ここから本文です

杉岡大暉、U-20W杯で花開いた新たな可能性。完璧を目指す若きユーティリティの探求

6/27(火) 15:09配信

フットボールチャンネル

 高卒ルーキーながら湘南ベルマーレでレギュラーの座を確保した杉岡大暉は、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けている。U-20W杯を経験して発見した自分の新たな可能性を信じ、鍛錬を続ける18歳の現在地、そして未来の理想像はどんなものなのだろうか。(取材・文:舩木渉)

【動画】久保建英、鮮やかドリブルでゴール演出!相手DFを翻弄する超絶テクを披露

●U-20W杯で得た「世界を相手にやれる」感覚

 U-20W杯からおよそ1ヶ月。所属クラブに戻った日本代表選手たちは、それぞれの場所で鍛錬を続けている。

 飛躍のきっかけを掴んで海外に挑戦する選手がいれば、徐々に出場時間を伸ばしつつある選手や、相変わらず出場機会に恵まれない選手もいる。そんな中、U-20W杯を経て劇的な成長曲線を描く1人が、湘南ベルマーレのDF杉岡大暉だ。

 市立船橋高でキャプテンを務めていたDFは、U-19日本代表候補にこそ選ばれていたものの、U-20W杯の予選を兼ねていた昨年のU-19アジア選手権ではメンバー入りを逃していた。

 しかし高校を卒業して今季から湘南ベルマーレに加入すると、リーグ開幕からスタメンに抜てきされてコンスタントに出場を重ねて評価を高めた。そして滑り込むような形でU-20日本代表招集を受けた。

 U-20W杯グループステージの初戦と第2戦で不安定さをのぞかせた日本の守備陣は、変化を必要としていた。そこで内山篤監督は、第3戦のイタリア戦で当初センターバックの3番手、あるいは4番手と見られていた杉岡を左サイドバックで起用した。

 するとこの抜てきが見事にハマる。杉岡が先発出場したイタリア戦と、決勝トーナメント1回戦のベネズエラ戦はともに勝利こそ逃したものの、左サイドの安定感が格段に増した。安定した守備対応に加え、積極的な攻撃参加も光った。

 ベネズエラに敗れてU-20W杯敗退が決まった後、杉岡はこんなことを話していた。

「(サイドバックは)本当に楽しいポジションでした。今まではそんなに足が速い方ではないと思っていたし、そんなに向いていないかなと思っていた自分もいたんですけど、この大会で世界を相手にやれると思ったし、もっともっとできるだろうと思った。本当に(サイドバックとセンターバックを)どっちも高いレベルでできるような選手になりたい」

●常に課題を見つけ、改善する。杉岡のブレない姿勢

 イタリア戦とベネズエラ戦で、杉岡が対面したのはそれぞれのチームのキーマンだった。前者は大会得点王に輝いた快足FWリカルド・オルソリーニ、後者はグループステージで4得点を挙げていたFWセルジオ・コルドバ。身体能力では圧倒的に相手に分がある状況である。

 その2人と対峙して、杉岡は「強気にやれば防げる部分があったので、そういうところは本当に勉強になったし、本当にいい経験になりました」と語っていた。対人守備や攻撃参加への手応えも口にしていた。

 一方、世界の舞台で慣れない左サイドバックを経験し、運動量やクロスの質などに改善点を見つけていた。それと同時に「自分がサイドを制圧するくらいになって、攻守にアグレッシブにやれるようにしていきたいという思いは出てきました」と、選手としてのビジョンに明らかな変化が生じていた。

 Jリーグに戻った杉岡は、帰国直後のV・ファーレン長崎戦からリーグ戦4試合すべてに先発出場を続けている。その中で、U-20W杯前に務めていた3バックの左センターバック以外に、4バックにおける左サイドバックもこなし、ついに25日の横浜FC戦で3-4-2-1の左ウィングバックとして起用された。

