ここから本文です

知的障害者をめぐる小事件から国民の権利の根拠を考察

6/26(月) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 日々のニュースで小さく報じられる事件には、大きな問題の一端がのぞいていることがある。地方選挙で起きた知的障害者をめぐる小事件から、評論家の呉智英氏が、国民の権利の根拠について考えた。

 * * *
 地方の首長選挙でちょっとした小事件が起きた。地方選で、しかも小事件。しかし、私にはこれはきわめて大きな問題の露頭のように思える。

 6月11日付朝日新聞は「知的障害の男性投票できず」「選管、不備認め謝罪」と見出しして、次のように報じている。

 4月23日、岐阜県各務原市の市長選挙があった。その二日前「重度の知的障害のある男性」が母親に伴われて期日前投票所を訪れ、「代理投票を申し出た」が投票できなかった。「男性の入場券の裏面の『宣誓書』が未記入だったため、受付の男性職員が口頭で本人確認を求めた。母親は『本人は生年月日、住所が言えない』と伝えたが、再び口頭での確認を求められた」「職員は、本人確認できる療育手帳などの提示を求めなかった」

 似たような事件が何年か前にあった。あるテーマパークで来場者十万人目の記念品を手渡そうとしたところ、一見して知的障害者だと分かったため、その人を飛ばして後ろの十万一人目の人に渡した。同伴の家族らの抗議があり、パーク側では謝罪し、改めて記念品を贈呈した。こんな事件だった。

 こちらの事件は、構造は簡単である。パーク側の対応は明らかに知的障害者差別である。来場した障害者に記念品を渡すのをやめる理由は、どこにもない。パーク側は非難されて当然だろう。

 一方、各務原市長選挙の例はどうか。実は、障害者側の抗議は法的には完全に正しいし、選管が不備を認め謝罪したのも当然なのである。

 朝日新聞の記事は説明が簡略で抽象的だが、注意して読むと、抗議の正当性も選管側の不適切もちゃんと書かれている。母親と障害者は期日前投票所で代理投票をしようとした。期日前投票も代理投票も公選法で認められており、国民の基本的権利である。ただし、公正・正確を期すため、宣誓書記入や本人確認が求められる。ところが、この知的障害者は「生年月日、住所が言えない」。それで選管職員は投票を拒んだ。

1/2ページ