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【インタビュー】グアルディオラの代弁者が、ペップ・シティ1年目の真実を明かす

6/28(水) 21:10配信

footballista

『グアルディオラ総論』著者インタビュー

「本音を言えば、今季マンチェスターで起こったことは私にとっては良かった。なぜなら本で予想したことが次々と現実になったのだからね」。自由にチームに出入りすることを許可され異例のバイエルン密着取材を続けたマルティ・ペラルナウは、その集大成として発表した『グアルディオラ総論』の中でも「白いキャンバスを前にした画家のような」イングランド1年目の困難を予想していた。謎に包まれた名将に最も近いジャーナリストが明かす、ペップ・シティ1年目の真実――。


インタビュー・文 木村浩嗣



「20カ月」の真意
シーズンの悪かった点はプレースタイルではない


──グアルディオラの1年目に10点満点で点数を付けるとしたら何点でしょう?

「6かな。まあ合格点だ。君は私の本を翻訳したから何が書いてあるかは知っているだろう。選手の質とかいろんな理由によって『グアルディオラの1年目は大変困難なものになる』と結論付けた。その通りになったから驚くことはなかったよ。キャリアで初めて無冠に終わったし、良いシーズンでなかったのは確かだ。予想通りだったから個人的にも失望はしていない。しかし私がミュンヘンでグアルディオラの身近にいて知っていたことを知らないファンはタイトルを3つくらい獲ると期待していたかもしれないから、彼らの失望はわかるよ」


──グアルディオラ自身も「もしビッグクラブにいたら解任されていただろう」と言っています。

「グアルディオラ特有の冗談だよ(笑)。彼はユーモアたっぷりの人物なのだが、それはあまり知られていない。こういう皮肉交じりの彼特有のコメントを時どき出すのだが、人はそれを解せず文字通り受け取ってスキャンダルにしてしまう。例えばアンチェロッティはバイエルン1年目の今季リーグ優勝だけに終わった。結果もプレー内容も期待外れだったが、アンチェロッティは解任されなかった。つまり、グアルディオラの言うことはいつも事実とは限らないんだよ。ただ冗談の中に一面の真実もある。ビッグクラブは常に大きな成功を必要としているのは確かだ」


──あなたが本の中で言っている通り、タイトル獲得は義務付けられてはいなかった。しかし、タイトルを争うことは求められていた。

「そこだね。シーズンの悪かった点はプレースタイルではない。イレギュラーではあったが、悪くはなかった。しかしチームがタイトルを争う術を知らなかったというのも事実だ。例えばCLではイレギュラーながらもグループステージを勝ち上がった。バルセロナには4-0で敗れたが3-1で勝ちもした。モナコ戦は2試合通算スコア6-6だったがアウェイゴール差で敗退した。それはまあ悪くない結果だとも言える。だが、第2レグの前半はコンペティティブさの欠如、メンタルの面で非常に悪かった。あの前半、チームは戦えていなかった。こういう大事なところでチームが戦う術を知らなかったというのがシーズンのネガティブな点だと言える。後半は戦えており、いったん2試合合計スコアで勝ち越したものの最後は敗れてしまった。プレミアリーグでも同じようなことが起こった。大変良いプレーをした試合もあるし、酷かった試合もある。戦えてもいたが11月、12月、1月といったところで争う術を知らなかった。タイトルは獲れなくてもいい。モナコとはゴール数で並んでいたし、チェルシーは偉大なチームだったのだから。プレーがイレギュラーだったというのも新しいプレースタイルを教えている最中だと考えれば理解できる。だが、メンタルに属するコンペティティブさの欠如は修正すべき点だろう」


──そのシティの選手たちの勝者のメンタリティの欠如というのも、あなたは本で指摘していましたね。

「アンチェロッティのバイエルンは85分以降に12ポイントを獲得している。これこそ勝者のメンタリティの証だ。バイエルンの選手はこういうキャラクターをハインケス時代、グアルディオラ時代、アンチェロッティ時代と昔から維持してきた。対してマンチェスター・シティの選手たちはマンチーニ時代もペジェグリーニ時代もメンタルのひ弱さが目に付いた。だからこそ本にもそう書いた」


──そのメンタルの弱さを選手の放出と獲得によって修正しようとしたように見えましたが、そうし切れなかったようですね。

「完全には無理だった。状況もそれを助けてはくれなかった。例えば強いメンタルの持ち主ギュンドアンの大ケガ。ガブリエウ・ジェズスもケガで8試合しか先発できなかった。クラウディオ・ブラボとノリートの不調。グアルディオラのシティでのプロジェクトには選手の大きな入れ替えが必要だったと思う。現在も悪い選手たちではないのだが、同じチームに長くいれば刷新が必要だ。それが中途半端だった。5人しか獲得せず、しかもそのうち2人が負傷し2人が不調ではリフォームは半ばで終わってしまう。だから今年の夏は刷新を終わらせるべき時になる」


──そこはあなたでも読めなかった。

「私はもっと多くの選手を入れ替えると思っていた。少なくとも7、8人は新戦力が来ると予想していた。だから今年の夏は動くだろう。私の持っている情報では5~7人は入れ替わるよ。それで2年越しだがチームの刷新は終わることになる」


──どうして5人だったんでしょう? もっと獲れる資金力はあったでしょうに。

「主に契約の問題だった。私がバイエルンで学んだことだが、現実は外から見えているものとは違う。会長にOKをもらってやって来たら解除できない契約だったり、違約金が膨大だったりした。今年の夏は契約が終わって放出できるようになる」


──あなたは本の中でエスタブリッシュメントが確立していたバイエルンと違い、シティは「自由に絵が描ける白いキャンバスだ」と表現しています。その認識は今も同じですか?

「バイエルンには伝統があり、それはメリットではあるがデメリットにもなる。アンチェロッティはアンタッチャブルな選手の扱いに苦労していたようだ。触れないもの変われないものはシティにはない。グアルディオラは契約の問題以外はすべてを好きにできる自由を手に入れていた」


──ということは時間と自由と金をグアルディオラに与えるというクラブの姿勢は1年前と変わっていないのですね?

「時間と自由は与える。お金に関しては……。予想よりも渋かった。アブダビ王族がオーナーだから資金力は豊富だが上手に投資してほしいとも考えている。CEOのフェラン・ソリアーノはまるでお金がないクラブかのように振る舞っている。経済的な目標は達成し補強する財力はあるはずだが、その代わりに選手を売って金庫にお金を入れるのが条件だ。理には適っていると思う。いくら裕福だと言ってもサッカークラブが浪費をすべきではない」


──あなたは本の中でグアルディオラの仕事の成果が見られるようになるには20カ月は必要だ、と書いています。その意見は1年後の今も同じですか?

「2018年3月、つまり来季のCL決勝ラウントの頃まで今季そうだったようなイレギュラーでない、真にコンペティティブなチームを見るのは難しいと思う」

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最終更新:6/28(水) 21:10
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