「前半は入り方があまりよくわからなくて、ちょっと浮き足立っちゃう時間があった」と、初めてのポジションに難しさを感じたようだが、これまでと変わらぬ積極性を発揮して攻守に大きく貢献していた。攻撃面では積極的なドリブルやクロスが目立ち、守備面でもほぼミスなしと言っていい出来だった。

 とはいえ杉岡本人は「攻撃だけじゃなくて守備でもボールを奪えるくらいになりたいと思っている。守備に関してはまだまだ奪えていないので、そこは課題」と、また新たな改善点を見つけたようだった。

●杉岡の才能を見抜いていた指揮官。湘南でも戦術理解力の高さ発揮

「U-20W杯で多少自信がつきました」という言葉に一切の嘘はない。6月に入ってからの杉岡の成長ぶりは凄まじく、毎試合たくましくなった様子が見てとれる。17日のJ2第19節京都サンガF.C.戦では、後半アディショナルタイムに岡本拓也のゴールをアシストしたが、ラストパスまでに至る過程のドリブル突破は圧巻だった。

 21日に行われた天皇杯2回戦の国士館大戦でも、途中出場でピッチに立つと、ペナルティエリア内でドリブル突破を仕掛け、鋭い折り返しから延長後半の108分に藤田祥史の決勝ゴールをお膳立てした。1ヶ月前までセンターバックとしてのイメージが強かっただけに、驚くべき変貌ぶりだ。

 ただ「元々結構ドリブルは好きというか、センターバックをやっていてもドリブルして上がっちゃうような選手だった」と杉岡は言う。高校時代は1年次からトップチームの試合に出場し、3バックと4バックの両方でキーマンとして活躍。センターバックだけでなくサイドバックやボランチも経験していた。戦術理解力の高さは同世代の中でも屈指のものを持っていた。

 湘南のチョウ・キジェ監督も「元々そういうところ(攻撃的な姿勢)は、市船時代からあって、非常にいい指導を受けてきた選手なので、スペースがあったら前に運ぶ、それも顔を上げながら運んでいける。パスもドリブルもできるということは、高校3年の時点で非常にいいものを身につけていた」と杉岡の能力を高く評価している。

●「いい意味でのユーティリティプレイヤーになれば面白い」(チョウ監督)

 シーズン開幕からレギュラーとして起用し続けてきた指揮官にとって、いまの杉岡の成長は想定の範囲内だったのかもしれない。18歳とは思えない落ち着きを備えるルーキーDFの「ひとつ間違いをした後に次を起こさない」吸収力の高さを指摘する。

 そしてチョウ監督は「もしかしたらボランチとかもできるので、いい意味でのユーティリティプレイヤーになれば面白いと思いますし、そういうのは今、ナショナルチームで求められていることだと思う。こじんまりしないでそういう選手に成長してほしい」と、杉岡のさらなる成長に大きな期待を寄せている。

 日進月歩の成長を遂げる杉岡は今、U-20W杯を経て理想の将来像を追いかけている。

「攻撃ではアシストとか得点とかに絡んで、でもそれだけにならず守備でもしっかりボールを奪ったり、そうやって攻守両面に関わり続けられるようになりたい。サイドバックでもセンターバックでも、より上のレベルでやるのはひとつの目標です。左利きのそういう選手は少なく、そこは自分の武器でもあると思うので、もっと伸ばしていきたいと思います」

 話を聞いていると、一つひとつの細かいプレーの質にこだわりを持っていることが伝わってくる。クロスの質や、ドリブルの使いどころ、守備における寄せの強さや、守備対応における様々なパターンを想定しているようだ。多様なフォーメーションやポジションに適応しながら、それぞれの役割で完璧を追い求めている。

 高度な戦術理解力をベースに18歳で世界を経験して意外な自分の長所を見つけ、トップレベルの戦いの中で複数のポジションをこなし、細かな改善点を潰しながら選手としての総合力を着実に向上させている。杉岡が目指すのは、どんな役割でも完璧に務め上げる完全無欠のユーティリティプレーヤーなのかもしれない。

(取材・文:舩木渉)

フットボールチャンネル

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Yahoo!ニュースからのお知らせ