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【開発秘話】売上2000万枚を突破した『明治 ザ・チョコレート』

6/26(月) 7:30配信

@DIME

 明治が2016年9月に一新した『明治 ザ・チョコレート』の売れ行きが好調だ。

 現在7種をラインアップしている『明治 ザ・チョコレート』は、産地ごとのプレミアムなカカオ豆を使い、それらの風味や特性を生かしてつくったスペシャリティチョコレート。カカオ産地での栽培、収穫、処理、選別、品質管理から製造まで一貫してかかわる「ビーン・トゥ・バー」によって誕生した。カカオ産地ごとの風味や特性を生かした味づくりをはじめ、これまでの板チョコレートにない個性を発揮したこともあり、2017年3月末までに2000万枚以上の売上を記録したほどである。

【写真】売上2000万枚を突破した『明治 ザ・チョコレート』

■農園づくりから始まるチョコレートづくり

 同社は90年前から、チョコレートをカカオ豆からつくってきた。長年にわたりビーン・トゥ・バーを実践してきたわけだが、『明治 ザ・チョコレート』誕生を語る上で無視できないのが、「明治カカオサポート」だ。カカオ豆の収穫量を増やす栽培方法や、高品質を実現する独自の発酵法などを農家に指導するもので、農家が同社の指導通りにカカオ豆づくりをしてくれれば、継続して購入する。

 菓子商品開発部スペシャリティチョコレート担当 マネージャーの宇都宮洋之さんによれば、同社がここまでする理由は、カカオ豆の生産に直接かかわらないとチョコレートの味づくりが人任せになってしまうため。同社が考える美味しいチョコレートをつくるには、農園づくりからかかわって良質なカカオ豆を生産・入手することが不可欠だった。

■カカオの面白さを打ち出す

 産地の指導先から仕入れる良質で美味しいカカオ豆を利用し、同社は、世界で通用する大人の嗜好品としてのチョコレートづくりを目指すことにした。そのために打ち出すことにしたのが、カカオの面白さ。素材と加工の仕方で味が変わってくるカカオの魅力を伝えることにした。

 しかし、同社が嗜好性のチョコレートを手がけるのは、今回がはじめてではない。1986年の『コラソンカカオ』から始まり、以来、何度となくチャレンジしてきた。だが、どれも営業面で振るわなかった。2014年9月に、リニューアル前の『明治 ザ・チョコレート』を発売するが、これも営業面で苦戦する。

 嗜好性のチョコレートが苦戦してきた理由の1つが、日本ではミルクチョコレートのシェアが約60%と高いこと。ミルクを使わないダークチョコレートのシェアは20%弱しかなかった。

 そこで、現在の『明治 ザ・チョコレート』をつくるに当たり、同社は「ダークミルク」という新カテゴリーを打ち出すことにした。砂糖を減らす代わりにカカオとミルクを増やした、大人向けのミルクチョコレートをつくることにしたのである。

 しかし、社内はダークミルクに懐疑的で、ミルクチョコレートをやるなら定番の『明治 ミルクチョコレート』を強化するべき、という意見が多数を占めた。カカオにこだわる嗜好性のチョコレートなので、ある意味当然の反応だったが、その一方で、嗜好性のチョコレートはこれまで成功していないという現実もある。ミルクチョコレートのシェアが高い市場の現実をデータで示し、『明治 ミルクチョコレート』を食べていない大人を取り込むという理由から、「ダークミルク」への理解を得た。

■反対意見が相次いだクラフト調パッケージ

 カカオへのこだわりが伝わるよう、パッケージデザインも大幅に刷新することにした。特徴は、従来の板チョコレートでは一般的だった横意匠ではなく縦意匠としたことだ。

 その狙いについて、「新しいチョコレートの世界をつくり上げていくため」と話すのは、菓子商品開発部 専任課長 スペシャリティチョコレート担当の山下舞子さん。つくり手のこだわりや顔、手の温もりが感じられることを意識して、全体をクラフト調にし、中心にこだわりのカカオの実をあしらった。

