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川島永嗣と酒井宏樹、フランスで確かな足跡残した2人の日本人。来る新シーズンへ高まる期待

6/28(水) 10:20配信

フットボールチャンネル

 昨シーズンからリーグアンでプレーしている川島永嗣と酒井宏樹。それぞれ置かれた状況は違ったが、2人の日本代表選手は所属クラブで確かな足跡を残した。来る17/18シーズンではどのような活躍を見せてくれるだろうか。(取材・文:小川由紀子)

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●シーズン終盤に正守護神の座を奪取した川島

 リーグアンの多くのクラブが、今週6月26日から新シーズンへ向けてトレーニングを開始した。

 川島永嗣が所属するメスは24日の土曜に集合し、26日からはさっそく、ブルターニュ地方で合宿に入っている。ただし川島を含む代表選手数名は、代表戦に参加していた分バカンスが若干延びて合流は7月4日からだ。

 酒井宏樹が所属するマルセイユは26日に集合し、28日(水)からスイスのサイヨンというかわいらしい村で合宿を行う。同じく酒井をはじめ、パイエやトーバンら代表組は数日間の休暇延長を与えられている。

 そして新シーズンの初試合は両チームともに7月1日。合宿地の地元チームと対戦する予定だ。シーズン再開を機に、リーグアンの2人の日本人選手の昨季をあらためて振り返り、来季の展望を探りたいと思う。

 まずは川島だが、『第3GKとして獲得』とクラブに報じられる形でメスに入団したあと、10月にベンチ入りという最初のステップを踏み、年明け初戦のフランス杯で実戦初出場。

 3月の代表戦ではW杯予選に先発出場し、リーグ戦も佳境に入った4月、PSG戦でフランスリーグデビューを飾ると、終盤、残留を競っていたナンシーとのダービー戦、残留を決めたリール戦と重要な試合で2連勝に貢献。37節のトゥールーズ戦ではPKを止める活躍も見せ、最終節までゴールマウスを守るという、尻上がりなシーズンを経験した。

 ……というと一見結果オーライに聞こえるが、その裏には、20代前半の若い第1GKと競い、18、19の若手選手とリザーブチームでプレーするという、これまでは体験したことのなかった状況に立ち向かう苦難もあった。

 しかしシーズン終盤の川島には、「苦労を乗り越えて、ようやく日の目をみました!」という浪花節的な苦労人ストーリーを感じさせる空気は微塵もなかった。逆に、どこか突き抜けた爽快さが漂っていた。

●結実した日々の努力。来季は新たなチャレンジが待っている

 シーズン序盤に彼に話を聞いた記者仲間は、「第3GKと呼ばれることには敏感になっている様子だった」と感想をもらしていたが、シーズンが終わる頃の川島にそのような様子は見られなかった。

 先発がどう、ヒエラルキーがどう、ということよりも、とにかく今、自分の目の前にあることに一生懸命取り組んだ先にあるものが、自分の行くべき道だと感じている、と話す言葉どおりに清々しい姿があった。

 結果的にスタメンの座をゲットした後だったからそう言えたのかどうかはわからないが、彼にとって昨シーズンが非常に充実した1年だったことは、周囲の反応からも感じ取れた。

 たとえば川島が試合のピッチに立ったときには、彼がいかにチームメイトから信頼を得ているかが目に見えて伝わってきた。練習場などでも、チームメイトは、日本人記者の姿を見ると、「エイジかい? 向こうにいたと思うから、声かけてきてやるよ!」というような気遣いを見せてくれる。そういうことは、その選手がチームメイトに好かれている場合しか起こらないものだ。

「実際、監督やスタッフは、相当エイジの存在をありがたがっているよ。ついこの前、監督と話をした時もそう言っていたんだ」とわざわざ言いに来てくれた番記者もいた。

 そしてヒンシュベルゲ監督は、「来季はGKのヒエラルキーを見直す」と考えているそうだ。それは昨季第1GKだったディディヨンに発破をかける意味もある。川島の存在が、第1GKのステータスに安住しかけていたディディヨンを刺激したのは間違いない。「その意味でもカワシマには感謝だ」とファンサイトに書き込んでいるサポーターもいた。

