面にわたって劇的な成長を遂げている。

 最後の最後で昇格の夢が絶たれ、柴崎にとっても不完全燃焼だったはず。次のシーズンまでの休息期間は短いが、スペインで通用した部分や、まだ足りない部分を改めて見つめ直し、昇格プレーオフで味わった悔しさを来季の戦いにぶつけてほしい。その先にこそ、誰も目にしたことのない高みが見えてくる。

(文:舩木渉)

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