 ただ、クラフト調が地味な上に、余計なキャッチコピーやシズルをなくしたため、社内では「何が入っているかがわからない」「このパッケージではダメだ」といった反対意見が多くあがった。しかし開発陣は、反対意見を押し切る。「パッケージは他にも候補がありましたが、ユーザーの声を集めた結果、圧倒的に人気があったのが今回のもの。この調査結果を元に、理解をしてもらいました」と宇都宮さんは明かす。

 大胆なパッケージ変更は、結果的に成功した。発売後、SNSへの画像投稿が相次ぐ。それに、パッケージに影響を受けた創作物も目立った。InstagramをはじめとしたSNSには、パッケージを元にしてつくられたキーホルダーやノート、イヤリング、スマホケースなどの写真が数多くアップされている。

■複雑な模様に刻まれた意味

 一方、パッケージの中も、従来の板チョコレートとはかなり雰囲気が異なる。まず、開けると小さな板チョコレートが3枚入っているが、その小さな板チョコレートにはスリットを縦横に入れ複雑な模様を刻んだ。複雑な模様にしたのは、チョコレートは口の中に入れる量や形によって味わい方が変化するという知見を生かしたことによる。

 また、一部のフレーバーについては、カカオの実を模様としてあしらった。これは香味を表現できる構造を採用した結果。「スリットを深く入れると香味がうまく表現できないものについては、代わりに表面に模様を入れることにしました」と山下さんは言う。

■消費者とのダイレクトコミュニケーションを重視

 また、新しい『明治 ザ・チョコレート』は、マス媒体を使ったコミュニケーションではなく、消費者とのダイレクトコミュニケーションを展開した。「自分たちがやっていることを実直に伝えることを頑張ることにし、チョコレート選びにこだわりを持っている人たちに対していろいろ体験してもらうことでクチコミにつなげ、マーケットをつくることを考えました」と、菓子マーケティング部マーケティングG 専任課長 スペシャリティチョコレート担当の佐藤政宏さんは話す。

 具体的に取り組んだことの一つが、2017年2月に東京国際フォーラムで開催された「サロン・デュ・ショコラ2017」への参加。国内最大のチョコレートの祭典に参加し、カカオからカカオ豆をつくる一連の工程などを紹介したほか、『明治 ザ・チョコレート』のコンセプトも紹介。会場限定でドミニカ産のカカオ豆を使った〈ドミニカダークミルク〉や、貴重なメキシコ産のカカオ豆を使った〈メキシコホワイトカカオ〉も販売した。

 この他には、「カカオ会議」という十数人規模のセミナーを、最近は頻繁に行なうようにしている。参加者はセミナーで得た気づきを、SNSやクチコミなどを通じて発信し、市場づくりに一役買っているという。

 しかし、社内では当初、ダイレクトコミュニケーションが不安視された。「一部の人たちにしか伝わらないのではないか? と思われていました」と振り返る佐藤さんだが、狙いを繰り返し説明することで実施にこぎ着けた。

★★★取材からわかった『明治 ザ・チョコレート』のヒット要因3★★★

1.こだわりの原材料を使用

 各産地で農園づくりから始めてつくったカカオ豆を使用。様々なカカオの魅力を発揮したことが評価された。

2.斬新なパッケージ

 縦意匠にクラフト調のパッケージデザインを採用。SNSで拡散するほど、斬新でインパクトがあった。

3.地道なダイレクトコミュニケーション

 チョコレートづくりで地道に頑張ってきていることを、ユーザーの目の前で直接伝えることを重視。真面目で実直な取り組みがユーザーの琴線に触れた。

『明治 ザ・チョコレート』は1枚200数十円だが、中身は1枚1000円クラスといってもいい。高品質・高価格のチョコレートを低価格で提供できた裏には、これまでの常識を覆したり、カカオ農園づくりから始めるという地道な取り組みがあった。ヒット商品は一朝一夕にできるものではなく、じっくり腰を据えて取り組むからこそできるものなのである。

■文/大沢裕司

@DIME編集部

最終更新:6/26(月) 7:30
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