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山崎育三郎、俳優として大ブレイクの予感 『あなそれ』東出昌大との攻防で見せた実力を読む

6/27(火) 10:06配信

リアルサウンド

 4月クールのドラマの中で話題を独占し、終盤に視聴率を急上昇させたTBS系火曜ドラマ『あなたのことはそれほど』。不倫に溺れる主人公・美都の夫・涼太の同僚として、美都を優しい言葉で支え続けた小田原真吾が、実は夫の涼太に好意を寄せていたということが判明した第9話。その後も彼は美都を助ける一方、時には冷たい言葉を浴びせるなど、その“アメとムチ”のコントラストでドラマに華を添えた。

 この小田原を演じていたのは、ミュージカル界の貴公子として大活躍中の山崎育三郎だ。甘いルックスの影に潜むミステリアスさで、波瑠や東出昌大を惑わすだけでなく、麻生祐未演じる主人公の母親にも果敢に取り入っていく。一見すると優しい王子様タイプの彼が見せる鋭い眼光は、さすが舞台俳優と思わずにはいられないほど、テレビサイズに抑え込めない力強さだ。

 劇中で山崎は幾度も、柔らかい表情からすっと目線をロックオンさせ、主人公夫婦の秘密を暴きだそうとカマをかける。この姿を見ると、山崎がミュージカル俳優として大成するよりも前、まだ俳優キャリアをスタートさせたばかりの頃に出演したドラマ『六番目の小夜子』(NHK)を思い出す。

 多くの若手スターを輩出しただけでなく、未だに根強い人気を誇る伝説のドラマ『六番目の小夜子』で山崎は、学校の伝統に翻弄されるクラスのひとり、加藤を演じていたのである。丸い眼鏡をかけたガリ勉の優等生で、病弱で大人しい雰囲気の一方で、時折見せる表情に妙な怖さがあった。同作の第2話、夜の学校で、山田孝之にカマをかける場面があるのだが、そこで見せる自信たっぷりの表情と振る舞いは、『あなたのことはそれほど』で波瑠を厳しい言葉で追い立てる場面と重なる。この時点で、すでに俳優・山崎育三郎の片鱗が現れていたわけだ。

 2015年に出演した『下町ロケット』(TBS系)を皮切りに、多くのドラマに出演し、現在は日本語吹替版に初挑戦したディズニー映画『美女と野獣』が記録的大ヒット中。名実ともに絶好調の彼は、この夏クールには2本のドラマに出演するのだ。6月17日から放送が開始されたWOWOWの連続ドラマW『宮沢賢治の食卓』では賢治の親友の音楽教師・嘉藤治役を演じ、7月から放送されるテレビ朝日系金曜ナイトドラマ『あいの結婚相談所』ではついにドラマ初主演。前者では実在の人物を演じ、後者では一風変わったコミカルな役に挑む。ますます彼の映像演技の幅は拡がっていく予感がする。

 ともなれば、映画館の大スクリーンで彼の歌声と姿、両方を観たいという期待が高まってくる。これまで出演した映画は、2008年に公開したインディーズ作品1本のみ。海外のミュージカル映画が相次いで日本でヒットし、ブームの兆しがある今だからこそ、彼を主演にしたミュージカル映画が作られてもいいのではないだろうか。演技力と歌唱力に加え、華があってどこかミステリアスな雰囲気を持つ。現在の日本の俳優界で、彼ほどミュージカル映画に相応しい俳優はいない。

 一方で、この山崎と東出、ふたりの存在感のぶつかり合いが、今回の『あなそれ』のもうひとつの魅力だったのではないだろうか。スケールの大きい演技を見せる山崎に、決してセリフ回しは上手くないがキャラクターの持つ不穏さを全身で体現する東出。どちらも一般的なドラマ演技の枠に収まらない存在感が、このドラマの異質さとクオリティを高めていたのだ(だからこそ最終回のラストでふたりがじゃれ合う姿がとても輝いて見えたわけで)。

 東出もまた、パリコレに出演するメンズモデルのトップから映像演技の世界にシフトチェンジした俳優だ。デビュー作となった映画『桐島、部活やめるってよ。』で見せた、ヒエラルキーの上位にいながらも悩ましげな姿や、初主演作『クローズEXPLODE』でのヤンキー役ですっかり板についた野暮ったい雰囲気を、今回の『あなそれ』でも存分に活かしきったのである。

 8月に公開される映画『関ヶ原』では大名・小早川秀秋を演じ、秋には黒沢清監督の最新作でカンヌ国際映画祭でも話題となったSFサスペンス『散歩する侵略者』と、出演作が相次ぐ。昨年、羽生善治を演じた『聖の青春』で高評価を集めた彼は、将来のエース俳優候補としてさらに進化を遂げていくだろう。

久保田和馬

最終更新:6/27(火) 10:06
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