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名コーチが解明。則本昂大の「奪三振ショー」を生む新球種の効果

6/26(月) 14:48配信

webスポルティーバ

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第2回

《世界記録更新こそならなかったが、メジャー記録に並ぶ8試合連続2ケタ奪三振を達成するなど、いま両リーグを通じて最もインパクトのある活躍を見せている投手が、楽天の則本昂大だ。150キロを超すストレートと鋭く曲がり落ちる変化球を武器に、もともと三振を取れるピッチャーではあった。それでも昨年は28試合に登板して、2ケタ奪三振の試合は7だったのに対し、今年はここまで(6月23日現在)11試合ですでに8と”奪三振マシン”ぶりを発揮している。一体、則本のピッチングにどのような変化があったのだろうか。球界屈指の名コーチとして知られ、プロ野球の生き字引的存在である伊勢孝夫氏に聞いてみた。》

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 則本のイメージは、真っすぐで押して、フォークを落として三振を奪う。そこにスライダーも混じってくるから、打者としては攻略困難な投手と言える。さらに今季はスプリットが加わった。これがどう数字(奪三振など)に反映されているかだろうが、結論から言えば、決してスプリットを多投しているわけではないし、決め球となっているわけでもない。あくまでも真っすぐ、フォーク、スライダーの3種類で三振を奪っている。

《データによれば、ここまで110個の三振を奪っている則本だが、フォークによる三振が44個、ストレートが38個、スライダーが23個、スプリットが5個という割合になっている。ちなみに、スプリットはフォークより落差が小さい分、スピード的には真っすぐに近い。則本の真っすぐの球威は平均で150キロだとすると、フォークは130キロ台、スプリットは140キロ台となっている。》

 要するに、則本にとってのスプリットは決め球というよりも、カウントを稼ぐ球や、決め球の前に使う、いわゆる”邪魔な球”としての効用が大きいのではないだろうか。

 邪魔な球とは、打者に意識させることによって、本来の打撃をさせにくくする見せ球のことだ。

 たとえば右打者の場合、長距離タイプの一発屋なら、一般的にアウトコース中心の攻めになる。だが、それは打者もお見通しで、思い切って踏み込んで、少々のボール球でも振りにいく。外国人選手などは、まさにその典型といえる。

 そこで投手は、インコースにも投じて「踏み込んできたら痛いぞ」という無言のアピールをする。多くはシュート系の球やツーシームが使われ、投手によってはインスラを投げる場合もある。いずれにしても、内角を意識させなければならず、どれだけいい真っすぐがあろうと、アウトコース一辺倒の配球ではつらい。

 ところが則本の場合、シュート系の球もツーシームもないのか、見たことがない。私が見た限り、キャッチャーがインコースに構えたときは、ほとんど真っすぐだった。そこで新たに内角に使える球として、スプリットを思いついたのだろう。

 スプリットは、概して右打者の内角に投じる球というのが、プロの世界での認識であり、シュートの代用として使われることもある。

 今季は、右打者を外角の真っすぐで三振に打ち取ったあと、「なぜ、あのボールに手を出さないのか?」と則本が首をひねるシーンを何度か見た。これは、打者が「次は内角かな」「次こそ内角だ」と警戒した挙句、1球も内角に来ることなく三振してしまったからだ。要するに、内角の意識づけをしっかりしておけば、そこまで厳しい外角の球でなくても打ち取れるのだ。

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