 懸命に取り組む姿が、自分の状況や周囲の反応を変えてしまう、という実例をまさに目撃した気がした。そうして第1GKの座をつかんで昨季を終えた川島には、新シーズンにはまた新たなチャレンジが待っている。

●フランス屈指の人気クラブ、マルセイユでプレーした酒井宏樹

 そして酒井宏樹も、厳しい世界に挑んだマルセイユ初年度だった。

 シーズン開幕間もない頃、話を聞いたマルセイユサポーターが言っていた「サカイのことは正直よく知らないが、僕らが好きなタイプに見える」という言葉が思い出される。

 序盤こそ、これまで培ってきたプレースタイルと必要とされることのギャップに戸惑いも見られたが、酒井は己の努力で着実にマルセイユで求められる「戦士」へと成長していった。

 シーズンが終了した後、総括会見の席でガルシア監督は、酒井の初年度の成長ぶりについてこう話した。

「まず彼には非常に満足している。ヒロキはものすごく指導しやすい選手だ。もともと彼が持つ素質に加えて、試合でのパフォーマンスだけでなくいろいろな面でこの一年で成長が見られた。彼は実に頼もしい『戦士』だ」

 監督の言葉を一言一句もらさないよう集中して聞き、わからないことがあったら解決するまで質問する、というのは、昨シーズン酒井が最初から徹底して取り組んでいたことだった。「指導しやすい」と指揮官がたびたび口にするのは、酒井の勤勉さがガルシア監督の意識にしっかりと刻まれていたことの表れだ。

 来季の課題としては、ラスト20mのところでよりクリエイティブなプレーをすることを挙げた。

「ここでは常にゴールをすることが求められる。それがこのクラブのカルチャーだ。チャンスがあれば、自分からどんどん打っていい。もちろんそれについてはこちらが指導していくことだが」

●酒井宏樹を信頼するマルセイユのガルシア監督

 余談だが、ガルシア監督はよく酒井を庇うような発言をする。

 以前にも会見で、PSGの失点シーンはマークの受け渡しミスがあった、という話題が出た時、「ヒロキのせいではない。ああいう場面では先輩選手が統率すべきだ」と、「コミュニケーションがハンディになったのでは?」と記者たちが穿ちかねない場面で先手を打った。そして記者たちに向かって「君たち、私が言ってないことは先走って書いたりするなよ!」と釘まで刺していた。

 昨季は純粋な右サイドバックが酒井しかいなかったから、来季は当然補強するのかと、その意向について尋ねたら、「右サイドバックの補強は急務ではない」とガルシア監督は即答した。

「競争があったほうがサカイのためにも成長につながるからいいことだし、実際昨シーズンは人員不足で厳しい時もあったから考える必要はあるが、フボチャンやファンニもいるし、最優先事項ではない」と。

 そして最後に、「彼のような選手を指導できるのは喜びでしかない」と言った。

 ガルシア監督は、一所懸命に取り組むハードワーカータイプの選手を好むと前に聞いたことがあったが、監督の酒井への信頼は、相当なレベルまで達しているようだ。そしてサポーターと記者たちもそれに続く。

 クラブ愛が異常に深いマルセイユのサポーターや番記者たちは、いったん「自分たちの選手」となった者はとことん後押ししてくれる傾向がある。サポーターも記者たちも最初は懐疑的だったが、シーズン後半戦には「サカイはマルセイユになくてはならない選手」とまで言うようになった。

 昨シーズン、リーグアンに初挑戦した川島と酒井。置かれた状況は違っていたが、たとえ厳しいチャレンジでも取り組み方で事態は変わる、ということを、2人は身を持って証明した。そしてその本人たちの努力で、来る新シーズンは、さらに活躍に期待がもてるものとなった。

 開幕戦、マルセイユはディジョン、メスはギャンガンを迎える。リーグアンの17-18シーズンは、8月5日にキックオフだ。

(取材・文:小川由紀子【フランス】)

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