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小学校で教えられていなかった「自衛隊の本当の役割」――永田町の安全保障のエキスパートが解説

6/26(月) 16:00配信

週刊SPA!

 6月20日、平成32年度以降に導入される小中学校の学習指導要領解説書の全容が判明したが、自衛隊の本来の任務について、小学校では今まで教えられていなかったという事実が明らかになった。

 解説書とは指導要領の内容を具体的に説明するもので、教科書会社の編集方針や教師が授業を行う際の手引きになる。

 実は、今まで小学校の学習指導要領と解説書には、役割どころか「自衛隊」という言葉自体どこにも出てこなかった。それでも教科書では、例えば6年生の社会科の教科書には自衛隊が登場しているが、自衛隊の任務については災害派遣やPKO活動だけしか取り上げられていなかった。

 今度の指導要領の改定で、「自衛隊」については、小学校4年生の社会で登場することになったが、災害派遣の活動にしか触れられていない。そのため解説書で、自衛隊について「わが国の平和と安全を守ることを任務とする」と本来の活動について明記することになったのである。

 この自衛隊の任務について、湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案などに関わった、永田町きっての安全保障のエキスパートである自民党政務調査会審議役の田村重信氏に話をうかがった。

◆自衛隊の「主たる任務」とは

 私はかつて慶應義塾大学大学院の安全保障講座で教えていましたが、PKOの講義をする時に、大学院生に、「君たち、PKOって分かるか?」と質問したら、誰も分かりませんでした。事実です。法学部政治学科の学生でも習っていないのは恐るべき話です。

 また、東日本大震災が起こったとき、「自衛隊は災害派遣で一生懸命やってくれて、非常に素晴らしいと思うし、感謝もしています。だけれどこれからは憲法を改正して、戦争できるようになるんですか? そのことについては反対です」という人がいました。

 しかし、災害派遣は自衛隊の「主たる任務」ではありません。では、自衛隊の主たる任務とは何か? 自衛隊の任務は、自衛隊法第3条に明記されています。

<自衛隊法 第3条第1項>

自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。

 自衛隊の主たる任務は「我が国を防衛すること」です。その下に、「防衛出動」(第76条)、「防御施設構築の措置」(第77条の2)、「防衛出動下令前の行動関連措置」(第77条の3)等の規定が置かれています。これらの内容は、まさに国を守る措置ということにほかなりません。

 つまり、自衛隊の一番大事な任務はまさに国を守ること、端的にいえば武力の行使(いわゆる国家・国民のために戦うこと)なのです。

 きれいごとや言葉での脚色を抜きにして語れば、武力を行使して我が国を守ることこそ自衛隊の一番大事な任務だということを忘れてはなりません。

 もちろん戦争が起こらなければ一番いいわけですけれども、他の国から明らかな侵略行為を受けた場合は、自国を守るために武力によって対抗しなければなりません。その武力を行使することが、自衛隊の一番大事な任務なのだということです。

◆災害派遣は「従たる任務」

 その後に書かれている「必要に応じ、公共の秩序維持に当たる」ことは「従たる任務」です。その中に「災害派遣」「国民保護等派遣」「治安出動」「治安出動下令前に行う情報収集」「警護出動」「海上における警備行動」「海賊対処行動」「弾道ミサイル等に対する破壊措置」「地震防災派遣」「原子力災害派遣」「領空侵犯に対する措置」「機雷等の除去」「在外邦人等の保護措置」等があります。

 次に同条第2項です。

<自衛隊法 第3条第2項>

自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。

1 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動。

2 国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動。

 第2項で示される「従たる任務」についてですが、これは「主たる任務の遂行に支障を生じない限度」で、「別の法律の定めるところにより自衛隊が実施することとされるもの」です。その中には「後方地域支援等」「国際緊急援助活動等」「国際平和協力業務等」があります。「後方地域支援」というのが、「重要影響事態安全確保法」に関わるものです。そして、「国際平和協力活動」が国連のPKO活動などです。

 その他にも、自衛隊にはさまざまな役割が課せられています。たとえば「土木工事等の受託」「教育訓練の受託」「運動競技会に対する協力」「南極地域観測に対する協力」「国賓等の輸送」といった付随的業務は、自衛隊法第8章(雑則)で規定され、また、「不発弾等の処理」については、自衛隊法の附則に規定されています。

 自衛隊について教育現場では、今まで冷静かつ客観的な立場から教えられてきたとは残念ながらいえません。これは戦後教育の弊害でした。今回の指導要領と解説書の改定によって、自衛隊の「主たる任務」「従たる任務」について、小学校から適切に教えられるようになればよいと思います。

【田村重信(たむら・しげのぶ)】

自由民主党政務調査会審議役(外交・国防・インテリジェンス等担当)。拓殖大学桂太郎塾名誉フェロー。昭和28(1953)年新潟県長岡市(旧栃尾市)生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、宏池会(大平正芳事務所)勤務を経て、自由民主党本部勤務。政調会長室長、総裁担当(橋本龍太郎)などを歴任。湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案等に関わる。慶應義塾大学大学院で15年間、日本の安保政策及び法制に関する講師も務めた。防衛法学会理事、国家基本問題研究所客員研究員。著書に『改正・日本国憲法』(講談社+α新書)、『平和安全法制の真実』(内外出版)他多数。最新刊は『知らなきゃヤバい! 防衛政策の真実』(育鵬社)

日刊SPA!

最終更新:6/26(月) 16:06
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