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いかに「写真」は人を“欺く”ようになり、フェイクニュースを拡散してしまうのか?

6/26(月) 12:14配信

WIRED.jp

フェイクニュースをつくる人々は、写真を悪用することでそこに政治的な文脈をつくり出そうとする。かつて写真を捏造するのは手間がかかることだったが、いまやネットには無限に写真が転がっているし、フォトショップが少し使えればいくらでも写真を加工できる。いかに写真は人の目を“欺く”ようになり、フェイクニュースの拡散を加速させてしまうのか。そのメカニズムに迫った。

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2015年冬、サウスカロライナ州で遊説していたヒラリー・クリントンは、チャールストンの邸宅の階段で転びそうになる。側近たちは慌てて彼女を支えた。ゲッティイメージズのフォトグラファー、マーク・マケラが撮影した写真はクリントンが弱々しく見えはするが、ありふれたよくある瞬間を捉えていた。だから、マケラはこの写真をたいして気にしていなかった。

ところが、16年8月になってオルタナ右翼ニュースサイト「Breitbart」は、この出来事をクリントンの健康が悪化している証拠として報じたのである。

「見ていて本当に奇妙でしたし、気が滅入りました」とマケラは語った。「わたしたちは写真の取り扱いを常に気にしていますが、今回とりわけ不快だったのは写真が悪用されたことでした」

画像の悪用によって、フェイクニュースは拡散された。オースティンに並んでいる観光バスの写真は、民主党がトランプの集会に抗議者たちを運んでいたことの証拠にされた。卓球に興じているオバマ大統領の動画から撮られたスクリーンショットは、ワシントンD.C.のピザレストランで開かれた幼児性愛組織に同大統領が参加していた証拠だ、と陰謀説を唱える人々は主張していた(そんな組織は存在していないし、このようなピザ屋で酷いことは何も起こっていないので、気にしないでいただきたい)。クリントンの選挙運動責任者ジョン・ポデスタの両手を捉えた写真は、彼が悪魔的な儀式に関与している証拠だと主張する者もいる。

フェイクニュースは写真を悪用し、偽りの物語を受け入れやすくさせる。フェイクニュースを発信する人々は、読者を巧みに操るために文脈と関係のない写真を撮り、それらをデジタル処理で改ざんして無理やり文脈をつくり出す。

「こうした写真によって記事のリアリティを補強し、理にかなっているよう感じさせる必要があるのです」と、ソーシャルメディア企業「Sysomos」のデヴィッド・バーコウィッツは語っている。「全然リアルだと思えなければ、そのニュースが広まることはないでしょう。なぜフェイクニュースが無理やり押し付けられるかというと、それを表舞台に出せばもはや本物のニュース同然になるからです」

オンライン上に数多くの写真があり、さらには簡単に加工できるため、こうしたフェイクニュースはどんどん増えている。1950年、アメリカ共産党のアール・ブラウダーとミラード・タイディングス上院議員が一緒にいる偽のコラージュをつくるには、ハサミと糊、そして忍耐力が必要だった。いまや反ヴェトナム集会でジョン・ケリーがジェーン・フォンダと一緒にいるところやクー・クラックス・クランの装束を着たドナルド・トランプの両親の画像をつくるために必要なのは、フォトショップをそこそこ理解しておくことくらいだ。

それどころか、初歩的なスキルさえ必要ないことも多い。例えば、フロリダ州オーランドのパルスナイトクラブで48人を銃殺したオマー・マティーン容疑者の父、セディク・マティーンのインターネットミームだ。その写真は、2016年に彼が国務省のヒラリー・クリントンの事務所を訪れた際のものとされていた。だが、クリントンは13年に国務大臣を辞めていたのだから、特に政治的な意味はもたないはずである。イメージはコントロールされるのだ。

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最終更新:6/26(月) 12:14
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